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長寿祈願法要

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インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

今朝、ツクラカンでは、ダライ・ラマ法王に捧げる念入りな長寿祈願法要が、ムスーリーのチベタン・ホームズ・ファウンデーション(Tibetan Homes Foundation)と中央チベット学校(CST:Central Shool for Tibetans)の元学生・学生・職員と、パンチマリの中央チベット学校の元学生・元職業訓練生の主催で行われた。

ツクラカンの中庭を通られるダライ・ラマ法王を、法王の長寿を祈願する楽曲の歌と演奏で歓迎する学生と職員たち。2023年4月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

数日続いた冷たい雨は、澄んだ青空と明るい太陽の輝きに変わり、ツクラカンと中庭の通路は花で飾られた。法王がツクラカンの中庭へと続く門をくぐられると、鮮やかな衣装を纏った踊り子たちや学校の職員と生徒たちが、歌唱と舞踏を披露し、法王を歓迎した。法王は、喜びに輝く笑顔で聴衆に手を振りながら歩かれた。

法王は法座に着かれると、吉祥をもたらす機縁として、ツォンカパ大師の『菩提道次第広論』の最後にある一つの偈頌を唱えられた。

仏陀の教えが広まっていない場所
広まったが衰退している場所において
大悲に突き動かされ、皆のために優れた利益と楽をもたらすこの論書を
明瞭に説くことができますように

法王の向かい側には、本日の法要を先導するタツァク・クンデリン・リンポチェ、ウーセル・ドルジェ・リンポチェ、ナムギャル・タツァン・ロプン・リンポチェと、密教学堂元座主のラワ・リンポチェが着座した。

法要が始まり、参列者は『グル・リンポチェへの七句の祈願文』、法王が著された『グル・リンポチェへの祈願文』、そしてトゥルシク・リンポチェ著作の『神饌しんせんなる祝福の雲』というインドとチベットにおける法王の前世を呼び起こす祈願文を読経した。

お茶と、デシと呼ばれる甘く味付けしたお祝いのご飯が配られている間に、法王は参列者に向けて話始められた。

ツクラカンで行われた長寿祈願法要で、参列者に向けて話をされるダライ・ラマ法王。2023年4月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「今日、皆さんはここに集まり、私のために長寿祈願法要を執り行ってくださいます。亡命したチベット人の数は少数ですが、チベット、中国、モンゴルにおいても多くの人々が私の長寿を祈ってくれています。仏法が広まったにもかかわらず衰退している場所において、私を称賛してくださる人々もおられ、また、ヒマラヤ地方の多くの人が私に敬信の念を抱いてくれています」

「私は菩提心を育むことに努めている者であり、そのことによって人々が私を称賛してくれるのだと思います。中国の共産党員の中にさえ、私のしている表明を高く評価している人がいると聞きました。一方で、中央チベット、カム、アムドというチベット三域に住む人々は私に希望を託していますので、私が長生きできれば、きっと利益があるでしょう」

「亡命先とチベット本土にいる皆さん、そして私の健康を気にかけてくださっている、様々な地域に住む皆さん、どうか、私が長寿であるように心から祈ってください。私もまた、そのように祈願しています。膝に問題がありますが、それ以外の私の健康状態は良好です。私は100歳を超えて生き、一切有情に役立つために、私のできることをやり続けようと決心しています」

ここで、ダーキニー(空行母)に扮した5人の僧侶が法座の前に集まり、法要の一環としての儀式が始まった。ダーキニーたちは、それぞれの住む浄土にラマを招待しようと請願するが、弟子たちは祈願と供養によって、招待を諦めるように説得し、最終的にダーキニーたちは、一人、また一人と個々の住処に戻っていく。

長寿祈願法要で、ダーキニーに扮して法王の前に集まる僧侶たち。2023年4月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

長寿祈願法要で、ダーキニーに扮して法王の前に集まる僧侶たち。2023年4月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

そして、グル・リンポチェ(パドマ・サンバヴァ)の様々な相に対する祈願文、続いてジャムヤン・ケンツェ・チューキ・ロドゥ師によるダライ・ラマ法王の長寿祈願文『最勝なる勝利者であり、全智なる方』が読経された。

次に、タツァク・リンポチェがマンダラを捧げながら、法王のご恩に感謝し、ご長寿を請願する下記の偈頌を、節をつけて読み上げた。

「あなたは三界の有情の友であり、世界平和の操舵手であり、雪山の地チベットの有情たちの、この上ない保護者にして帰依の拠り所です。そしてあなたは地上における、勝利者仏陀の完全な教えの主あるじにして導師です」

「私たち、ムスーリーのチベタン・ホームズ・ファウンデーションと中央チベット学校の元学生・学生・職員、及び、パンチマリの中央チベット学校と職業訓練センターの元学生は、法王に敬意を表します」

「あなたが私たちの上に、やさしさと慈悲の光を注いでくださったことに感謝いたします。『カダムの書』が言及しているように、あなたはインドにおいて “光を放つ子ども” といった驚くべき一連の顕現で現れ、弟子たちを幸福と悟りという目的に導かれました。荒々しく、調御するのが難しいチベットの有情を調伏するために、あなたは妙法が受け容れられる状況を徐々に整えてから、仏教王、翻訳官、学匠として顕現されました。そのようにして、あなたは雪の国チベットに仏教を伝えられたのです。戒律を守る僧侶として顕現されたあなたは、宝なる仏陀の教えを護持・発展させ、栄光あるナーランダー僧院の17人の学匠たちの伝統が広範囲に広まり、栄える機縁を作られました」

「チベットのタクツェル村に誕生されたあなたは、聞・思・修によって高められていく教育過程を開始され、沙弥戒、続いて比丘戒を受戒されて、持戒を完成されました。そしてラサで行われた大祈願祭において、仏教博士の最終試験に臨まれ、その学識の高さで知られるようになりました」

「チベット人の福祉のために、あなたは中国政府に巧みに対処され、改革を進めようとされました。しかし私たちの集合的カルマが極まり、チベットが危機的状況に陥ったとき、あなたのインドへの亡命が果たされたのです。インドの地において、あなたはチベット人の共同体を築かれ、中央チベット政権を樹立して、万全に機能する民主的な統治制度を導入されました」

「あなたはチベット人のための居住区、学校、研究教育機関、高齢者のための家、病院と診療所を創られました。亡命の地に僧院を再建されたことで、サキャ・ニンマ・カギュ・ゲルク・ボン教という、チベットの全ての宗教的伝統の学問と実践が広く行われるようになりました。これらすべてが成し遂げられたのは、ひとえに法王のご功績のお陰です。あなたは私たちに短期的、そして長期的な幸せを与えてくださっているのです」

「あなたは多くの国を訪問され、ご自身の四つの使命について説明されてきました」

「法王のご恩は計り知れず、たとえ何劫も何劫もの間、物質的な供養を捧げ続けたとしても、ご恩に報いることは到底できませんが、それでも、今日私たちは『無量寿仏の清らかな心髄を引き出すもの』に基づく長寿祈願法要を開催することができました」

法王に捧げる長寿祈願の楽曲を、伝統的な楽器と歌で演奏する学生の演者たち。2023年4月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「法王様、私たちはあなたに、いかなる見返りも求めることなく、三世に積んだ身体・資力・功徳という、私たちの全てを捧げます。相互に恩恵をもたらす中道のアプローチに関するあなたのお言葉に従うことを誓い、守護尊と背信の魔物に関するあなたの助言を受け入れます。あなたの完璧なご指導に、ひるむことなく、ためらうことなく、身・口・意を捧げて従います」

雪山に周りを囲まれたこの浄土には
すべての利益と幸福のすべてが生じる源である
観自在菩薩の化身テンジン・ギャツォ法王がおられる
法王の御足の蓮華が何百刧もの間 健やかにとどまられますように

「この『真実を達成した賢者たちの美しい旋律の供養(Melodious Offering of Truth-accomplished Sages)』を唱え、法王が私たちと共に留まってくださることを請願いたします。チベットの内と外にいるチベット人たちが直ぐに再会し、法王が再びポタラ宮殿を訪れる日が来ることを祈願いたします。私たちが何度生まれ変わっても、法王が、あなたの臣下である私たちを見守ってくださいますように」

「私たちは、仏国土の大海を表す七政宝(王者の持つ七つの政治的な宝)の象徴を捧げます。仏陀の身・口・意の象徴、八吉祥紋、八吉祥物を捧げ、私たちの修行もまた捧げたいと願っています」

施主の様々な共同体の代表者たちが前に進み出て、法王に、仏陀の身・口・意の象徴を次々に捧げた。法王はその一人ひとりにカタ(儀礼用の絹のスカーフ)と守護の赤い紐を手渡され、法座の横を通り過ぎる際には、頭をやさしく叩かれた。同時に、供物を捧げる老若男女が長い列をつくって堂内を巡り、法座の前を通る時には、法王を見上げてとびきりの笑顔を見せる者も多くいた。

法王に捧げる長寿祈願の楽曲を、伝統的な楽器と歌で演奏する学生の演者たち。2023年4月5日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

大人数の学生の演奏者たちがツクラカンの後方に集まり、法王の長寿をお祈りする楽曲を奏で、歌った。演奏が終わると法王は、学生たちを呼び寄せて一人ひとりに挨拶された。

法要は『仏教興隆の祈願文』と『真実の言葉』の詠唱によって幕を閉じた。

ツクラカンを出られた法王は、聴衆に手を振って笑顔を見せられ、あちこちで足を止めて、腰をかがめて法王を見上げる人々の顔に視線を注がれた。聴衆の端に高齢者を見つけると、近寄って頭をやさしく叩かれ、小さな子どもたちがいると、従者の一人にポケットに入っている飴を渡すように促された。

ようやくツクラカンの中庭に出られた法王は、ゴルフカートに乗り込まれ、カートは静かに、滑らかに法王公邸に向けて発進した。