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ダプチ刑務所最後の尼僧プンツォク・ニェドゥン、 アメリカに到着

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(2006年3月15日 ICT

チベット人尼僧プンツォク・ニェドゥンは、平和的な抗議行動を行ったために15年間投獄された。その後、チベット自治区内ラサのダプチ刑務所から釈放され、さらに2年が過ぎた今日、彼女はサンフランシスコへと降り立った。プンツォク・ニェドンは現在34歳。拘留中の度重なる拷問による体調不良のため、機内に同情した米国大使館員に付き添われ、到着後、ICT(インターナショナル・キャンペーン・フォア・チベット)に保護された。空港では、かつて彼女と同じ監房で過ごしたンガワン・サンドル(現米国在住)とICTの常務取締役メアリーベス・マーキーが出迎え、感動的な再会を果たした。

「プンツォク・ニェドゥンとサンドルは、抱きしめ合い手を取りあって、心から再会を喜び合っていました。プンツォクや彼女と刑務所で苦しみを分かち合った仲間にとって、今回プンツォクが渡米を許可されたことが素晴らしいことであることは間違いありません。しかし、注目すべき重要なことは、米中間で重大な約束が交わされたにもかかわらず、チベットにおける基本的人権の問題はこの数年ほとんど改善されていないという点にあると思います。プンツォク・ニェドゥンのように、単に自分の考えを平和的に表現したに過ぎないチベット人が拷問で痛めつけられ、拘留され続けているのですから。」とメアリーベス・マーキー氏は語る。

プンツォク・ニェンドンの渡米許可は、ブッシュ大統領も出席する4月19・20日のワシントンDCでの首脳会談に向けて、中国の胡錦濤主席が行ったパフォーマンではないかと見られている。また、今は先月末にダライ・ラマ法王の使節団と北京側との5回目の協議も行われて間もない時期でもある。

ラサ出身で、メチュンリ寺の尼僧であったプンツォク・ニェドンは、1995年にリーボック人権賞を受賞している。彼女は、中国の統治に対する平和的抗議行動に参加して投獄されたことで有名な尼僧グループの一人であり、過去数十年間、最後まで釈放されずにいた一人であった。

彼女は、1989年10月14日、ダライ・ラマ法王のノーベル平和賞受賞を受けて行われた平和的抗議行動に参加したために逮捕され、1989年11月25日にラサの中級人民裁判所で懲役8年の刑を言い渡された。1993年9月には、ンガワン・サンドルをはじめとする他の13人の尼僧と共に、刑務所内での体験とチベットの未来への願いを歌にしてカセットに吹き込み、密かに外部に流出した罪により9年間の刑期延長を言い渡された。その後、2001年3月には従順な服役態度が認められて懲役期間を一年減刑され、2004年2月26日には残りの刑期のすべてが減免され釈放された。

釈放後、プンツォク・ニェドンは政治的権利を制限され、パスポートの発給も許可されないまま、中国の監視下に置かれながらラサの自宅で過ごしていた。しかし、昨年8月、インターナショナル・リリジャス・フリーダム(国際宗教の自由団体)米国委員会の派遣団がラサで彼女にインタビューすることを許され、その時の様子を「プンツォク・ニェドゥンは、常時監視され、行動や交際も制限されている上、現地では手当て不能なほどに衰弱している」と報告した。

今日のプンツォク・ニェドゥンの米国出国以前にも、ここ数年、何人かの著名なチベット人政治犯の出国が許可されており、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)でも一人出国を許可されている。いずれの場合も、米中協議において中国の人権問題に対する批判がなされた時期と時を同じくしている。ウイグル人の囚人レビヤ・カディールは、米国ライス国務長官の訪中直前の2005年3月、8年の刑期のうち6年目を終えた時点で米国への出国を許可された。また、ンガワン・サンドルは、2003年3月、中国の江沢民主席の重要な米国訪問の直前に21年の刑期の11年を終えた時点で米国への出国を許可された

プンツォク・ニェドゥンは、21年間というンガワン・サンドルの女性政治犯としては最長の服役期間に次ぐ、二番目に長い期間を刑に服していた。しかし、米国国務省が人権問題年間報告書の中で、中国はチベットにおいて「正式な法的手続きを経ない死刑執行や拷問、逮捕理由不明なままの逮捕、公的裁判なしの拘留、平和的な手段で個人の政治的・宗教的な考えを表現したチベット人への非常に長期にわたる拘留」などといった「重大な人権侵害」を犯しているとして中国の不当性を指摘した直後、プンツォク・ニェドゥンの釈放が決まった。この報告書は、アメリカが、同年にジュネーブで開催されることになっていた国連人権委員会において、中国に関する重要議案を提出する足がかりをつくると考えられていたものである。

プンツォク・ニェドゥルと同じ監房で数年間を過ごしたンガワン・サンドルは、今日、「プンツォク・ニェンドルに再会できて感無量です。刑務所での彼女は、どんな時にも非常に強い人でしたから、私たちは彼女ならどんなことでもできるに違いないと思っていました。プンツォ・ニェンドルには大きな自信と勇気があります。刑務内では勉強の機会はありませんでしたが、それでも彼女は割り当てられた仕事を精一杯こなし、まさに仏教の修行を身をもって実践していました。」と語った。

3月15日、ワシントン・DCに到着した チベット人尼僧プンツォク・ニェドゥン

空港で出迎えたンガワン・サンドル(写真右)