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第60回チベット民主化記念日におけるチベット亡命政権内閣の声明

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2020年9月2日

本日、私たちは亡命チベット社会に民主制度が誕生して60周年を迎えたことを祝してここに集まりました。この場を借りて、深い感謝と畏敬の念を込めて、チベットの民主化の先覚者である偉大なるダライ・ラマ14世法王に敬意を捧げます。また、チベット内外のチベット人の皆さん、世界中の支援者の皆様にご挨拶を申し上げます。

1952年、ダライ・ラマ法王は、チベットの政治的最高指導者に就任してわずか2年で改革委員会を設立され、より差別のない平等主義に基づいた社会をもたらされました。しかし、この革新的な取り組みは、中華人民共和国の占領軍によって阻まれました。1959年には、占領軍の暴力行為がチベット全土に広がり、法王は、祖国を離れざるを得なくなった何千人ものチベット人の先頭に立ってインドに亡命され、チベット人難民が生きていけるようにお世話をしてくださいました。このような途方もなく大きな責任を担われていた時期であったにもかかわらず、法王は、チベット亡命政権(CTA)を樹立して、チベット人社会の民主化の道を切り拓き続けてくださったのです。

1960年の9月2日、初の選挙で選ばれた亡命チベット代表者議会の議員たちが、チベット人のための民主制度の開始を宣誓しました。時は流れ、本日、私たちは民主制度の60周年をお祝いしています。私たちの民主制度は、その誕生以来、法王の寛大なリーダーシップと先達たちの多大な貢献の下で進化と繁栄を遂げてきました。

1963年、法王は、民主主義の理想と普遍的価値を土台とした民主的憲法草案を交付されました。その1年後には複数の女性代表者が選挙で選ばれ、女性が選挙で選ばれる国が世界でもわずかであった時代において、私たちの民主主義がいかに進歩的であるかが示される結果となりました。1977年には、ボン教の代表者たちも亡命チベット代表者議会の一員となりました。

1990年5月11日、法王は、特別総会における演説の中でさらなる民主化の必要性を強調されました。翌年、亡命チベット人憲章が議会で採択され、法王はこれを制定されました。1992年には、亡命チベット最高司法委員会が設立され、司法、立法、行政という民主制度の三本柱が完成しました。

2001年、全チベット人の利益とチベット問題を深く憂慮された法王は、政治的最高指導者としての立場を半引退する意向を発表され、チベット亡命政権の最高位である内閣首席大臣を初の直接選挙によって選出するよう呼びかけられました。その10年後、法王は、政治的最高指導者としての全権を主席大臣に移譲することを発表されました。当時は、民主化運動がアラブの国々を席巻していた一方で、独裁的な指導者たちが政治的権力の座にしがみついていた時代でした

こうして過去を振り返っていると、あらためて法王への深い感謝の念が湧いてきます。そして私たちの民主制度がさらなる民主化に向けて着実に進化し、世界中の国家と肩を並べて歩んでいることを誇りに思うのです。

私たちは本日、法王の先見の明あるリーダーシップと先達たちの貢献を歓喜してお祝いしていますが、先達の中にはすでに逝去された方も多く、私たちは彼らから託された責務についても考えなくてはなりません。亡命社会における民主制度の若かりし日の軌跡をお祝いすることは、あらゆる行為が民主主義の価値と原理をあざ笑うかのような政治体制下で暮らしているチベット本土の兄弟姉妹への責任を思い起こすことでもあります。チベット人の言語、宗教、アイデンティティといったもの全てを蝕もうとする抑圧的な支配体制下において、勇気ある本土の人々は、チベット独自の文化を守り続けているのです。

習近平中国共産党総書記は、去る8月28日と29日に北京で開催された第7回チベット工作座談会における演説の中で、国家の安全保障と、平和と安定の永続を強調しました。習氏は、学校のあらゆる学年において政治的思想教育を精力的に実施して、愛国心を教え込むよう呼びかけました。そして、「国境を護り、中国の安全を十分に確保するには、チベットの安定化が必要である」と述べ、チベット仏教を“積極的に誘導”して社会主義社会に適応させ、チベット仏教の中国化を“促進”するよう党員に求めました。演説は拍手を浴び、チベットにおける政策の達成を要求するものとなりました。

このような見当違いの抑圧的な政策が、154人ものチベット人を焼身抗議に追い込んだ窮状を深めるに過ぎないことは明らかです。中国政府は、チベットにおける政策の失敗を認めなければなりません。中国政府が本当に平和と安定を望んでいるのならば、チベット人の苦情に誠実に取り組む必要があります。そして法王の特使との対話を再開し、中道のアプローチに基いてチベットに真なる自治を与える必要があるのです。

2019年、米国国務省の「世界の信仰の自由に関する報告書」において、中華人民共和国は最下位国のひとつにランク付けされました。今年はじめには、国連において独立した地位を持つ5人の任務保持者が中国政府に対してパンチェン・ラマ11世の行方について情報提供を求めるとともに、独立した視察官がパンチェン・ラマのもとを訪れることを認めるよう呼びかけました。

世界中のますます多くの国々が、中華人民共和国によって世界規模で民主主義が脅かされていることに気づき始めています。今年6月には、中国がもたらす難題に国を超えて連携して取り組むための「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」が、米国、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリアを含む8カ国の国会議員によって設立されました。

チベット亡命政権の民主主義体制化を監督し、チベット人の抗議活動を非暴力の道に導いてこられたダライ・ラマ法王の不断の努力は、世界中で称えられ、支持されています。法王が種を蒔き、育ててくださった民主主義を、こんにち、私たちは収穫しているのです。また、これまでに選挙で選ばれた全ての議員の無私の奉仕に対しても、私たちは大きな借りがあります。

今月早々、選挙委員会は、主席大臣ならびに亡命チベット代表者議会議員の2021年総選挙の開始を発表しました。内閣は、世界各地の全てのチベット人が選挙のプロセスに積極的に参加することを強く望んでいます。全ての皆さんに、チベット人の悲願と私たちの大義を心に留めて、正しい候補者選びに取り組んでいただきたいのです。自由には、大きな責任が伴われます。参加するにあたっては、責任ある行動が必要です。とりわけソーシャルメディアにおいては、私たちは引き続き連帯し、不協和音をあおり立てようとする者たちに対する警戒を怠りません。

亡命チベット社会の民主主義を守り、さらに揺るぎないものにできるかどうかは、私たちの肩に掛かっています。民主主義の中心は市民であり、内閣は、皆さんが積極的に民主的プロセスに関わることを認めています。私たちは、献身と努力を刷新することによって、引き続きこの民主主義を強固なものにしていかなければならないのです。

この場を借りて、内閣はチベット内外のチベット人を代表して、チベットで起きている不正を正すためにイニシアチブを取ってくださっているリーダーの皆様に感謝を申し上げたいと思います。また、世界中の支援者の皆様に感謝を申し上げます。なかでも、亡命チベット社会における民主主義とチベット問題を支え続けてくださっているインド政府ならびに国民の皆様に、心より感謝を申し上げます。

新型コロナウイルスの世界的大流行により、世界は今、大変な苦難の中にあります。私たちは祈りの中で、命を落とされた方々のこと、そして悲しみの淵にあるご遺族のことを思わない日はありません。新型コロナウイルスが速やかに終息するよう心から祈念しています。

最後に、最も尊きリーダーであるダライ・ラマ14世法王のご長命をお祈り申し上げます。法王の全ての願いが叶いますように。チベット問題が速やかに解決し、チベット本土の兄弟姉妹と共に生きることができますように。

2020年9月2日

内閣


(翻訳:小池美和)