ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

第57回チベット民主化記念日におけるチベット亡命政権内閣の声明

Print Friendly, PDF & Email
2017年9月2日

本日はチベット民主化の57年目を記念する特別な日です。チベット亡命政権内閣(カシャク)はもっとも敬愛されるべき指導者であり、チベットに民主主義の道を拓いたパイオニアであるダライ・ラマ法王14世に敬礼し、深い感謝を捧げます。また内閣は全てのチベット人と世界の友人の皆さまに衷心よりご挨拶申し上げます。

ダライ・ラマ法王の壮大なビジョンと賢明な指導の下、57年前の今日、チベットに民主主義が生まれました。ダライ・ラマ14世は中国による占領前、ごくお若い時代に改革委員会を作られ、チベットの政治行政制度の構造変革と、近代的な民主政体の確立にご尽力されました。ですが極めて過酷な多くの困難により、変革は頓挫しました。インドにご到着された直後、法王は自らのビジョンにしたがって、亡命チベットにおける民主政体の創設に取り掛かられました。

ダライ・ラマ法王は亡命地で、チベットの独自の宗教、文化、言語、アイデンティティの保全を図るための画期的な努力をされました。その努力により、インドで亡命チベット中央政権が発足し、亡命地に学校、居住地、僧院、大学、学習機関がつくられました。ダライ・ラマ法王は長年にわたり、多くの試練、艱難を乗り越え、そのビジョンある指導力によりチベットを正しい道筋に導き続けました。

ダライ・ラマ法王は民主主義の発展に伴う行政と法制の段階的な改革を通じて、チベット中央政権における民主的な制度を作り、発展させてきました。チベットの民主主義は大きく強化され、チベット人民代表大会にチベットの全地方、全宗派出身の代表が選出されるにようになりました。この大会は今日、チベット亡命議会と呼ばれています。ジェンダーの平等に基づいた代表選出に向け、1964年に女性の代表が初めて選出されました。世界の多くの民主主義国で女性の参政権がまだ認められていなかった時代から、チベットの議会では女性議員専用の議席が用意されていたのです。また海外に在住するチベット人の増加に伴い、ほぼ40カ国の亡命チベット人を地域別に代表する議席も確保されました。今日、チベット亡命議会は議会の機能を十全に果たしており、代表性と議員構成のいずれの面でも活力に満ちた立法機関となっています。

また、亡命地ではカシャク(内閣)も再結成され、カロン(大臣)を選出する手続きの改革も実行されました。2001年、法王は半引退を表明し、チベット中央政権の執行機関の長であるカロンティパ(主席大臣)を直接選挙で決めるよう、要請しました。その10年後、法王は自らの政治的指導者の地位を選挙で選ばれた指導者に譲位する発表をし、歴史的変革を実行されました。2011年8月8日、主席大臣の宣誓式の式上で、チベット国民に民主主義をもたらすという「長年の目標」を実現したと法王は宣言されました。2012年の亡命チベット人憲章の改正により、カロンティパの称号はシキョンに変更されました。ちなみにシキョンとはチベット中央政権の「主席(President)」という意味です。

ますます多くの地域に亡命チベット人が分散するようになったなど、亡命社会を取り巻く多くの困難にもかかわらず、過去50年に亡命チベット社会は完全に機能する民主社会に転換し、多くの人からの賞賛を受け、世界の亡命社会の鑑となりました。これが実現できたのも、法王の先見性とビジョンを持った指導力のおかげです。この場で私たちの最も尊敬する指導者に深い感謝の念を示します。

亡命地に本格的な民主政体を確立し、非暴力の原則に基づく解放闘争の基盤を作ったことは多くの支援者、支持者からの支援につながり、とりわけ多くの中国人知識人と民主化運動家からの支持を得ました。またソンツェン・ガンポに続く三人の偉大な王の時代のチベット人の統合が、ダライ・ラマ法王のリーダーシップ下で再び蘇りました。

しかしながら、仲間うちの不幸な事件や、地域同士の不和から統合はここ数年、悪い影響を受けてきました。確かに民主政体下では多様な意見が尊重されるのは事実です。ですが、そこに特定の利益が絡んでいれば、それは社会の紐帯を弱めるのみならず、不和と不協和音の種を生みます。ですから、チベットという共通の目的のために団結するよう呼びかけた法王の賢明なる言葉を忘れずに心に留めておくよう、すべてのチベット人に改めてお願いしたいと思います。

1949年に中国共産党がチベットを侵略して以来、100万人以上の命が失われました。中国政府はチベット人の基本的自由を否定し続けています。チベット人居住地域における中国の政策の失敗は人権状況の悪化を招いています。その結果、2009年以降、149人のチベット人が抗議のための焼身行為に訴えました。焼身行為者はチベット人の自由の回復と法王のチベット帰還という民族の希求をはっきりと表明しています。

中国政府は、チベット人の当然の訴えに対する対応を取る代わりに、むしろ、ますます抑圧を強化し、最悪の場合にはチベット人の焼身行為は犯罪とみなしてきました。これは、卑しむべき基本的人権の無視であり、世界人権宣言の基本原則への抵触であります。

ここ数ヶ月の間に亡命地でも二件の焼身行為がありました。亡命政権内閣は焼身行為者の動機には共感します。しかし、チベット人はその一人一人の命が貴重であり、問題解決に向けて戦うには、私たちは生きていなければならないのです。ですからチベット内外のチベット人には身を焼くというような過激な行動に出ることを差し控えるよう内閣は訴えたいと思います。具体的に、内閣は亡命地での焼身抗議を慎むよう訴えるとともに、亡命チベット人が教育と職業上の自らの能力をみがき、より実質的にチベットに貢献するようお願いしたいと思います。

チベット民主化記念日の機会に、内閣はチベット人の皆さんに仏教の倫理の実践を心がけるようお願いします。見栄を張るのに浪費したりはせず、仲間のチベット人、とりわけ若者の健康の増進と教育の向上のために投資し、そうすることでチベット解放運動の社会的、教育的基盤の強化を図っていただきたいと思います。私たちのアイデンティティの基礎となる、独自の宗教、言語の保全に取り込んでいただきたいと思います。

中華人民共和国の憲法と民族区域自治制度は、民族が言語と宗教を保全する権利を規定していますが、現実にはそのような運用が行われていません。チベット本土のチベット人にこうした権利は認められておらず、チベット語と宗教の実践ができない状況です。宗教組織と僧院社会のメンバーへの体系的な弾圧は、文化大革命当時のものと近くなっています。先月からヤチェンガル僧院で住居破壊と住民退去が始まりました。昨年の7月に始まったラルンガル僧院の大規模な住居破壊と僧侶と尼僧の強制退去は中国政府がチベットの文化と宗教生活の統制を図ろうとしていることの証であり、信教の自由とチベット人の基本的権利を蹂躙する行為です。

いわゆるチベット自治区では、今年3月より「重点四項目と愛情四項目(Four points of importance and four points for affection)」と呼ばれるプロパガンダが始まりました。「国を愛し、団結を重視しよう(To love your country, give importance to unity)」との謳い文句の下、分離主義に対抗する戦いと法王を誹謗する声がさらに高まりました。もし中国政府が長年続くチベット問題の解決を真摯に望むのであれば、法王を誹謗することを止め、代わりにその賢明な指導力を活用することを考えるべきです。

多くの知識人や世界の指導者がそろって認めているように、ダライ・ラマ法王はチベット問題の解決に向けた最高の機会を示していることを中国政府は認めるべきです。私たちは今後も中国の指導陣との建設的な関わりを続けることにコミットしています。ダライ・ラマ使節団との対話を再開するよう中国側に要請します。

今秋、中国共産党第19回全国代表大会で最高指導部の改選が行われます。指導陣の交代に伴い、中道アプローチを通じたチベット問題の永続的な解決が図られることを望みます。ダライ・ラマ法王は中華人民共和国憲法の枠内でチベット人が真の自治を獲得するというビジョンを掲げられました。内閣はこの中道アプローチにコミットメントしていることを改めて示します。


(翻訳:吉田明子)