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WTN読者投稿/ 国連ハンガーストライキ 「非暴力運動と外交政策に駆け引きされる人権問題」

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(2004年5月12日 WTN)

この記事はWTNの読者から寄せられた、チベット青年会議メンバーによるハンガーストライキとその中止を薦めた国連の対応についての投稿である。

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ダライ・ラマ法王の教えである非暴力の理念を守りながら、チベット人はチベットの自由を求めて奮闘している。最近の例としては、チベット青年会議のチベット人メンバー三人が、未だに続くチベット人抑圧に対して国連の関心を高める為には飢餓で死ぬことも辞さないとの意志を世界に伝えた。1959年以来、チベット人は中共の統制下を生きており、チベットの文化・言語・宗教の伝統は根絶の危機にさらされ続けられている。

様々な世代のチベット人が難民生活を送っている。しかし、チベットに対する思いは、そうした様々な世代層の心の中にあり余るほど溢れている。青年層の間には、占領が続くチベットに対する国連の緩慢な対応に激しい怒りと不満が増大している。それは「雪の国」の外での難民という絶望的な身分が続くせいで悪化している。

今年5月3日、マクアスキー国連事務次官は、オレンジジュースを両手に持ち、ニューヨークの国際連合ビルの階段を降り、「死の危険を冒すようなハンガーストライキは止めるように」とチベット人活動家3人の内残る2人に懇願した。チベット青年会議メンバーのソナム・ワンドゥ氏、ギャッツォ氏、ドルマ・チョペル氏(女性)の三人は、チベットの自由とチベット人の融合と未来の為に、30日間以上に及ぶハンガーストライキを耐え抜いた。

多くの人々は「非暴力」という言葉を耳にすると、インド独立運動指導者の一人、痩せ衰え、カーディ(素朴な手製の布)を身にまとい、眼鏡をかけたマハトマ・ガンジーを思い起こすであろう。ガンジーも社会政治の変革を目指してハンガーストライキを好んで行った。インド独立後にヒンドゥー教徒とイスラム教徒の抗争が激化し武力衝突が多発していた時、交戦状態が治まるまでハンガーストライキを続け「苦しみの法則」を訴えかけた。ガンジーの自発的苦しみは、イギリスからの自由を求めて彼と共に戦った人々やお互い対立関係に変貌してしまった人々の心を動かした。ガンジーがハンガーストライキを始める毎に、今にも死にそうなガンジーを止めようと暴力はゆっくりと減退していった。指導者を無くすことのほうの恐怖が、国民の苛立ちや不安より大きかったのである。ガンジーにとってハンガーストライキが有効な手段だったのは、彼のターゲットが自分を気にかけてくれるインドの国民だったからである。

チベット青年会議活動家たちへの支援を発表し書類を作成した国連の職員が、ハンガーストライキ参加者の保護とチベット人全体に対して誠実な対応をしていないことはない。しかし、活動家たちがアナン国連事務総長宛に書いた手紙をヘラルド・トリビューン紙上で発表したにも関わらず、アナン事務総長は次官を1名派遣しただけであったという点に注目したい。中国政府に抗議関連したチベット人の人権問題という微妙な問題に対する外交政策が、衰弱しきったハンガーストライキ参加者との個人的約束を交わす機会を退けたのである。

国連前で命を冒すその姿には象徴的な意義がうかがえた。第二次世界大戦の流血の後、世界中の国々は団結し、グローバルな平和と安全の確立と維持を遵守するよう誓った。この五十年間、協定を重ね、会議を重ね、決議を重ねて、秩序の骨組み構築と人権の尊重が議論されて来たが、チベットの例から見て、このような努力はまだ不充分のようである。

恐らくハンガーストライキ参加者の3人は、何かが自己犠牲から生まれると信じているかもしれない。しかし、私はこれについてはもう少し冷めた意見を持っている。イデオロギー的官僚の妄想的機構である中国に限っては、ハンガーストライキキャンペーンであろうと、どんな非難や国際的要求であろうと譲歩することなど有り得ない。

ラムチャラン国連人権弁務官代理からハンガーストライキ参加者に送られた手紙では、チベットと難問であるトゥルク・テンジン・デレクの死刑判決等のような切迫した問題を国連の重要課題としたことを認識させたが、そこにあるのは、単なる「言葉」である。

今日において国連とは何であろうか。人権等の尊い重要課題を含む国際決議をし続けているアメリカや中国等の大国に、不幸にも権利を剥奪された国際機構であると言えるだろう。中国の政策をアメリカのそれと比較するのは避けたい所である。しかしどちらにした所で、国家とは国益を最優先させて行動するものである。現状としては、チベット人の人権問題は、始まったばかりの中国との経済的関係成立に先を越されてしまったのである。しかし、それではどのようにして前進すれば良いのか。

悲しい事実であるが、急騰中の中国の貿易市場と魅力的に光り輝く資本の機会を背景に、中国政府とそのチベット政策に冒涜を試みようとする全ての国を「ボディチェック」することはこれからもできるはずだ。

フリーチベット?それは一体どういうことだろう。いまやチベットは、中国によってフリー(自由)に高速道路、パイプライン、鉄道、覇権を敷かれ、伝統的にチベットとされる全てのものを剥奪されようとしているが。

By Heidi Basch