チベットの環境問題

チベット高原の軍備拡張

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1986年まで、中国共産党の支配地域は11の軍区に分けられており、チベットはそのうち3軍区の管轄下にあった。1986年になって軍区が7つに整理されると、チベットを管轄するのは2軍区となった。成都に本部を置く成都軍区(西南軍区)と、蘭州に本部を置く蘭州軍区である。

現在成都軍区に属するのは、「チベット自治区」「甘孜(カンゼ)チベット族自治州」「アパチベット族自治州」「迪慶(デチェン)チベット族自治州」「木里(ミリ)チベット族自治県」であり、蘭州軍区に属するのは青海省、「甘南(カンロ)チベット族自治州」「天祝(パリ)チベット族自治県」である。

チベット全域に展開する解放軍の総数は、現在控えめにみて50万前後だと考えられている。「チベット自治区」の駐留軍が40,394人だとする中国の公式数字は、なにかの間違いにちがいない。私たちの情報によれば、「チベット自治区」に駐留する兵力は25万前後にも及ぶ。これは、1963年に設立された市民兵を含まない数字である。

「チベット自治区」はさらに6つの軍分区に分かれ、以下のような兵力をもつ。

独立歩兵師団2個、国境守備連隊6個、独立国境守備大隊5個、砲兵連隊3個、工兵連隊3個、通信基地1基、通信連隊2個、輸送連隊3個、独立輸送大隊3個、空軍基地4カ所、レーダー連隊2個、準軍事部隊(「地方部隊」という)が師団2個と連隊1個、武装警官が独立師団1個と独立連隊6個

そのほか、「第2砲兵」として知られる軍隊が12個駐留する。また、これまで多くの空軍基地が建設されているが、現在でも使用されているのはそのうちのわずか4カ所である。なお、武装警察というのは最近新たに設けられた組織であり、解放軍の常備軍である。

「チベット自治区」にある解放軍の前線基地は、ルトク、ギャムク、ドンパ、サガ、ダンソ(別名=ティンリー)、ガンパラ、ドモ、ツォナ、ルンツェ・ゾン、ザユル – などにある。第2線の防衛基地があるのは、シガツェ、ラサ、ナクチュ、ツェタン、ナンカルツェ、ギャムダ、ニンティ、ミーリン、ポボ・タモ、ツァワ・ポムダ、チャムド – などである。また、チベットでの1987年決起以来、四川省を拠点とする第149空挺部隊が「チベット自治区」に常時展開している。

中国は、チベット軍区[成都軍区の下位に位置する省級軍区のひとつ]の本部機構を、成都から、ラサ南西郊にあるゴンカル空港への街道沿いへと移している。その敷地は差しわたし1km以上にも及び、一説によれば「成都軍区(西南軍区)の総司令部の1部がラサに移った」ようにも見えるという。この新本部はまだ建設中だが、43階建てのビルが数棟あり、各階は40室ほどを擁し、15,000人が寝泊まりできる。

アムド最大級の軍事基地は、シリン[西寧(シーニン)]、チャプチャ、カルム(中国名=格爾木(ゴルムド))にあって、それぞれに空軍基地が備わっている。かって荒涼とした荒れ地だったカルムに、今では大きな軍事基地ができている。これらの地域はチベットと東トルキスタン[新疆ウイグル自治区]の両方に睨みの利く要衝にあり、道路、鉄路、空路、によって結ばれている。

カムとアパ地方で解放軍が増強されているのは、カム側がリタン、カンゼ、タウ、ダルツェド[康定]など、そしてアパ側がバルカムである。これ以外にも、レーダー基地や閉鎖中の滑走路がカムの要地に置かれている。


チベット亡命政権情報国際関係省1992年発行
「チベット環境と開発をめぐって」より

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