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清風学園ご訪問とテレビ局の取材

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2016年11月10日
大阪

肌寒い今朝の曇り空の下、ダライ・ラマ法王は、大阪市天王寺区の清風学園清風中学・高等学校に到着されると、平岡英信学園長のお出迎えを受けられた。約3,000人の生徒と職員たちは、校庭で法王のご到着を興奮気味に待っていた。法王はステージへ向かわれる途中、何度も足を止めて生徒たちと挨拶を交わされた。法王が着席されると、生徒たちは『般若心経』を読誦した。

清風学園中学・高等学校に到着され、生徒たちと挨拶を交わされるダライ・ラマ法王。2016年11月10日、大阪(撮影:ジグメ・チョペル)

最初に法王は、出席者全員に挨拶をされて、皆さんと再会できたことを嬉しく思うと述べられた。過去を変えることはできないが、未来を形作ることは可能であり、今現在の行いが将来に影響を与える、と続けられた。法王は、21世紀を担う一員として長い目と広い視野を持って将来を見据えることが重要であると語られた。また、今日の若者たちに大きな希望を持っている、と法王は述べられた。

「もし20世紀が幸せな時代であったなら、私たちはその様式を続行することができましたが、それは実現しませんでした。20世紀は様々な戦争と流血の惨事により2億を超える人々の命が奪われてしまう結果を招きました。私が生まれたのは、まさに第二次世界大戦がヨーロッパ、そして日本で起ころうとしている時でした。そして今現在も中東やその他の地域で戦争が起こっています。私は自分の人生を通して様々な戦争を目撃してきました。残念ながら、20世紀は、「私は勝者で、あなたは敗者」という思考の元、導かれてきました。ですから、今を生きる若い世代の皆さんは、21世紀を平和の時代にする責任があります」

法王は、人間の気質は思いやりの心であり、思いやりや慈悲の心は怒りを鎮めるのに役に立つと指摘された。ステージ上に飾られたお花に指をさして、法王は以下のように続けられた。

「元来、花は私たちの心に幸せをもたらしてくれるものですが、人の心が強い怒りで満ちあふれている場合、その人の怒りは花に囲まれることによって軽減されるでしょうか?信頼している友人の存在が怒りを軽減するのに役立つということから、思いやりの心は非常に大切であると言うことができます。動物でさえも愛情表現をします。ですから私たち人間も優しい心を育むことができます。植物にはそのような能力はありません」

3,000人を超える清風学園の生徒と職員に向けてお話をされるダライ・ラマ法王。2016年11月10日、大阪(撮影:ジグメ・チョペル)

法王は、科学者たちが人間の基本的な性質は優しさと思いやりであるとの結論を出したことは希望の源であると報告された。もし人間の基本的な性質が怒りであるなら、私たちは希望を持つことはできない。これに関連して、心の発展を十分に強調せず、物質的発展にのみ焦点を当てている現代の教育制度には、何かが欠けているように感じると法王は述べられた。

「私は世俗の倫理観のカリキュラムが学校教育の一部として導入されることを願っています。私たちは健康を保つために体の衛生について学びます。それと同じように、宗教の面からではなく学問の一つの分野として、心の衛生についても学ぶべきです。私たちが信心しているナーランダーの伝統の仏教は、とりわけ調査と分析に大きな重点を置いています。もし仏陀の教えは理由や根拠に基づいていないと見なした場合、私たちにはそれを拒否する権利がある、と仏陀自身が説いています。そして過去30年に渡って、宇宙論、神経生物学、物理学、そして特に量子物理学と心理学の分野において、私は現代科学者たちと重大な議論を続けてきました」

「仏教心理学を宗教としての面からだけではなく、学問的な側面からも見るべきです。そして世俗教育の一部として取り入れるべきです。日本は仏教の伝統を持つ国なので、仏教心理学を学術的なカリキュラムとして取り入れることはとても有益だと思います。仏教は科学研究のように理由や根拠、調査や実験に基づいています」

清風学園でのご講演中に、ダライ・ラマ法王に質問をする学生。2016年11月10日、大阪(撮影:ジグメ・チョペル)

法王は何人かの生徒からの質問に答えられた。ある生徒は、政治家にとって最も大切な資質は何かと法王にお尋ねした。政治家も私たちと同じ人間であるが、しかし、政治家が正直であることは非常に大切であり、また誠実であること、そして率直であること、と法王は答えられた。効果的な指導力は信用の上に成り立つと加えられた。

核兵器についての質問に対して、20世紀前半は暴力を用いて国家間の論争を解決する傾向にあったと法王は述べられた。しかし20世紀後半になると多くの人びとが武力行使では無い他の解決方法を探し始めた。人々の世界平和に対する願望は着実に成長しており、日本は二度の原爆を体験している被災国であることから、重要な使命があるように感じている、と法王は言及された。そして日本人が核兵器の減少と廃絶のための努力を率先していくように提案された。

清風学園で昼食を取られた後、法王は2つのテレビ局のインタビューに臨まれた。まず最初に、テレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」の長野智子キャスターからの独占取材を受けられた。

ダライ・ラマ法王はなぜ頻繁に日本を訪問されるのか、と長野キャスターは質問した。

清風学園中学・高等学校で、テレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」の長野智子キャスターから独占取材を受けられるダライ・ラマ法王。2016年11月10日、大阪(撮影:ジグメ・チョペル)

「第一の理由として、招聘のリクエストをお断りするのは愚かなことだと思うからです。ですが、もっと大切な理由として、私は自分自身をこの世界中に住む70億人の一人に過ぎないとみなしている点にあります。私は、私たち全員が人類の幸福について考えるべきである、という共通の責任を担っていると確信しています。ですから、機会に恵まれたときは常に、人類は一つという私の見解を人々と共有するようにしています」

先日のアメリカ大統領選挙について、また、法王は次期米大統領トランプ氏との面談を希望されるかどうかの質問に対して、次のように答えられた。

「私は、アメリカは自由と民主主義が深く根付いた自由世界の先導国であると見なしています。先日の選挙の結果はアメリカの人々の決意の表れを反映しています。私個人は、情勢はさほど変わらないであろうと思っていますが、まずは様子を伺いましょう。これまで、歴代の大統領や上院と下院のリーダーの方々とワシントンで面談をしてきたように、もちろん次期米大統領のトランプ氏にも近い将来、お目にかかりたいと望んでいます」

続いて法王は、TBS「news23」の独占インタビューに応じられた。インタビュアーは多くの中国人が法王の法話会に参加している件について質問した。

清風学園中学・高等学校で、TBS 「news23」の独占インタビューに答えられるダライ・ラマ法王。2016年11月10日、大阪(撮影:ジグメ・チョペル)

「中国は歴史的に仏教国であり、仏教が深く根付いている国です。文化大革命の時代に宗教を組織的に破壊する試みが実践されました。しかし文化大革命の後に、仏教は復活し、素速く広まって行きました。今日、約4億人の中国人が仏教徒です」

「また、共産党はチベット仏教を破壊しようと試みました。ですが、共産党はより平和で思いやりの心に満ちた社会を生み出すことに失敗しました。今日、中国は適切な法の支配と報道の自由を欠いた資本主義国家となりました。中国各地に汚職が広がったため、人々は内面の価値の源となる何かを探しています」

「さらに、中国仏教の教師たちは説く教えをあまり持ち合わせていないように感じるが、チベット仏教の教師たちは、とりわけ、教えを説くのに十分な資格を持ち合わせているようだ、との声を何人かの中国人から聞きました」

明日、ダライ・ラマ法王はシャーンティデーヴァの『入菩薩行論』の法話を開始される。