チベットの住宅と生活状況

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「チベット政治史」(亜細亜大学アジア研究所)より抜粋

チベットの住宅はデザイン上のわずかな差異を除けば、目だった建築上の大きな違いというものはない。住宅は太陽光をもっともよくとり入れることができるように、南に面して建てられるのが習慣である。建築資材は主に石かレンガで、通常1階建ての建物の後方には2階建ての建物が併設される。窓や扉は黒いセメントで縁どられる。

古代、薪は泥棒に盗られないように屋上に貯蔵された。この風習がファッションとして残り、屋上に薪がたいそう魅力的なパターンで積み上げられることになった。またどの家の屋根にも祈祷旗がはためいている。

寺の建築はネパール、インド、中国からの大きな影響が見られる。絵画に関して言えば、チベットの画家たちは仏典の儀軌に規定されているとおりに描かなければならない。絵画の主要3流派は、カム地方のカルマ・ガルディー派、コンカル地方のケンリー派、ウー地方のメンタン・エリー派である。絵画と同様彫像の技術もネパールやインドから伝えられ、これらの造形をさらに精巧に仕上げる技術は後に中国より借用された。

遊牧民のテント内部 © Galen Rowell

遊牧民はヤクの長い尾の毛も交えて編んだ非常に頑丈なテントを作る。これらのテントのうち最大級のものは100人~200人の人間が泊まることができ、いくつもの分かれた部屋を有する。ごく1部の資産家をのぞき一般の遊牧民は1ヶ所に長く留まることは決してしない。テントの上の祈祷旗をかかげることは遊牧民にとってきわめて大切なことである。付近の祈祷旗の数からどのチベット人の野営地かを見分けることもできる。遊牧民は、ヤク、羊、山羊、馬とともに獰猛な番犬を飼っている。農民は馬、ラバ、ロバ、豚、牛、家禽(かきん)、ヤク、雌ヤクと雄牛の交配種であるゾを飼う。ゾは耕作に最も適している。雄のゾはゾポ、メスのゾはゾモと呼ばれる。

ヤクはおそらくチベットにおいて最も有益な生き物であろう。ヤクはいかに厳しい環境下でも生きのび、自分の食物を見出すことができる。ヤクは輸送手段として用いられるだけでなく、その乳と肉も利用される。その皮は上質のブーツ、鞍袋、皮舟などになる。長い尾毛も含め、毛はテントや、もちのよい布を作るのに適した素材を提供する。雌ヤク(ディと呼ばれる)はゾモと同様に上質の乳を出す。しかし、乳の量においてはゾモは雌ヤクに優る。雌ヤクのバターはお茶に混ぜられて滋養にとんだ飲み物を作り出す。

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