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非公開裁判で、チベット人実業家に終身刑

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(2010年8月12日 ダラムサラ テンジン・ツェリン)

7月26日、ラサ在住の裕福なチベット人ホテル経営者に終身刑が言い渡された。非公開裁判で判決が下されたため、罪状等は不明である。複数のチベット情報ソースからイギリスの新聞タイムズ紙にレポートされたことにより明らかとなった。

ドルジェ・タシ氏は、裕福なチベット人ビジネスマンで、ラサの豪華な「ヤク・ホテル」のオーナーとして有名である。また、過去には、中国政府が選出した「チベットの最も優れた若い10名」として表彰された経歴がある。

裁判所は、総額43億人民元(約570億円)ともいわれる彼の全資産没収も行った。37歳の彼は2008年3月に逮捕されて以来、拘束されていた。

これは、裕福な環境活動家であるカルマ・サムドップ氏の投獄に続く、非政治的で裕福な人物に対する2例目の判決である。

ドルジェ・タシ氏は、2008年3月のラサ暴動の数週間後に、罪状なしで逮捕された。ラサでの暴動はその後、1959年以来中国に支配により抑圧されてきたヒマラヤ地域に拡大した。彼の兄もまた、数ヶ月後に逮捕され、6年の懲役刑を受けている。

ラサ地方中等裁判所は、ドルジェ・タシ氏に対し、「ヤクホテル等での違法なビジネス活動」を理由に、厳しい終身刑を言い渡した。裁判の中で、このケースが、政治的なものであるかどうかの言及はなかった。

噂によれば、彼は亡命先(インド国内)の複数の寺院とダライ・ラマ法王への寄付を行っていたことが、中国政府に発見されたという。

ダライ・ラマ法王へのいかなる信仰の表明は、反中国的と判断され、分離主義者と断罪される。中国政府は、ダライ・ラマ法王を「僧衣をまとった狼」だと非難している。

現在までの所、中国国内メディアで、タシ兄弟に関する裁判や判決に関する詳細は報じされていない。

ドルジェ・タシ氏のケースは、裁判が非公開で行われ、れわずか3日で判決が下されたことから、政治的な動機があると疑われている。

人権団体やチベット関係者によれば、これまで、チベット人歌手、芸術家、作家が、取締りの対象となってきた。しかし、今回、混乱した文化大革命が終了した1976年以来、はじめて平和的に見解を明らかにしたビジネスマンが標的となったという。

AP通信によれば、北京在住のチベット人詩人であり活動家でもあるツェリン・オーセル氏が、「現在、多くの政府関係者が「強硬手段」に乗じて、個人的な復讐やトラブル解決を図っている。そのため、政治的な理由以外での逮捕も起きているだろう」と語った。


(翻訳:川崎正和)