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長寿祈願法要2022年11月30日

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インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ
2022年11月30日

今朝、ダライ・ラマ法王に捧げる長寿祈願法要がツクラカンで執り行われた。

長寿祈願法要に出席するため、ツクラカン本堂に徒歩で向かわれるダライ・ラマ法王。2022年11月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ダライ・ラマ法王は、法王公邸の門のところでガンデン僧院座主と同僧院のシャルツェ学堂法主及びジャンツェ学堂法主に出迎えられ、ドゥンチェンと呼ばれる伝統楽器のホルンの演奏とターラー菩薩の真言が唱えられる中、それぞれ黄色い帽子を被って会場まで法王を先導した。ツクラカンでは、最前列の中央にガンデン僧院座主が法王に向かい合って着座した。その左側にジャンツェ学堂法主と、セラ僧院メイ学堂、デプン僧院ロセリン学堂、デプン僧院ゴマン学堂の僧院長らが座り、右側にはガンデン僧院シャルパ学堂法主、ガンデン僧院シャルツェ学堂、ガンデン僧院ジャンツェ学堂、セラ僧院ジェ学堂の僧院長らが座った。ツクラカンの内外には、約4,500人もの信徒たちが法要に参加していた。

最初に、トゥルシク・リンポチェによって作られた『神饌しんせんなる祝福の雲(Clouds of Ambrosial Blessings)』の祈願文が唱えられた。それは、ダライ・ラマ法王の系譜を最高位へと結実させ、チベットとインドにおける観音菩薩の一連の生を呼び起こす祈願文である。

法王は「今日、私の仏法による兄弟・姉妹の方々が、私のために長寿祈願法要を執り行ってくださいます」と告げられた。
「この日のために、デプン僧院ゴマン学堂とラデン神変祈願大祭トラストが準備を重ねてくださいました。そこで今日は、私の居室にあるワティ・サンポの観音菩薩像の写真を持参することにしました」

「観音菩薩はチベットの守護尊であり、私はその加持を受けている者です。私は毎日、ワティ・サンポに祈りを捧げ、観音菩薩の身口意の象徴として、その願いをかなえるために尽力しています。そして、今後数十年間、私はそれを続けていくつもりです。今日、あなた方は私のために祈願法要を行ってくださいます。ワティ・サンポは私の帰依処であり守護尊でもあるので、その観音菩薩の写真を私と共にここにお持ちしたのです」

「ローケーシュヴァラーヤ(世自在観音)の本尊像はラサにありますが、ある事情により、ワティ・サンポが私と共にここにいらっしゃいます。私が祈りを捧げると、ワティ・サンポは私に微笑みかけてくださるように感じます。ワティ・サンポは歩くことも話すこともできませんが、その像は私に加持を与えてくださるので、観音菩薩の象徴として、私はその願いをかなえようと決意しています」

ツクラカンで行われた長寿祈願法要で、法王公邸に鎮座するワティ・サンポと呼ばれる観音菩薩像の写真を手で示されるダライ・ラマ法王。2022年11月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は続けて、次のように述べられた。
「今日、チベット人の在家の人々と僧侶たちが、白ターラー菩薩の儀軌に基づいて法要を執り行ってくれます。デプン僧院ゴマン学堂とラデン神変祈願大祭トラストの両者のご参加に感謝いたします」

「チベット仏教は世界中で高く評価されるようになり、それについてはデプン僧院ゴマン学堂が貢献してくれました。私はアムドで生まれたので、この僧院にご縁を感じています。あなた方は、仏陀の教えを読み、問答することのみならず、内面的な瞑想によっても学び、修行することで、仏陀の教えを守ってきました。ガンデン、セラ、デプン、タシルンポ僧院のすべての僧侶たち、そして、ヒマラヤ地域全域の僧侶や尼僧たちにも、仏教を学び、修行を続けるようお願いしたいと思います。そして私はこの先、10年から20年の間、あなた方を導いていきたいと思っています」

「仏陀は、たとえご自身が説かれた教えであっても、単に信仰心から鵜呑みにして信じるのではなく、あたかも金細工師が金を吟味するために、切って、焼いて、擦って、それが純金かどうかを調べるのと同じように、その教えを自らの知性を用いて分析した結果、受け入れるようにと言われたことを心に留めておいてください。そして、破壊的な感情(煩悩)を認識し、それらに取り組むことを学び、かつ、論理的なアプローチを取ってください。これらはただの空虚な言葉ではなく、私たちの心に平和をもたらしてくれる仏陀の広大で甚深なる教えなのです」

「仏陀の完全なる教えは、私たちチベット人の間にだけ見出すことができます。仏教の伝統を継承している国々はありますが、私たちのようにナーランダー僧院の伝統を受け継いで、論理的アプローチを取っているところは他にはありません」

「私はここインドの北部に住んでいますが、皆さんの多くは南インドに住んでいます。私たちは物理的に離れていますが、最近のテクノロジーのおかげで、簡単に連絡を取り合うことができるようになりました」

長寿祈願法要の間、本堂の中でダライ・ラマ法王の話に耳を傾ける参加者たち。2022年11月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「中国や他の国々では、ますます仏教への関心が高まっていますので、ぜひあなた方の学びと修行を続けていってください。さらに、科学者たちも仏教心理学に注目するようになってきています」

「先程も言いましたが、私がワティ・サンポの写真を持ってきたのは、彼が私の上師だからです。パルデン・ラモの湖の表面に3つの文字が現れたことが示すように、私は明らかに観音菩薩とカルマのつながりがあるのです。あなた方は私を指導者と呼びますが、私はワティ・サンポを私の指導者とみなしており、昼夜、ワティ・サンポからインスピレーションを受けています。その加持の力が私を通して流れているのです」

注:ダライ・ラマ法王は幼少の頃、聖なる湖、ラモ・ラツォ湖の湖面に浮かび上がった “ア(Ah)”、“カ(Ka)”、“マ(Ma)” の文字を手がかりに発見された。

「ここに集まってくださったすべての人々、特に、デプン僧院ゴマン学堂の僧侶の皆さんに感謝いたします。『神饌しんせんなる祝福の雲』の偈頌が示すように、私はデプン僧院ゴマン学堂とご縁があるのです」と法王は述べ、次の偈を引用された。

ジャムゴン・ラマ(ツォンカパ大師)の生誕地の近く、
ドメー(アムド)の中心地の伝統を守る家族のもと、
あなたは不思議なことにタクツェルに生まれた
パルデン・ラモの予言に従って、あなたに祈りを捧げます

そして、ダライ・ラマ法王の長寿を願うターラー菩薩の祈願が捧げられた。ガンデン僧院座主が法王に近づき、適宜、長寿の杖と、法王への賛辞と、誓願の偈頌のコピーを法王に手渡した。

長寿祈願法要で、ツクラカンに入場するトランス状態に入ったネチュン寺の神託官。2022年11月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

隣のカーラチャクラ堂で準備していたネチュン寺の神託官が、まもなくツクラカンに大またでゆっくりと入ってきた。彼はダライ・ラマ法王に礼拝し、仏陀の身口意の象徴を披露して、紅茶を捧げた。神託官がダライ・ラマ法王に語りかけると、法王は静かに、しかし熱心に耳を傾けられていた。彼は法王に、グル・パドマ・サンバヴァと千手観音の像、そして白い絹のスカーフ(カタ)とワティ・サンポの観音菩薩像の写真を捧げた。その後、僧院の座主や他のラマの方々、僧院長らを共に法王の前に呼び寄せ、共同体に奉仕することの誓いを仕草で表した。

トランスが終わりに近づく頃、神託官は外に連れ出された。いくつものトルマ(チベット人の主食であるツァンパで作った儀式用の菓子)が法王に献呈され、供物を捧げる行列が始まった。

ガンデン僧院座主がマンダラを捧げ、仏法の興隆と、法王が百劫までも生きられるようにと祈願した。また、「一切有情が輪廻から解脱するまで、どうかここにとどまってください」と懇願し、長寿の甘露と長寿の薬が捧げられた。次に、法王のダルマの主権を象徴する「7つの政治的な宝」が贈られた。これらに続いて、「8つの吉祥なるもの」も捧げられた。

ツクラカンで行われた長寿祈願法要で、ダライ・ラマ法王に供物を捧げるガンデン僧院座主。2022年11月30日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王のお二人の家庭教師、ジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥらにより詠まれた法王の長寿祈願文が読誦され、その後、チベットの護法尊たちが、喜んでそのお務めを果たしてくれるようにとの祈願文が誦経された

法王は「私は最善を尽くしました。私の努力に限りはありません」と述べられた。「私たちが、次の偈頌の一節の祈りを捧げた時——

雪山に周りを囲まれたこの浄土は
すべての利益と幸福のすべてが生じる源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ法王がおられる
法王の御足の蓮華が何百刧もの間 健やかにとどまられますように

と、唱えられた時、私の目は涙であふれました。私たちは戦う必要などないのだと思いました。私が成し遂げたことはすべて、他者との対話によって成就させ、それがワティ・サンポを喜ばせました。少しの間、悲しくて涙がでましたが、私たちチベット人とヒマラヤ地域の人々は、固く誓い合って、お互いの絆を守り続けてきたのです。私たちは、ナーランダー僧院の伝統を継ぐ完全なる教えを守ってきたのです」

「護法尊たちは私に随従してくださいます。ネチュン寺の神託官も、トランス状態でここに来てくれました。護法尊も人間も、私たちはすべて同じ目標を持っています。幸せで安らかでありますように」

最後に、ダライ・ラマ法王作の『仏法繁栄のための祈願文』が読誦され、法要の幕が閉じられた。法王がツクラカンを去られる時、信徒たちにより、ツォンカパ大師への礼讃偈『ミクツェマ』の祈りが唱えられた。