チベットの核

インド、中国間の緊張

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アメリカ人のジョン・F・アベドンが、1987年9月17日、米国上院対外政策委員会に提出した報告によると、「中国が持つ350基の核ミサイルのうち、4分の1はチベットに配備されている」。1987年10月、この報告に続いて、オーストラ リア核軍縮党が記者会見で非常に憂慮していることを発表。
「核ミサイルの配備状況は以下のように報告されている。ナクチュカに70基の準長距離型と20基の中距離型ミサイル、ニンティ、コンポ、ポオ・タモ(Powo Tramo)に大陸間弾道ミサイル基地、そして ゴリノ(Golino)に原子炉」

チベットにおいてこのような核ミサイルを配備するということは、インドをその標的としていると考えてよいだろう。

インドは、中国が核攻撃実施の脅威を与えていると、長年にわたり非難してきた。これに対し中国の周恩来は、「中国がインドを壊滅しようと真剣に思ったら、チベット在住の1億人の中国人を集め、低地めがけて排尿させる。そうすればインドを海に沈没させることができるだろう」と応酬した。周恩来のこのコメントは、ヒマラヤには戦略上の突出した重要性があることを明白に物語っている。インドのすべての主要な河川は、ヒマラヤにその源を発しているのだ。

インドが、核兵器工場、強大な海軍、戦術中距離ミサイルの開発を急ぐため、インド政府と中国政府の間に横たわる緊張はさらに高まっている。ある情報筋によると、インドの新しい中距離ミサイルである「アグニ」 は、中国の主要な工業中心部である成都、蘭州、西安、そして武漢を標的とし核弾頭を発射できるよう設計されたとのことである。北京を攻撃できるよう、5,000キロの射程距離を持つミサイルも開発中であるという。インドの軍関係の情報筋により、「アグニ」は、中国が北インドを標的としてチベット高原から発射できるよう配備したミサイルに対する対抗策であることも明らかにされている。

1992年から1994年、中国はパキスタンに50個以上のM-11ミサイルを、1995年にはカフタ(Kahuta) にある核爆弾製造用のウラニウム濃縮施設に対し、5,000個の環状磁石を輸出した。パキスタンは、サルゴダ(Sargodha)空軍基地でM-11ミサイルを円筒弾として保管し、中国製の器材を使用してミサイル工場を建設中である。このような不正な貿易は、1992年に中国自身が調印した核拡散防止条約を明らかに違反していることになる。パキスタンは1997年、別のミサイルであるHATF-㈽(実は中国のM-9ミサイルと同じもの) のテスト発射に成功した、と発表した。

インドの軍事専門家は、中国は「ガウリ」と呼ばれる地対地弾道ミサイルを生産するための技術的ノウハウをパキスタンに提供している、と語っている。パキスタンは1998年4月6日、インドの「アグニ」への対抗馬である「ガウリ」ミサイルの試験発射に成功している。ジャスジット・シン空軍司令官兼インド国防研究分析機関長官はこう発言した。
「パキスタンが、中国からの援助を受けているにも関わらず、ミサイル計画をパキスタンが自ら開発したものと位置付け、正当化しようとしているのは明らかだ」

1998年4月、インドの日刊紙「ザ・トリビューン」は、パキスタンの「ガウリ」ミサイルは、中国がパキスタンに輸出した旧式ミサイル、CSS-5(DF-21)以外のなにものでもない、との記事を掲載した。

インドのフェルナンデス国防大臣は、中国はインドにとって「もっとも脅威を与えうる国家」である、と断言したらしい。 「インドは中国の陸海軍活動にさらされている。中国は、チベットとインドの国境で核兵器を備蓄している。また、チベットでは軍の飛行場を拡張し、ロシア製の最新型 「スホーイ」戦闘機(SU-27)を配備しようとしていた。このような状況の変化は、全て過去半年間に起こったのだ」(同大臣)

インドでは、1998年5月11日に3回、5月13日に2回の核実験を、ラジャスタンのポクラン(Pokhran)で実施している。専門家の多くは、これは中国がチベット高原に建設中の軍事施設に対抗した結果と分析している。インドのバジパイ首相は、1998年5月11日付けでアメリカ合衆国のビル・クリントン大統領に宛てた書簡の中でこう訴えた。
「インド国境に核兵器国家が存在することは明白である。この国家(中国) は1962年、インドに対し武装攻撃を仕掛けてきた。そのような災難に加え、当国は我々の近隣国家 (パキスタン) を物質的に援助し、隠れたる核兵器国家を誕生させようとしている」

インドは、中国からのインドの核実験に対する非難に反論するため、中国がすでに45回の核実験を実施していることを指摘している。このような状況下、インド−パキスタン間の緊張は高まり、一触即発の状態が今でも続いている。


チベット亡命政権情報・国際関係省環境開発部(EDD)発行
「グリーンチベット」1998年ニュースレターより

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