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ダライ・ラマ法王2010年6月来日報告 2日目

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2010年6月19日 東京(チベットハウス・ジャパン)

ダライ・ラマ法王は今朝、東京の日本外国特派員協会で開かれた記者会見の席で、
「みなさんに再びお目にかかれたことをうれしく思います」と報道陣に挨拶され、今回の訪問においてもこれまでと同様に「人間的価値」と「宗教的調和」を促進するための講演が行なわれることをあらためて表明された。

「ここにいらっしゃるみなさんの中には「人間的価値」と「宗教的調和」の話をすでに聴いてくださった方が大勢いらっしゃいますが、同時に、今回はじめて私の話を聴いてくださる方たちも大勢いらっしゃいます。そこでここにお集まりいただいたみなさん全員に私の気持ちを共有させていただきたいと思います」としたうえで、

「我々はみな、おなじ人間です。幸福を求め、苦しみを退けたいと願うのは、だれも同じです。どのような地位や職業であろうと、国王や大統領であろうと、経営者であろうと乞食であろうと、この思いはだれも同じです。お金やモノによってもたらされる幸せは一時的な幸せに過ぎません。我々が求めていかなければならないのは長期的に続く幸せであり、このような究極的な幸せは内面的価値を高めることによってしか生まれません。

究極的な幸福の源となるのは、自信と内面的な豊かさです。そしてこれが幸せな人生の土台となるのです。ですから、幸せになるためにはまず内面的価値を高めていくことが何よりも大切なのです」

「また、私は仏教僧としてまだまだ完璧ではありません。したがって、より良い仏教僧になれるように現在もベストを尽くしています。仏教をはじめとするすべての宗教が、愛、慈悲、許しを説いています。これはどの宗教にも内面的な平和とより良い社会を造っていく種があるということです。相違点だけを探すならば、仏教の学派を比較するだけでも哲学的な矛盾点を見いだすことになるでしょう。ですから、社会レベルにおいての宗教的調和とアヒンサー(非暴力)が非常に重要であり、この点においてインドは手本となる国であると思います」と語られた。

ダライ・ラマ法王はまた、「報道関係者の方々は、社会を教化し、人々の自由と正義を守るという重要な役割を担っておられます」と述べられたうえで、「眉唾物の情報でさえもすぐに嗅ぎつけるような長い鼻をお持ちなのですから、その長い鼻を真実と公正を明確にするために使ってほしいものですね」と、ジョークを飛ばされた。

質疑応答に入り、中国政府要人が来日中に ‘中国がチベットを侵略したことは一度もない’と発言したことについて意見を求められると、「この問題については三つの見解があります。中国側の見解、チベット側の見解、そして国際的かつ独立的な立場を取る弁護士たちの見解です。どれが真実の見解を見いだし、正しい情報を提供していくのは報道に携わる方々がなすべき仕事です」と述べられた。

世界各国の大統領や首相がダライ・ラマ法王と面会しているのに対し、日本の首相との面会がないことについて胸中を訊ねられると、「ワシントンDCやブリュッセルを除いては、私の訪問はすべて政治とは無関係です。したがって、日本の首相との面会がないことは、何ら失望するようなことではありません」と述べられたうえで、「私が伝えたいことは、人間としての価値を高め、宗教的調和を図ることの重要性です。これを伝える必要があるのは政治的リーダーよりもむしろ一般市民なのです」と明言された。

また、米国の反捕鯨団体シーシェパードの暴力的な妨害活動について意見を求められると、「生き物や環境を守ろうとする行為は良いことです。しかし、その方法については非暴力かつ平和的であらねばなりません」と述べられた。

日本における自殺者の増加に関する質問には、「日本の若者はもっと日本を出て、海外の現状を見て周るとよいと思います」とアドバイスされた。記者会見の終了に際し、日本外国特派員協会のメンバーをはじめ会場に集まった報道関係者は起立し、拍手喝采でダライ・ラマ法王を見送った。

記者会見の後、ダライ・ラマ法王は長野市に向かわれた。善光寺では市民や僧侶らがダライ・ラマ法王の到着を待ち構えていた。ダライ・ラマ法王は善光寺の二人の御住職の歓待を受けられ、善光寺や仏教についてしばし語り合われた。

ダライ・ラマ法王は本堂に参られ、日本人僧侶、チベット人僧侶、そして一般の人々と共に世界平和祈願およびチベットの大地震など自然災害で亡くなった人々のための法要を行なわれた。善光寺の境内にはダライ・ラマ法王を歓迎し、ひと目拝しようと沢山の人々が集まっていた。その後、ダライ・ラマ法王と善光寺の共同記者会見が行なわれた。

善光寺の担当者は、「チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ法王を長野にお迎えできたことは善光寺にとってこのうえない光栄であり、よろこびである。同じ仏教徒としてのこの絆が、世界中の人々が理解し合い、平和な社会を築く礎となることを願っている」としたうえで、オリンピックの聖火リレーを辞退した唯一の理由として「チベットで実際に起きている事態を看過できなかったからである」と説明した。

これについて意見を求められたダライ・ラマ法王は、「北京オリンピックの開催については、私は反対したのではなく、むしろ支持していたのです。このことについては何度も明確に伝えましたが、中国政府は全く逆のプロパガンダを流したのです」としたうえで、
「善光寺のみなさまが支援の意としてとってくださった行動に心から感謝しています。あえて言うなら、これはチベット支持の表明である以上に公正支持、正義支持の表明であると思います」と述べられた。

中国のメディアがダライ・ラマ法王に中国人の若者に向けてのメッセージを求めると、
「釈尊も説かれているように、尊敬する人の言葉だからといってそれを鵜呑みにしないことです。私の言葉も鵜呑みにしてはいけません。これと同じように、中国の若い人たちには、すべての情報を真実として鵜呑みにしないでいただきたいと思います」としたうえで、「釈尊は、自分の言葉が真実であるかどうか、よく検証したうえで実践するよう弟子たちに伝えました。ですから中国の若い人たちにも、情報の真偽をきちんと調べたうえで判断してほしいのです」と述べられた。

明日、ダライ・ラマ法王は長野市内で7,000人の僧侶と一般市民を対象とした講演会を行なわれる。また、仏教について僧侶との会合も行なわれる。


 (翻訳:小池美和)