チベットの核

河川の汚染、氾濫

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水域近くに無計画のまま投棄された核廃棄物は、河川、湖水、そして湧水をも汚染する。チベットは南アジア、東南アジアのほとんどの地帯にとって主要な水源となっているため、この源流での汚染、特に核や産業有毒廃棄物は、下流の国々の数多くの人たちが生活する社会、そして経済機構に破滅的な打撃を与えることになるだろう。中国、パキスタン、インド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、ブータン、そしてベトナム。これらの国々がみな深刻な影響を受け、そこでの生活様式の変更を余儀なくされるのだ。このようなことが起きれば、河川を頼りに暮らしている人が被る被害は、計り知れないものになるだろう。

チベット下流で沈泥が凝固したり、破壊的な氾濫が毎年増加しているのは、チベット高原での大規模な森林伐採が大きな原因である。チベットのウラニウム鉱山の放射性廃棄物が、ブラマプトラ川、ヤンツェ川、黄河、サルヴィン川、サトレジ川、インダス川、メコン川、そしてその他の河川によって運ばれている可能性も無視できない。これらの河川は、最終的にはアラビア海、ベンガル湾、そして南シナ海へと注ぎ込む。このような地球規模での自然環境における大惨事は、身の毛もよだつほど恐ろしいものに違いない。

1985年から1994年、中国では、36万平方キロメートルの農地から毎年その表土が失われた。この現象が特に顕著なのは、ヤンツェ川、そして黄河など、チベットにその源を発している河川沿いである。川床が、土壌侵食により周囲の農地よりも数メートル上昇し、河川の氾濫が増加する原因となっているのだ。1990年以来、中国の主要な河川は毎年広大な面積にわたって氾濫している。1996年7月には、1600人以上の人々がヤンツェ川の氾濫のため溺死している。河川の氾濫による何らかの影響を受けた人は、中国全人口の10分の1にのぼる。1994年に実施された中国の主要河川流域に関する大規模な調査によると、飲料用水としての国家基準を満たしている河川流水は全体のわずか32%だけであった。中国の全人口の大部分が、程度の差こそあれ汚染した水源を飲用としていまだに利用していると推定されている。ただし、推定される人口の割合については、さまざまな値が報告され、その差は大きい。

1996年9月28日、シドニーで開催された「危機に瀕するチベットのための会議」の席上で、ダライ・ラマ法王はこう言った。 「五年前に、南チベットの、ディングリ(Dingri)地域出身のチベット人が、村人全員が飲み水に利用していた川について私に語ったことがある。そこには中国人も居住しているが、中国人民解放軍に所属している彼らは、その川が上流の工場により汚染されているので、その水を飲まないよう通知を受けていた。ところが、チベット人たちは何も聞かされない。チベット人はいまだに汚染された水を飲んでいる。この事実は、ある種の怠慢さがはびこっていることを物語っている。これは無知からくるものではない、他の理由によるものである」


チベット亡命政権情報・国際関係省環境開発部(EDD)発行
「グリーンチベット」1998年ニュースレターより

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