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長寿祈願法要

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2022年10月26日
インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今日、ダライ・ラマ法王は、法王に捧げる長寿祈願法要に出席するため、ツクラカンに徒歩で向かわれた。法王がツクラカンの中庭に到着されると、法要を主催する、チベット子ども村の出身者から成るTCVグローバルファミリー(TCV Global Family)と北米チベット協会(North American Tibetan Associations)の各代表が伝統的な慣習に基づいて法王を歓迎した。中庭にはチベットの様々な地方の伝統衣装をまとったミュージシャン、歌手、ダンサーのグループが並んで法王を出迎え、法王は微笑んで手を振りながら、エレベーターまでの道のりと、それを降りてからのツクラカンを巡る回廊をしっかりとした足取りで会場の入口まで進まれた。

長寿祈願法要の会場に向かう途中で、本堂の下の道に集まった人々に手を振られるダライ・ラマ法王。2022年10月26日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

TCVグローバルファミリーの700名と北米チベット協会の150人のメンバーを含む推定5千人の参加者に加え、チベット子ども村の学校に通う数百名の現役の学生たちがこの法要に参列した。

法王の真正面に座し、法要を先導したのはリン・リンポチェであった。その左側にはサムドン・リンポチェとキルティ・リンポチェ、右側にはカギュ派の高僧であるリング・トゥルクとナムギャル僧院の僧院長タムトゥク・リンポチェ、ナムギャル僧院の金剛阿闍梨が並んで座していた。

法要は、トゥルシク・リンポチェが著された、インドとチベットに顕現した歴代の観音菩薩の化身を勧請する祈願文の詠唱から始まった。続いてダライ・ラマ5世の作である『無量寿仏の清らかな心髄を引き出すもの』(tsepag me danma chuden)に基づく長寿祈願文が唱えられた。

次に、法王に捧げる経典、仏像、幾つもの絹布の束などの供物を持った人々が本堂いっぱいに整列し、経頭がマンダラ供養を行った。そこでリン・リンポチェが立ち上がり、法王の前に歩み出ると、法王への賛辞と請願の偈頌を下記のように読み上げた。

法要の中で、法王に捧げる供物を手にして整列するTCVグローバルファミリーと北米チベット協会のメンバー。2022年10月26日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「仏法僧の三宝に礼拝いたします。すべてのチベット人の崇敬の対象であるダライ・ラマ法王に、チベット子ども村(TCV)の卒業生と現在の学生たち、生徒、職員、教師、そして北米に住むチベット人より請願いたします」

「何劫も前に悟りを開かれたにもかかわらず、虚空に広がる一切有情の資質に合った教えを授けるためにこの世に留まり続けてくださる法王。カダム派の著作には、観音菩薩は何度も人の姿をとって顕現されたと書かれていて、チベットの仏教王や、ツォンカパ大師の弟子である初代ダライ・ラマ法王などが去来されました。そしてチベットの政治と宗教の両責任を負われたダライ・ラマ法王5世は、権威主義ではなく、民主主義の先駆けとなる、僧侶と在家の各代表が参加する政権を運営されました」

「ダライ・ラマ法王13世は、チベットの行政と教育の制度に多くの変革をもたらし、チベットに水力発電を導入し、通貨を制定されました」

「そして、パルデン・ラモゆかりの聖なる湖に現れたヴィジョンで示されたように、ツォンカパ大師の生誕地の近くで誕生されたのが現法王のあなたです。法王は、家庭教師であるキャブジェ・ティジャン・リンポチェとキャブジェ・リン・リンポチェという2人の持金剛のもとで学び、リン・リンポチェの指導の下、比丘戒を受戒されました」

「そして法王は揺るぎない菩提心の修行を重ね、多くの弟子たちに悟りの種を蒔き、卓越した勇気をもって、何度もカーラチャクラの灌頂を授けてこられました。あなたは論理と哲学を学び、多くの密教の灌頂、教え、口頭伝授と解説の伝授を受けられました」

「これらの知識によって十分な資質を得られた法王は、16歳のときにチベットの政治的責任と宗教的責任の両方を引き受け、チベットの統治制度を改革し、公正の感覚を導入されると共に、何十万もの人々に教えを授け、精神的な道を歩むための種を蒔かれました」

「法王は世界中を旅して様々な人々に語りかけてこられました。最も学識のある学者でさえ、法王ほど明晰で的確な説明をすることはできません。法王は深遠かつ広大な方法で、仏法と有情に奉仕してこられたのです」

法要の中で、法王への賛辞と請願の偈頌を唱えるリン・リンポチェ。2022年10月26日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「チベットが占領され、中国共産党の圧政が敷かれた後、法王は亡命され、何万人ものチベット人があなたの後に続きました。法王は将来を見据えて、チベット人難民が生活していかれるように取り計られ、集落を作り、健康を管理するための医療施設を設立されました。法王は大僧院の学問拠点の再興、高等チベット学中央研究所などの機関の創設に力を注がれ、その結果、僧院長にふさわしい資格を持つ多くの学匠が輩出されています」

「これらの学問拠点では、厳格な学習の伝統が衰えることなく継承されていて、ヒマラヤ地方やモンゴルからの留学生も受け入れられています」

「そして法王は、シュクデン(ドルギャル)の修行について批判されました」

「思いやりの心から、法王は、仏陀の教えが説かれたことのない土地の人々にも仏法を広めておられます」

「法王は、チベット仏教の各宗派間の、そして世界の主要な宗教間の調和を図るために力を尽くされています」

「法王は、仏陀の教えを科学・哲学・宗教の3つの観点から再評価し、『インド仏教の古典における科学と哲学(Science and Philosophy in the Indian Buddhist Classics)』という本の編纂を依頼されました。現代科学とインドの伝統的な智慧を結ぶ新しい橋を構築されたのです」

「チベット問題を互恵的に解決するという視点から、法王は、非暴力による世俗的な方法である “中道のアプローチ” を策定されました。その平和的な業績をもとに、法王はノーベル平和賞や米国議会ゴールドメダルなどの賞を受賞されました」

リン・リンポチェが読み上げる、法王への賛辞と請願の偈頌を目で追われるダライ・ラマ法王。2022年10月26日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「法王のヴィジョンに触発されて、教育を受けるために本土のチベット人が亡命し、亡命先で研鑽を積んだ学者たちが、チベットに戻って教えを説くようになりました」

「法王は、世界の自然環境を守ることが急務であるとの認識を高めてくださいました」

「法王は、亡命チベットにおいて、男女を問わずすべての成人が参加できる民主的な制度の導入を推進されました。そして法王は、2001年から徐々に政治的責務を退かれ、2011年には選挙で選ばれた指導者にすべての政治的権限を委ねられました」

「法王は、有情の幸福のために人生を捧げ、4つの使命に導かれて行動していることを明らかにされています。第1の使命は人間的価値の促進であり、第2の使命は宗教間の調和の推進です。第3の使命はチベット人が法王に寄せる信頼と、彼らの代弁者としての法王の役割に関するものですが、それは、チベットの文化を守り、チベットの自然環境を保護する必要性を認識させることにまで及んでいます。そして第4の使命は、古代インドの智慧、特に心と感情の働きに関する智慧を現代によみがえらせることだと宣言されました」

「総括するならば、私たちチベット人、そして生きとし生けるすべての者が法王から賜ったご恩に十分に報いることなどできませんが、感謝のしるしとして、私たちはこの儀式を執り行い、さまざまな供物を捧げ、痛切に祈願することで、法王のご長寿を請願しているのです。あなたの命はチベット人にとって最も大切なものであり、すべての有情の利益のために不可欠なものです。法王がこれからも一切有情、特にチベット人を見守り続けてくださるように祈願いたします」

そこでリン・リンポチェは、法王にまずマンダラを捧げ、次に仏陀の身口意を表す無量寿仏の像、経典、仏塔を献呈した。それから長寿の甘露が入った水瓶、長寿の薬が入った鉢、長寿の杖が捧げられた。
次に、息災・増益・敬愛・降伏という4つのすぐれた行いを象徴する、形と色の異なるそれぞれのトルマ(チベット人の主食であるツァンパで作った儀式用の菓子)を献呈し、続いて、傘蓋、双魚などの「8つの吉祥文様」の象徴が乗ったお盆と、法輪、宝珠、王妃などの「7つの政治的な宝」を乗せたお盆が捧げられた。最後にリン・リンポチェは、釈尊に捧げられ、釈尊がそれらを受け取ることで加持された「8つの吉祥なるもの」(右巻きの法螺貝、ヨーグルト、長寿の萱草、黄丹、木瓜の実、鏡、牛黄、白いからし菜の種)を法王に捧げた。

法王に伝統的な供物を捧げるリン・リンポチェ。2022年10月26日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

次に、2人の家庭教師が詠まれた法王の長寿祈願文と、法王が記されたチベットの護法尊への祈願文が誦経された後、TCVの子どもたちが演奏を披露し、「法王がご長寿でありますように!」と声をそろえて歌った。

そこで法王は次のように述べられた。
「今日は、若者と年配の方々を含む亡命チベット人の皆さんが、私の長寿を願ってこの法要を執り行ってくれました。そして、物理的に私たちと共にここにいることはできませんが、私に対する心からの信仰と敬意を寄せてくれているチベット本土の数百万のチベット人たちも、この法要に一緒に参加してくれていることを感じます。また、この儀式が行われることを知った世界の他の地域にいる人々も共に祈ってくれたかもしれません」

チベットは観音菩薩と特別なつながりのある場所として知られています。そして私は、観音菩薩に加護されている、カルマと祈願によって観音菩薩との絆で結ばれている人間です。私は、仏法とチベット文化の繁栄のために尽力し、それによって得られた功徳を観音菩薩の修行を通して廻向しています。チベット人とチベットの大義のために、私はあと20年は生きるつもりでいます」

「私は毎日、菩提心と空に瞑想し、その結果、心が安らぎ、身体も健康になりました。菩提心を育むことは私の主な修行です。この修行によって不安や恐怖から解放され、心の強さがもたらされています。皆さんも、観音菩薩に加護されていることを確信し、菩提心を育むために懸命に努力してください」

長寿祈願法要の儀式で、参列者に向かって話をされるダライ・ラマ法王。2022年10月26日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私は歳をとりましたが、まだ話すことができます。今生で私と縁のある人々は、これから何生にもわたり、悟りを開くまで観音菩薩から見守られることでしょう」

続いて法王は、『精神的導師と観音菩薩の不離』という成就法の口頭伝授を行われた。これは、何年も前に、シャンカワ・ギュルメ・ソナム・トブギャル内閣副大臣が、法王に真摯な敬信の念と供物を捧げて、「観音菩薩と法王が不離一体であることについての簡潔で完全な成就法をお書きください」と請願したことを受けて、法王が著されたテキストである。

最後に法王は、「私はこの人生を有意義なものにしました。そしてこれからも、私のこの努力を続けていくと決意しています。チベット問題は解決するでしょう」と述べられた。

締めくくりに『仏法興隆の祈願文』と『真実の言葉』が唱えられ、法要が完結した。