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英国開発大臣クレア・ショート 中国政府の非道な計画に対する訴えを 「ハリウッド・ファンタジー」として一蹴

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2000年6月28日
ガーディアン紙

クレア・ショート
「チベット派の圧力団体はアメリカではとても強力。
ハリウッドみたいなところではね」

世界銀行理事会は、中国西部貧困緩和プロジェクトに対して、融資を進めるか否かを次の10日間で決定する。同理事会の英国代表は、英国開発大臣クレア・ショートと開発省の意向を取り入れる。これまでのところ、クレア・ショートはプロジェクトの熱烈な後援者だ。

クレア・ショートが念を押して言う。「貧困緩和は良い事である」。また「貧困緩和はある程度の人権—例えば食料、住居、雇用などの権利—を大幅に改善する」ともクレア・ショートは主張する。クレア・ショートは、「開発省の管轄する人権については、以上の肯定的な権利だけに限られている」と強調。「外務省の領域に含まれる複雑な政治的・市民的権利には開発省は関与しない」とクレア・ショート。

昨年12月、英国下院国際開発委員会で証言していた際、クレア・ショートは、中国での人権に関する質問を撥ね付け、(プロジェクトを)支援するのは、自分がキャンペーン活動の対象としている諸権利が強化されることを確信しているからだと強く主張。昨年の予備選挙で、英国は西部貧困緩和プロジェクトを支持した。アメリカとドイツの代表団は反対票を投じ、フランス、カナダ、フィンランド、オーストリアの代表団は棄権した。これらの国々はクレア・ショートに比べて、貧者の権利には関心が希薄だったのか?

それとも、恐らくは、プロジェクトの胡散臭い面をより深く理解していたためか? 問題はいわゆる青海省部門−6万人近くの漢民族系中国人農民を青海省西部へ移動させて、青海省東部の土地への圧力を緩和するという中国政府の提案−に端を発する。中国西部にある広大な青海省はかつて、物事を改善するよう中国政府が圧力をかけてきたことから、多大な困苦をなめたことがある。

「大躍進政策」の結果、60年代はじめには数百万人が餓死。また、見当違いな灌漑プロジェクトのせいで、耕地可能な土地の推定40%が荒廃されるままにされた。

さらに、毛沢東主席の更にばかげた「千年至福(王国)計画」の一環として、住民は厳しい耕作作業を強制された。となれば、過去からのメッセージはひとつ、北京政府が要求する青海省の農業改善には「慎重に対処せよ」ということである。

ただしメッセージはもうひとつある。チベット人は青海省をアムド地区と呼んでいる。それは、かつて青海省の大部分がチベットに属していたからだ。中国が1950年にチベットに侵攻して中国の一省にするまでは、ずっとチベットの土地だったし、いまでもチベット人はもとより、イスラム系などを含む多種多様な民族グループが生活する地でもある。

現在のダライ・ラマと故パンチェン・ラマのふたりがアムド出身だという事実にもかかわらず、クレア・ショートの歴史認識は漠然としているようだ。6万人の中国人農民を、チベット人が多数占めるチベットの牧草地帯へ入植させるのは、6万人の中国人移住者の経済的権利を改善させるという単純な事柄ではない。これは、ドラン郡(都蘭)のチベット人の経済的、政治的、文化的権利の問題でもあるのだ。

西部貧困緩和プロジェクトに反対する声は、チベットの権益のためにロビー活動をしている様々な西側諸国のグループから挙がった。これまでのところ、クレア・ショートは動じていない。

実際、昨年12月、このような抗議は「流行のキャンペーン活動にすぎない」と彼女は委員会に言った。「チベット派の圧力団体はアメリカではとても強力」と彼女はこぼす。「ハリウッドみたいなところではね」。彼女は圧力団体を綿密に吟味したが、結局、決意はひるまなかった。「彼らの申し立ては受け入れられないし、ある種の流行に乗ったにすぎない主張をいいように歪曲して、政治的な理由のために、誤った投票をさせようとするのは間違っている」

世界銀行は昨年6月、西部貧困緩和プロジェクトに融資することを決定したが、世界銀行理事会が独立評価委員会による再評価報告書を検討するまでは、「プロジェクトの4000万ドル青海省部門には一切着手せず、一銭も融資しない」ことに同意した。6月23日、評価委員会の報告書がリークした。

報告書は、プロジェクトにアプローチした銀行のやり方を痛烈に批判、「銀行独自の環境保護、少数民族保護、そして審議会が遂行すべき規定が反故にされている」と結論付けた。評価委員会の調査でわかったその理由には、多くの世界銀行職員が頑として規定を曲げようとしているらしいことが挙げられる。「中国では、物事は別のやり方で行われている」と世界銀行職員らは言っている。確かにそうだ。中国では、政府のプロジェクトを承認するかと役人に尋ねられたら、ノーと言うには勇気がいる

。影響を受ける地帯の境界線は非常に厳密に引かれていて、評価委員会は、多数が — ほとんどはチベット人だが— 審議会からすっかり除外されていたことをつきとめた。すべての調査票では、回答者の名前を記入することが求めており、質問表の内部による証拠から、「質問表は回答者以外の人物によって記入されたものに違いない」と評価委員会は言っている。

評価委員会が、「恐怖に支配された雰囲気としか表現できない、不穏で大掛かりな事例の数々があり、その中にありながら、数名が大きな危険を犯してでも反対の意を表明していた」ことを発見したのはそれほど驚くべきことではない。これらの勇敢な数名の者も(クレア・ショートの言う)「流行」の犠牲者なのだろうか?

それとも、自らの経済的、社会的、政治的権利が何かしらの方法で拡大できると確信した人たちだろうか?

世界銀行自体の評価委員会によって反対派の懸念が裏付けられた今となっても、クレア・ショートはこれらの報告を「ハリウッド・ファンタジー」として一蹴するだろうか?