ダライ・ラマ法王2010年6月来日報告  8日目

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2010年6月25日横浜(チベットハウス)

法王は午前中、200人あまりの在日モンゴル人と会見しました。伝統服を来たモンゴル人音楽家たちが法王をオーディエンス・ホールにお迎えし、法王は、日本でモンゴルの人々と会うことが出来た喜びを表しました。

法王は、モンゴル人とチベット人の1,000年以上にわたる関係に触れました。「モンゴルに中期・後期仏教が伝わったのは、主にチベットを通じてのことでした。(法王の)『ダライ』という称号も、ダライ・ラマ3世の時代にモンゴルの王から授かったものです。私がチベットにいた頃も、多くのモンゴル人の学者がそこに住んでいました。ジンギス・カンの勇猛さと、その軍隊の力は、かつてモンゴルを一大軍事大国に押し上げました。今日、皆さんは、このジンギス・カンの勇気に、現代の知識と技能を加えることで、モンゴルに繁栄と平和をもたらさなければなりません。

仏教は、モンゴルとチベットの文化に重要な役割を果たしました。私たちは、さらに研鑽を積み、21世紀の仏教徒となる必要があります。経典を暗誦し祈るだけでは十分ではありません。それを研究し、分析する必要があります。カンギュール(経典部=仏陀の教え)は100巻、テンギュール(論釈部=カンギュールに対する解釈)は200巻あります。それらは単なる崇拝の対象であってはならず、勉強し、仏陀の教えを実践するためのテクストでなければなりません」。このように法王は述べました。

午後、法王は東京の世田谷学園を訪問し、「ビジョンからリアリティへ」と題する講演を、17の中学校・高校から集まった生徒を前に行い、校長、教頭、教師、職員、生徒から歓迎を受けました。

法王は、生徒に対し、勉学に励み、日本のみならず世界に貢献できる人間となるよう忠言しました。また、仏教的な学び——トー、サム、ゴムスム(聞いて、分析し、マスターする)——を説明しました。「学問分野をマスターするには、この三段階をしっかりと踏む必要があります。時代が変わっても、あなたの知識は時代に合わせて生き延びなければなりません。知識は鍵です。その鍵はあなたの魂を開いて、解決し、創造し、人類の福祉のために貢献するものでなければなりません」。このように法王は述べました。

「日本は第二次世界大戦中、とても辛く困難な時代を生きました。しかし、人々の復興への決意と勤労の結果、日本は立ち直り、民主的な法治国家となりました。それは素晴らしいことです。日本の若い皆さんは、この体験を海外に伝え、発展途上の国々を助けなければなりません」。このように法王は述べました。

「20世紀は暴力の世紀でした。皆さんは21世紀を平和と対話の世紀としなければなりません。平和とは、問題がないことではありません。沢山、あるでしょう。しかし、問題解決の方法は、相互尊重と対話に拠るべきであり、戦争に拠るべきではありません」

この講演を開催したのは、世田谷学園をはじめとする曹洞宗系の18の学校です。講演後、世田谷学園の林校長は、生徒、教師、職員を代表して、貴重なお話を賜り、若い生徒たちに地球に貢献するよう鼓舞されたことに対し、法王に感謝の意を示しました。

翌9日目には、法王はパシフィコ横浜の展示ホールで1万人の観衆を前に、法話・講演を行う予定です。


(翻訳:吉田明子)

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