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チベット人の焼身自殺と中国人の自殺

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(2012年9月19日 )

中国共産党の機関紙、人民日報の編集長、徐懐譲氏が22日、飛び降り自殺を図ったと伝えられた。同紙によると、徐氏はうつ病を患い、治療を受けるために休職していたという。

徐氏はかつてインタビューで、「私の苦しみは、思っていることを言えず、言いたいことを書けず、書いても発表する場がないことだ。フリーランスのライターは素晴らしいと思うが、家族が苦しむことを思うと、今のシステムを離れることはできない」と言及したとBBCが伝えており、これが自殺につながった可能性がある。

BBCはまた、「死を目撃者に」という見出しで徐氏が発表した記事を引用。この中で徐氏は、「死とは重い言葉である。しかし中国では、死をもって対処しなければ、社会は耳を傾けたり関心を示してくれず、問題が解決しないことが多々ある」と述べている。

8月27日には、2人のチベット人、ロブサン・ケルサンとロブサン・ダムチョが焼身自殺を図り、これまでの焼身自殺者は50人以上に達した。この2人のニュースもまだ耳に新しいうちに、徐懐譲氏のニュースが舞い込んできたため、徐氏と運命とたくさんのチベット人の運命をどうしても比べてしまうことになる。上記で述べた徐氏のインタビューや記事は、チベット人の心情をある程度、如実に表しているのではないだろうか。残された声明文からも、焼身自殺をしたチベット人が、チベットの現状に関心を向けさせる唯一の方法は自殺しかないと感じていることは明らかである。

中国政府の観点からすると、徐氏や焼身自殺を図ったチベット人たちはみな等しく中華人民共和国の国民なのである。

しかしながら、実際にはそのような平等性はないのだということが徐氏の自殺報道からみてとれる。中国当局は国民にチベット人の焼身自殺を隠ぺいする一方で、徐氏の死については発表するどころか、自殺の理由についても報道したのである。

また、徐氏の死に関しては、個人の意見を述べる場も設けられているのだ。チャイナ・メディア・プロジェクトは、徐氏の死が、「今日の中国のジャーナリストが直面している驚くべきプレッシャーについて、中国ソーシャルメディア上に論争を巻き起こした」と伝えている。BBCは、徐氏のニュースが、「中国の文化やメディアサークルおよびネット上に波紋を引き起こした」と報じた。中国版ツイッター、ウェイボーには非常に挑発的なフォロワーがおり、BBCによると、このフォロワーは、「徐懐譲氏は目撃者として死んだのか?個人のうつ病だったのか、それとも時代のうつ病なのか?いったいどういう国なのだ?」と問いかけているという。

チベット人の死について、このような論争が中国国内で持ち上がることはない。これは、中国政府の検閲だけによるものなのか、それとも何かそれ以外のことがあるのだろうか?中国の有識者、知識人、人権活動家などはじっくりと考える必要があるのではないか。チベットの事態は限界に達したのかもしれない。


(翻訳:パドマサマディ)