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江主席に人権の洗礼

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1999年10月22日
産経新聞

中国の国家元首として初めて英国を訪問していた江沢民国家主席は22日フランス入りをするが、国家レベルでの友好確認の一方で、人権団体の抗議活動に中国が報道官を通じて不快感を表明する場面もあった。フランスでもデモとの遭遇は避けられそうになく、米国の一極支配に対抗するために、欧州との関係強化を狙った旅だったが、あらためて欧州の人権の壁にぶつかったかっこうだ。

江沢民主席の到着以来、中国の反体制活動家の釈放を訴える人権団体、チベット抑圧に反対するグループ、非合法とされた気功集団「法輪功」のメンバーらは訪問の先々で、プラカードやチベットの旗を打ち振り、笛や太鼓を鳴らして抗議デモを行ってきた。

これに対する英警察の警備は過剰と思えるほど。最後の訪問先となったケンブリッジ大では、デモ隊の前に大型バンを3台止めて、江沢民主席の視界に入らないようにした。野党やメディアからは「日本の天皇来英の際の元戦争捕虜やピノチェト元チリ大統領への支持、抗議団体に対する扱いと全然違う」(自由民主党スポークスマン)などという声がわき起こったほどだ。

厳重警備の背景には、中国市場の開拓に意欲を燃やす経済界の意向もあって、「英中関係は人権問題だけに限定されない」(官邸スポークスマン)との政府の立場があった。江沢民主席が今月3月のスイス訪問中、抗議デモに腹を立て、「スイスは(中国という)大切な友人を失った」とデモを許した政府を激しく非難した前例も、英政府をことのほか緊張させたようだ。

それでも、同行している中国外務省の報道官は、21日夜、「いくつかのデモは避けられたのではないか」と英国側の警備に対して露骨に不満をもらした。

一方、22日付け英紙デーリー・テレグラフは、前夜中国大使館で行われたエリザベス女王への返礼晩餐会にチャールズ皇太子が欠席したことを「中国のチベット弾圧への抗議」だと一面トップで取り上げた。王室スポークスマンは報道を拒否したが、皇太子がチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と政府の制止を振り切ってこれまで数回会談したことは広く知られている。

江沢民主席は、ケンブリッジ大で演説した後、次の訪問国フランスに向かったが人権団体国際アムネスティのフランス支部は、英国を上回る規模のデモを予定しているといわれ、ここでも欧州の「人権」の洗礼を受けることになりそうだ。