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ダライ・ラマ法王のメッセージ ― COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)に向けて ―

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2015年10月20日

兄弟姉妹の皆さん、今、この小さな地球で、私たちは21世紀を共に生きています。科学技術において、私たちはさまざまな発展を遂げてきましたが、それ以上に多くの問題も生み出してきました。そこで私は日頃から、これらの問題は人間がつくり出したのだから、論理的には、問題を減らす責任や完全に解決する責任もまた私たち人間にある、と述べています。問題をつくっておきながら、「何とかしてください」と神様や仏様に祈るとしたら、それは筋が通らないのではないでしょうか。これらの問題は私たち人間がつくったのですから、神仏に解決の道を求めることはできないと思うのです。

人間がつくった最大の問題は、気候変動と環境問題です。銀河系が移動していることも、ある程度は影響していると思います。その結果、この青い地球の位置も変化し、それによって太陽そのものの状況も変化しています。これもまた、環境に何らかの影響を及ぼしているのだと思います。

専門家もまた、気候変動や地球温暖化の責任は私たち人間にある、と言っています。つまりこれは、一部の国々だけでなくすべての国々に影響を及ぼす、人類全体の問題なのです。

この地球は、私たちの唯一の家です。もし地球が温暖化や環境汚染などの問題に耐えられなくなってしまったら、私たちが引っ越せるような惑星は他にありません。

この地球は、私たちの唯一の家なのです。ですから、環境保護や地球温暖化についてもっと真剣に考えなければなりません。

地球温暖化や環境保護についてお話をする時、私はいつも、「世界の屋根」と呼ばれるチベット高原のお話をしています。専門家は、チベット高原は標高が高く、気候が乾燥しているので、いったんダメージを受ければその回復には他の地域よりもはるかに長い時間がかかると言っています。つまり、このような地域では自然環境がきわめて繊細なので、とりわけ注意をはらわなければなりません。インド人の環境専門家たちも、何人も同じ話をしてくれました。

同じ考えの専門家は中国人にもいて、チベットあるいはチベット高原が地球温暖化によってもたらす影響が北極と南極がもたらす影響と等しいという理由から、チベット高原は地球の「第三極」であると説明しています。

これは政治的な意見ではなく、環境の専門家や科学者たちが調査によって明らかにしている事実です。これはチベット人だけの問題ではありません。中国本土をはじめ、パキスタンやバングラデッシュ、インドなど、ヒマラヤ山脈の南側に暮らす10億を超える人命にかかわる問題なのです。

中国を通って南アジアに流れている河川の源泉はチベットにあり、10億を超える人々がこの水に依存して暮らしています。つまり、チベットの環境を守ることは限られた地域の人々のためだけでなく、アジア地域の大部分の人々のためであるということがわかるでしょう。

また専門家たちは、チベット高原の生態環境もまた世界のさまざまな地域に影響を及ぼす、と述べています。これはきわめて重要なことですから、皆さんと分かち合っておきたいと思います。これは政治の問題でも宗教の問題でもありません。究極的には人類の存続の問題であり、地球全体の健康にかかわる問題なのです。

繰り返しますが、環境問題は人類全体で責任をもって解決していかなければならない問題です。いつも言っていることですが、私自身を含め、20世紀に属する古い世代はほとんど姿を消そうとしています。

ですから、21世紀に属する若い兄弟姉妹の皆さんが、チベットの環境をはじめ、地球を守るために積極的に役割を果たしてください。これが、皆さんと分かちあっておきたいことです。

(翻訳:小池美和)