チベットの教育

チベット亡命政権パリ事務所広報誌「アクチュアリテ・ティベテンヌ」

亡命チベット人が築き上げたもの

Print Friendly, PDF & Email

中国の頑なな主張によれば、中国人がチベットに住むのは、文化的・経済的に遅れたチベットの人々を発展させ、近代化する手助けをするためだという。しかしチベット人には、自分たちの社会を自力で治める能力がある。亡命チベット人のコミュニティがうまく機能しているという事実が、その最たる証拠である。

1959年以来、チベット亡命政権、インド政府、それに各種の国際援助団体は、亡命チベット人の教育のために総額15億インド・ルピーを投入してきた。チベット亡命政権は、年間収入の65%を子どもたちの教育に割り振っている。これは、僧院での教育を含まない値である。

新たに創られた、インド、ネパール、ブータンのチベット僧院・尼僧院には、今日およそ11,000人の僧尼が在籍している。また、インドには多くの専門学校が建てられ、危機に瀕したチベット文化の保存に貢献している。

高等チベット学中央研究所 The Central Institute for Higher Tibetan Studies(ウッタル・プラデーシュ州バラナシ)

ウッタル・プラデーシュ州バラナシの高等チベット学中央研究所では、チベット人やヒマラヤ仏教圏からやってくる学生たちに、伝統教科と近代教科の両方を教えている。その卒業生の多くは、さまざまなチベット人学校や高等教育施設で働いている。なかには世界中に700以上散在する、チベット仏教センターやチベット文化センターに勤める人もいる。チベット固有のボン教も、本部をインドのヒマーチャル・プラデーシュ州に再建している。

チベット医学暦法研究所 The Tibetan Medical and Astro Institute(ダラムサラ)

ダラムサラにある「チベット医学暦法研究所」では、世界中の患者に伝統的なチベット医療を施している。またそのかたわら、チベット医学と天文科学を学生たちに教えてもいる。ここの卒業生は、ネパール、インド、ブータンをはじめとする世界各地のチベット人社会に、医者として貢献している。

チベット文献図書館 The Library of Tibetan Works and Archives(ダラムサラ)

ダラムサラにある「チベット文献図書館」の役割は、海外からの学習者を対象に、チベットの歴史、言葉、文化を教育することにある。
チベット文献図書館は、チベット学の研究として国際的に認められた最初の機関である。1992年までに教えた研究生は5,000人を超え、その出身地も30ヵ国以上に及ぶ。

チベットハウス Tibet House(ニューデリー)

ニューデリーにあるチベットハウスの役割は、海外からの学習者を対象に、チベットの歴史、言葉、文化を教育することにある。

チベット舞台芸術研究所 Tibetan Institute of Performing Arts (TIPA)(ダラムサラ)

ダラムサラの「チベット舞台芸術研究所」では、伝統的なチベット歌劇[アチェ・ラモ]や、舞踊・唄・音楽の保存に努め、世界中でその成果をあげている。
インド、ネパール、ブータンのさまざまなチベット人学校で舞台芸術を教える先生たちは、多くがここで学んだ人たちである。

チベット文化出版局などの出版センター(ダラムサラ)

ダラムサラのチベット文化出版局などの出版センターは、文化保存のため、カンギュルやテンギュルなどの仏典をはじめ、何千というチベット語の書物や経典を出版する。

今日では、インド、ネパール、ブータンに、84のチベット人学校があり、小中高校あわせて26,000人以上の生徒が学んでいる。このうち17校が寄宿学校であり、ほかに簡単な宿泊施設を備えた学校が7校ある。また、就学前の子どものために幼稚園が55ある。亡命政府の計画委員会のまとめた統計によれば、6〜17歳までのチベット難民の子どものうち、92%が学校に通い、さらにその84%ほどがチベット人学校に在籍する。それらの学校には1,280人の先生がいて、先生ひとりが受け持つ生徒数は、平均20人となっている。

学校教育は、すべてのチベット人子弟に対して無料である。一般の生徒は職業訓練を受け、成績のよい子どもは、大学進学や先生などになるための奨学制度を受けることができる。

1992年までに、国外にいる3,000人の学生が大学教育を修了している。高校を卒業する者は、毎年400〜500人いる。このうち200〜250人が、インドなど諸外国の大学に留学する。

亡命先での教育によって、今日、チペット医、行政官、博士(Ph.)、修士、エンジニア、先生、ジャーナリスト、ソーシャル・ワーカー、弁護士、コンピュータ・プログラマーなどが誕生している。高等教育を終えた学生たちは、亡命政府やその他の施設で働くようになる。チベット亡命政権の役人の99%が、インドで前述の教育を受けた人たちである。

ここ何年もの間、何千というチベットの若者が、危険かつ心の痛む旅を敢行し、ヒマラヤを越えてインドにやってくる。彼らやその親は、自由で有意義な教育を唯一インドに求めている。中国とチベットを訪れた第1次オーストラリア人権代表団は、その報告のなかで次のように述べている。

若者たちが教育への希望について語ってくれたとき、彼らの見た唯一の選択は、インドのチベット人社会に行くことだった。若者たちは言った−どんな苦労があろうと、そこでは自由に教育が受けられる、と。

1979年以来、およそ5,000の僧尼が仏教の勉強を続けるためにインドに亡命してきた。5〜14歳までの子どもが3,000人強、15〜25歳までが1,000人強、それぞれ新たな難民としてインドのチベット人学校に通っている。

教育について中国の言うことが正しいとするなら、チベットの若者たちが、このように祖国と親を捨ててインドにやってきたりはしない。

現在のチベット

チベット本土の基本情報と歴史

チベットの文化と習慣

チベット仏教