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長寿祈願法要

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インド、ビハール州ブッダガヤ
2023年1月1日

今朝、チベット仏教ゲルク派大祈願祭の一環として、ゲルク派を代表するゲルク国際財団(Geluk International Foundation)がダライ・ラマ法王の長寿祈願を執り行った。

法王がゴルフカートに乗って会場のカーラチャクラ・グラウンドに到着されると、黄色い三日月形の帽子を被った僧院長の一団が、白いカタ(儀礼用の絹のスカーフ)と線香を捧げて法王をお迎えした。法王は彼らに付き添われてステージへと向かい、ガンデン僧院座主、ガンデン副座主であるガンデン・ジャンツェ法主とガンデン・シャルツェ法主が先導する読誦の最終部分でステージに到着された。
ブッダガヤのカーラチャクラ・グラウンドで開催されたチベット仏教ゲルク派主催による長寿祈願法要のステージの情景。 2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

この日の長寿祈願法要は上師供養(ラマチュパ)の儀軌に基づいて行われ、一万六千人のヒマラヤ地域出身の僧と尼僧達によるラマが行うべき準備の儀式が、快いリズムの詠唱ではじまった。これが終ると、法王は開会の挨拶を述べられた。

注:ラマが行うべき準備の儀式とは、儀軌を行う前に自らを本尊として立ち上げること。

「私たちは今日、西暦の新年最初の日に、この聖なるブッダガヤの地で、三大僧院であるガンデン、セラ、デプン僧院の僧侶達が長寿祈願を捧げてくれる中で、こうして集まることができました。サキャ派やニンマ派をはじめとする他の伝統を引き継ぐ導師方も参加してくださいました。私たちは相互依存の関係にあるからこそ、こうして集っているのです」

「私に関して言えば、私は仏教の教え、特にチベット仏教の伝統に基づいて、少なくとも100歳までは奉仕しようと決意しています。皆さんもご存じのように、次の偈頌の内容が私の心を駆り立てています」

この虚空が存在する限り
有情が存在する限り
私も存在し続けて
有情の苦しみを滅することができますように

「チベット本土にいる人々は困難に直面しています。しかし、誰よりも熱烈に私の長寿を祈願してくれているのは、アムド地方、カム地方、ウツァン地方のチベット三域、そしてヒマラヤ地域、モンゴル国、カルムイク共和国、ブリヤート共和国、トゥヴァ共和国の人々です。皆さんの心からの願いは必ず実を結びます。私は長生きすると決意していますし、夢の中で、自分が百歳以上生きる予兆を得ました。私たちのカルマ的な縁が、それを実現させる条件として働くことでしょう」

ゲルク派主催の長寿祈願法要で、会場のカーラチャクラ・グラウンド後方に高々と積み上げられた、聴衆に配られる予定の供物。2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私たちは、ピクニックを楽しむためにここに集まったのではありません。この先長年にわたって三つのより高度な修行(持戒・禅定・智慧)の教えを聞き、思索し、瞑想修行(聞思修)を続けていける土台を築くために集結しました」

法王は、仏教はアジアの伝統として始まったが、今や全世界からの関心を持たれている、と指摘された。西洋の科学者のみならず、中国の科学者も心や感情の働きについて熱心に研究している。中国は元来、仏教国であったが、共産主義体制下の当局は仏教を徐々に衰退させようとしてきた。しかし近年では、仏教への人気と関心がますます高まっている。これは、物事が変化して、より良い世界へと変わる兆しかもしれない、と法王は述べられた。

「現在私は体調も良く、頭脳も明晰です。私はまだ笑うことができますし、これから先何年もこの状態で居続けるつもりです」

「皆さんも、幸せを感じ、これからもずっと仏法修行を続ける決意を持ってください。我々チベット人ならびに近隣地域の人々は、シャーンタラクシタがチベットを訪れて以来、ナーランダー僧院の伝統を受け継いできました。この伝統が末永く栄えるよう祈りましょう」

「私は最善を尽くしてきました。世界中の人々が、ダライ・ラマという名前を身近に知るようになりました。人々は、私が平和や慈悲について何を語るかを知っています。私は、これから先15年間以上、こうした善き事柄について語っていくつもりです」

カーラチャクラ・グラウンドで行われたゲルク派主催のダライ・ラマ法王長寿祈願法要で、供物を捧げ持ち、法王の前に進み出る列の順番を待つ在家と出家のゲルク派の人々。2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私はいつも、できる限り菩提心と空性について考えるようにしています。雪国チベットは未曽有の悲劇を潜り抜けてきましたが、そのせいで人々が自らの文化と伝統に目覚めたことは、一つの良かったことだと言えるでしょう。現在では、チベット仏教は人類の宝であるという認識が広まっています」

「私たちが新年の始まりである今日、ここに集まったことは、ものごとが良い方へ変わっていく兆候だと思います。すべてが良くなるように祈ってください。タシデレ(吉祥あれ)」

ここで長寿祈願の儀式次第に則って、ガンデン僧院副座主のガンデン・ジャンツェ法主とガンデン・シャルツェ法主が前に進み出て、法王に全宇宙を象徴するマンダラを捧げた。続いて、ステージの下でチベット人パフォーマー達が歌と踊りを披露し、ステージ上ではモンゴル人のヴァイオリニストが音楽を奏でる中、ガンデン僧院座主が法王の人生を振り返る賛辞と長寿祈願文を読み上げた。

長寿祈願法要の会場となったカーラチャクラ・グラウンドにおいて、ガンデン僧院座主がダライ・ラマ法王への賛辞を読み上げる中、モンゴル人バイオリン奏者が演奏をした。2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

ガンデン僧院座主のロブサン・テンジン・リンポチェは法王について次のような賛辞を贈った。
「チベット人を導く指導者が他に誰もいなかった時、法王は弱冠16歳にしてチベットへの責任を背負われました。亡命の地では民主主義を導入なさいました」

「法王は、偉大な導師方の下で精進努力して学ばれ、仏陀の教えを完全に習得して教えの守護者となられました。教える側となられてからは、膨大な数の教えを説かれ、他の優秀な学者たちの頭上に燦然と輝く存在となられました」

「法王は、チベットを去る直前に『八千頌般若』の経典を開いて “くじけてはいけない、勇気を奮い起こすのだ” と書かれた行まで読まれてからチベットを出発され、無事にインドに到着されました」

「その後、亡命したチベット人達は苦しみました。食べ物すら見つけられずに苦労する者達もいました。法王は、彼らに居住地を与える責任を背負われました。法王は、我々の僧院を再建なさいました。今やそれらの僧院は大いに繁栄し、我々の伝統が世界に知られるようになりました。かつてチベットがそうであったように、今では外国人、特にモンゴルの方々も我々の僧院で学ぶことができるようになっています」

「チベット中央政府は民主的な選挙制度に基づいています。法王は、内閣、議会、司法府を設立されました。そして徐々に、ご自身の責任を選挙によって選ばれた指導者たちに移譲なさいました」

カーラチャクラ・グラウンドで行われた長寿祈願法要で、ガンデン僧院座主が賛辞を読み上げる間、チベット人パフォーマーたちが歌と踊りを披露した。2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「法王はチベット問題への支援を得るために働かれました。チベット本土に住むチベット人たちは大変な困難に直面していますが、彼らの困難を解決する方法として、法王は中道のアプローチを選択されました。これにより、チベットと中国の代表団による意見交換協議が重ねられました。さらに法王は、チベット問題への取り組みに関して、米国内閣をはじめとする海外からの支持も獲得なさいました」

「チベット本土の外に住むチベット人は、学んだ内容をチベットや中国に広めるために帰国することができました」

「法王は、人々を幸福にする人間価値を提唱し、宗教間の調和を促進して、チベットの文化と自然環境の保護に尽力され、古代インドの智慧から得られる恩恵への認識を高めるといった取り組みに尽力されました」

ガンデン僧院座主はさらに続けて述べた。
「我々は、皆さんの願いを受けてガンデン座主事務所を立ち上げました。マイトレーヤの著作をはじめとする論書を研究し、討論会も招集しました。さらに今年は50名のゲシェとゲシェマ(仏教博士号を持つ僧侶と尼僧)が誕生しました。学者たちが専門の学問をより深く学び研究する機会を導入しました。また、他の教育機関との連携を確立するための協議も始まりました」

「この度法王が『菩提心の解説』を説かれ、またターラ―21尊の灌頂を授けてくださったこの金剛の結跏趺坐がある地に集結している我々は、感謝をこめて『吉祥真実経』と秘密集会(グヒヤサマージャ)の真言を3,000回唱えました。他にも長寿祈願本尊の真言200万回、ターラ―菩薩の真言2,000万回、六字真言2,000万回、金剛上師の真言1,000万回などを唱えました。在家の人々の中には、肉や酒を断った人もいます。また、ツォンカパ大師の伝記を出版されました。法王に、緑ターラ―と長寿の成就者タントン・ギャルポのタンカ(仏画)を捧げたいと思います」

カーラチャクラ・グラウンドで開催された長寿祈願法要にて、ガンデン僧院座主は法王の人生を振り返る賛辞を読み上げ、法王の長寿を願った。2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「ここで積まれた善行の功徳すべてを法王のご長寿に捧げます。チベット人がこれからも観音菩薩の転生者に導かれ、その保護のもとにあり続けますように。我々は、法王のご長寿を熱烈に祈願いたします」

ここで法王に、仏像、経典、仏塔、さらに僧侶の持ち物、七つの王者のしるしと八つの吉祥をもたらす聖なる法具が献上された。

アルナーチャル・プラディーシュ州首相ペマ・カンドゥ氏と、その兄弟のタシ・ツェリン議員が、近年縁起が良いとされるようになった木の枝、葉、種を法王へのお土産として献上した。彼らは、次のように語った。
法王が1959年3月29日に初めてインド領へ入られたのはアルナーチャル・プラディーシュ州タワン地区のケン・ゼ・マニというところであった。その時法王は、“グロン・ククパ” と呼ばれる岩に山歩き用の杖を突き刺された。その後、その杖は美しい樹へと成長し、人々の信仰を集めるようになった。この枝、葉、種はその樹からとったものである。

続いて、ゲルク派国際財団秘書官のゲシェ・ロブサン・ギャルツェン前デプン僧院ゴマン学堂の僧院長が会計報告をし、長寿祈願法要の支援者と参加者に感謝の意を表した。

カーラチャクラ・グラウンドで開催された長寿祈願法要の最後に、聴衆に向かって手を振られるダライ・ラマ法王。2023年1月1日、インド、ビハール州ブッダガヤ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

法王は、サキャ派とゲルク派の高僧たちに温かな謝辞を述べると、再び聴衆に手を振られた。そして、ゴルフカートに乗って、ガンデン・ペルゲーリンに向けて帰路につかれた。