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チベットにおける低レベルな教育制度に対する 国連の重要な役割

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(2003年12月23日 ケイト・サウンダー)

国連の教育権利に関する特別報告者は、人民に対する教育提供の記録について中国を批判し、「少数民族」に対して行われている、信仰や言語の独自性を否定する教育、およびチベットにおける非識字率の高さに対する懸念を表明した。

カタリーナ・トマセヴィスキ国連特別報告者が9月10日から10日間、北京を訪問したが、今回の訪中招待は国連特別報告者としては3回目のものである。1994年には信仰と宗教の自由に関する国連特別報告者が率いる代表団、1997年には独断的な拘束に関する国連分科会が訪中し、どちらのチベット自治区を訪れている。

国連人権高等弁務官事務所の Web サイトに掲載されている報告書では、特別報告者が(中国の)「少数民族」教育のあり方を批判し、「少数民族に対する教育は、児童に義務教育を強制し、信仰や言語の独自性を否定することで人権を侵害している」と報告している。

報告書は、次のように付け加えている。
「このように示唆されることは、相手側のほとんどにとって大きな驚きであった」

もうひとりの国連特別報告者、カトリオーナ・バス(以下、バス特別報告者)は、「少数人民」、あるいは単に「少数民族」と呼ばれる漢民族以外の人民に対する教育において、中華人民共和国の戦略的目的から台頭している政治的側面に言及している。「少数人民」は、中国全体の人口のうち約8%を占めているに過ぎないが、その居住区は中国全土の50〜60%に及び、チベット自治区や新疆ウイグル自治区などその地域のほとんどには、微妙な国境地帯が含まれている。そのため、中国政府にとっては「少数人民」が中国に同化し中華人民共和国と政治的な同盟を結ぶことが重要となっている。また、このことは教科に反映されている。中国の学者であるヤン・ワンリは、チベット自治区の学校教育に関して、以下の記事を発表している。

「高等教育、および基礎教育における教科は、国家の統一、および全体性を保証できるかどうかにかかっている。教科は、国家の『安定性』という質問に直接関わっている」

バス特別報道者は、著書「チベットの教育 : 1950年以降の政治と実践」の中で、近年の「少数民族教育」の政治的役割について言及している。

「(これは)現在、チベットの児童の教科を非常に限定している。また、この結果、学術的な研究にとって時間による風化という現象が見られる。中国全土の教育は、政治的な趨勢に左右されるが、チベット自治区のチベット人に対する教育では愛国心が優先され、近年のチベット語の政治問題化は、この地域での教育開発が政治的介入に特に影響を受けやすいことを示している」

バス特別報道者は、中国全体の教育システムがイデオロギーに特に力を入れていることに対し懸念を表明し、国際的な人権義務基準に基づき中国の法律を見直し、人権、および少数民族の権利を教育の方針、法律、および実践において組み込むことを勧告している。さらに、人権に関する教育を導入するには、授業内容、教科、および教科書の見直しが必要であると述べ、ある大学入試向けの参考書の中で正解として記載されている「共産党は、21世紀において偉大なる章を書き記した」という答えを例に取り、「このような設問の特定の定型化は、政治的バロメーターとして使用されている」と述べている。
バス特別報道者は、その著書、「チベットの教育」の中で、チベット自治区の教育レベルは中国のその他の地域よりも低いという研究結果を発表している。

「現在のレベルの投資では、教育システムの財政的問題は絶え間なく発生しているようである。一人っ子家族計画政策が実施されている中央中国では、学齢期の子供たちの数は減っているが、チベット自治区では状況が異なり、学齢期の子供たちの数は増え続け、この地域にやってくる漢民族移住者の子供たちの数でさらに増大している」

2004年の3月15日から4月23日まで、国連人権委員会の第60回会議では、この報告書が討議される予定だが、バス特別報道者は、中国においては信仰が許容されていないことにも言及し、宗教が国家の独自性にとって不可欠であること、そして宗教教育が公立、私立の教育機関で禁止されたままであることを明らかにしている。報告書の勧告では、「中国における教育を文化的な多様性を保存する目的で再形成する必要がある。少数民族の権利を保証する教育のためには、生活のすべての局面において少数民族の言語と宗教の価値を少数民族が完全に認識する必要がある。でなければ、教育は同化主義者と同じになり、中国の人権に関する義務とは相容れなくなる」ことが触れられている。そして、「少数民族」の言語の存続に関する特別な懸念を示しUNESCOの報告を引用して、中国で使用されている120以上の言語のうち、50%が存続の危機にさらされていることを発表している。また、39.5%というチベット (つまりチベット自治区) の高い不識字率に対する懸念を示し、政治的、経済的、そして社会的生活においては中国が使用されているのに、識字試験がチベット語で実施されているのが識字率の低さの原因ではないかという疑問を、中国教育部(中国文部省)に対し投げかけている。

中国当局は、2002年、チベット語、および「汎用的な国家言語」(漢中国語) の「質」に重点を置いて、新しい条例を制定し、「共通使用言語」としてチベット語、または中国語のいずれかを選択することを許可した。この条例は、第7チベット自治区人民会議の第15会議によって2002年5月22日に承認され、中国日報によると「民族言語を保存する中国で初めて承認された政府の条例」ということである。しかし、チベットにおける政府、経済、文化に関連する生活は中国人によって支配されているので、チベット語は社会的に無視される傾向にあり、中国政府による中国の西側地域開発の現在の計画によって特に危機にさらされている。現在、チベット地域では今まで以上の職業技術訓練を提供することに重点が置かれているため、この地域での教育システムが改善される新たな可能性が見られるが、中国の戦略的考慮、および中国移民の流入は、教育システムにおいてチベットの文化、信仰、言語における必要性とは反対の方向に相変わらず重きが置かれていることを意味している。