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チベット民族平和蜂起62周年記念日における中央チベット政権主席大臣の声明

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2021年3月10日

62年前の今日、ラサの何千ものチベット人が共産中国の支配に抗議し、一斉に蜂起しました。中央チベット政権は、本日ここに犠牲になられた方々を思い起こし、その勇気を称えたいと思います。また、今も圧政下にあるチベット本土の人々にも思いを馳せたいと思います。私たちの祈りと思いは彼らと共にあり、引き続き、連帯感を持って立ち上がり続ける所存です。

1959年3月10日、ダライ・ラマ法王14世は、ラサの中国軍司令本部で催されるという演劇に招待されていました。その前日、中国側は法王に護衛兵を連れてこないよう求めました。この話が市民の耳に届くと、法王を守るために何千というチベット人が集まり、人間の鎖となってノルブリンカ宮殿を取り囲みました。その7日後、近くの中国軍野営地から発射された2発の迫撃砲弾がノルブリンカ宮殿の北門の外側に落ち、法王はその夜のうちに余儀なく宮殿を離れることとなりました。そして3月20日の真夜中を過ぎると、迫撃砲と機関銃の弾が雨のように降り注ぎ、何千ものチベット人が虐殺されたのです。これにより、1949年にチベットを侵略して以来、自らを‟解放者”として位置付けてきた中国が、実際は植民地化を進める弾圧者であることがさらに確信付けられることとなりました。

この60年間にわたる中国支配の下で、100万人以上のチベット人が命を落としました。今日、私たちは彼らの死を共に悼むためにここに集まりました。しかし同時に、私たちが集まったのはチベット本土のチベット人の不屈の回復力を記念するためでもあるのです。彼らは命懸けでチベットの言語、宗教、土地、アイデンティティを守ることで抗議を続けています。

今年の1月19日、甘孜(カンゼ)県のザ・オンポ僧院のテンジン・ニマという19歳の僧侶が、刑務所での負傷が原因で亡くなりました。彼は刑務所で残忍な拷問を受けていたそうです。いったいどのような罪を犯したのでしょうか。彼は平和的抗議に参加したのです。2019年11月の、同様の平和的抗議に参加して投獄された若い僧侶たちや一般市民の身を、私たちは案じずにはいられません。

テンジン・ニマ氏の死からわずか1か月後、また別の政治囚が獄中での負傷が原因で亡くなりました。ディル郡チャグツェ郡区のクンチョック・ジンパという51歳のツアーガイドです。彼は、地域の環境保全や抗議行動に関するニュースを海外のニュースサイトに伝えたとして懲役21年の刑を科せられ、2013年から服役していました。テンジン・ニマ氏とクンチョック・ジンパ氏の悲劇的な話は、チベット本土のおぞましい現実を表しています。

米国の「中国に関する連邦議会・行政府委員会(US CECC)」は、昨年の年次報告書のなかで、中国において人権と信教の自由が悪化していることを伝えています。また、中国政府によるチベット人の中国化と恣意的逮捕が広がっていることへの懸念も表明されました。実際に先月には、中国の国家宗教事務局によって「宗教人事に関わる行政処分」と題する命令が作られました。その目的は、宗教行事など宗教を理由に集まることに新たな規制をかけることにあります。この新たな命令は、2021年5月から施行されることになっており、‟外国からの影響”を排除する目的もあると思われます。

中国政府は、チベット人の信教の自由をあからさまに侵害しています。これを決定的に裏付ける一例が、パンチェン・ラマ11世ゲンドゥン・チューキ・ニマの失踪事件です。ゲンドゥン・チューキ・ニマとその家族、そしてタシルンポ僧院の元僧院長チャドレル・リンポチェが拉致され、強制失踪となってからこの5月で26年になります。

パンチェン・ラマ11世の解放と情報開示については、「国連・子どもの人権委員会(CRC)」と「強制的・非自発的失踪に関する国連作業部会(WGEID)」をはじめ、世界中の国際機関、議会、政府、そしてチベット支援者の皆様も、長年にわたって求めてくださっています。2020年には、チベットハウスを介して中央チベット政権による1か月にわたるキャンペーンも行なわれました。私たちは今後も断固としてパンチェン・ラマ11世の解放を求めていきます。

こうした一致団結した努力にもかかわらず、中国政府は当時6歳だったニマ少年の拉致と強制失踪を正当化するための嘘を繰り返すばかりです。パンチェン・ラマの拉致を否定する中国側に何らかの真実があるならば、パンチェン・ラマ11世とその家族、そしてチャドレル・リンポチェの最近の写真やビデオを提供できるはずです。

チベットでは検閲と監視が前例のないレベルに達しており、チベット人の基本的人権はさらに激しく侵害されています。2020年12月24日、チベット自治区の当局者たちは、オンラインの通信ツールを使用している個人を、‟国家分裂”ならびに‟国家統一損傷”として刑事訴追すると発表しました。これにより、中国政府による迫害はさらに助長されると思われます。

フリーダムハウスが発表した「2020年世界オンライン自由度ランキング」において、中国が最下位であることは驚くに値しません。同様に、国境なき記者団がまとめた「2020年世界報道自由度ランキング」おいても、中国は177位であり、ほぼ最下位です。このランキングは毎年実施されており、世界180カ国の記者たちが働いている国の状況が査定されています。

去る12月には、瑪沁(マチン)・ゴロク県のルンドゥップ・ドルジェという30歳の遊牧民が、中華圏最大の投稿サイトであるWeiboにダライ・ラマ法王の法話のビデオを投稿したとして、1年間の懲役刑を言い渡されました。

高度に要塞化されたデジタル檻の中で、チベットの外へ情報を持ち出すのはほぼ不可能です。去る1月、私たちのもとに、ディル・シャグチュカ村出身のシュルモという名の26歳のチベット人が焼身抗議をしたという知らせが届きました。シュルモが焼身抗議をしたのは5年前です。このことは、チベットで行なわれている情報規制と監視の厳しさを浮き彫りにしています。

シュルモは2009年以降に焼身抗議をした155人のチベット人の内のひとりです。焼身抗議によって、すでに133人のチベット人が命を落としています。中国によるチベット本土の完全支配により、チベット人はそのアイデンティティ、宗教、文化を脅かす政策に対する憤りを募らせ、それを過激な手段で訴える道へと追い詰められているのです。抗議者たちは炎に包まれてもなお、チベットの自由とダライ・ラマ法王の正当なチベット帰還を求めています。チベットの現実は、フリーダムハウスの2021年の報告書にも示されており、シリアに並ぶ自由のない国としてランク付けられています。

こんにち、中国の触手はチベットを越えた先まで伸びており、経済力の行使によって世界中の民主主義を脅かしています。フリーダムハウスによれば、中国は世界で最も洗練された、地球規模の、いわば国境を越えた包括的な弾圧キャンペーンを繰り広げているといいます。これは中国共産党が、中国市民、政治的反体制派、チベット・ウイグル・香港などの少数派社会を支配し、圧力をかけていることを浮き彫りにしています。地球全体の民主主義に対するこうした攻撃を阻むには、世界中の民主主義国家が力を合わせる必要があります。

2020年12月27日、当時の米国大統領であったドナルド・トランプ氏は「2020年チベット政策支援法案(TPSA)」を成立させました。この支援法案がチベットに対する米国の政策と支援を更新するものであることは明らかです。この法案は、ダライ・ラマをはじめとするチベット仏教の指導者の輪廻転生は宗教的な問題であり、輪廻転生に関わるあらゆる決定権はダライ・ラマ、チベット人、チベット仏教社会のみにあることを堅く断言しています。さらには、本件に干渉するいかなる中国当局者も制裁の対象となることを警告しています。この法案は中央チベット政権を正式に認めるものであり、チベットの環境ならびにチベット高原の重要性が認識されています。

私たちは、米国政府、議会、上院、とりわけ法案の発案と共同提案をしてくださった皆様に感謝を申し上げたいと思います。また、この法案が速やかに通過するように支援してくださったすべての組織と個人の皆様に感謝を申し上げたいと思います。

私たちは、米国のアントニー・ブリンケン国務長官がチベット問題担当特別調査官の迅速な任命を確約してくださったことに感謝しています。特別調査官の迅速な任命とともに、「2018年チベット相互入国法」や「2020年チベット政策支援法案」のような重要法案のさらなる実施をバイデン政権にもお願いしたいと思います。

「中国問題に関する米連邦議会・行政府委員会(CECC)」は米国議会ならびに米政権に向けて、中国政府に対し‟ダライ・ラマを安全保障上の脅威とする扱いをやめる” よう、そして‟法王の代表団との対話を前提条件なしに再開する”ことを強く求めるよう提言しました。私たち中央チベット政権は、引き続き中道のアプローチに専心し、チベットのすべての人々のために真なる自治を求めていく所存です。

私たちは、チベット本土の兄弟姉妹、とりわけ中国の刑務所で非人道的な扱いや拷問を受けながらも断固として意志を貫いている政治囚たちと連帯しています。私たちは、チベット語の擁護者タシ・ワンチュク氏が5年の刑期を経て釈放されたというニュースを歓迎しています。私たちは中国政府に対し、パンチェン・ラマ11世をはじめ、良心の囚人をすべて釈放するよう強く求めます。

主席大臣(シキョン)ならびに第17回亡命チベット代表者議会選挙も終盤です。チベット人の皆さんには、責任を持って選挙に参加し、とりわけソーシャルメディアにおいては言動に責任を持つようお願いします。私たちは偉大な指導者が与えてくださった民主主義の利益を享受しているのですから、責任を持ってこの権利を行使しなければなりません。チベット本土のチベット人の希望や願いを、私たちは決して忘れてはいけません。そのためにも私たちは、亡命社会における民主主義と、自由と正義という大義をさらに揺るぎなきものとしなければなりません。

亡命下において、不断の努力によってチベット問題への支援を世界中からもたらし、回復力に富むチベット人社会と政権を築きあげてくださったダライ・ラマ法王に、敬意を込めて礼拝いたします。

私たち内閣は、私たちチベット人の大義が高まり、チベット本土のチベット人の声が世界中に届くよう取り組んできました。そして同時に、離散状態にある亡命チベット人が幸せに暮らせるよう努力してきました。これは光栄なことであり、支援してくださったすべての皆様に感謝を申し上げたいと思います。

自由を求める闘いは、私たちの友人である世界中の皆様の支援がなければ続けることはできません。内閣は、チベット内外のチベット人を代表して、インド政府と国民の皆様の寛大な御心と支援に対し感謝を申し上げます。また、正義と平等、自由のために闘っている世界中の指導者、政府、議会、団体、個人の皆様に、そしてチベット問題の大義を支持し続けてくださっている皆様に感謝を申し上げたいと思います。

最後に、偉大なるダライ・ラマ法王14世の末永いご健康をお祈り申し上げます。自由と平和の光が雪の国チベットを照らす日が一日も早く訪れるよう祈念しています。

ボギャロー(チベットに勝利を)!

内閣主席大臣

2021年3月10日

注: これはチベット語による声明の翻訳である。内容不一致が生じた際はチベット語版を優先し正式なものとする。

(翻訳:小池美和)