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米国務省はチベット相互入国法を支持、米議会はダライ・ラマ転生に対する中国による認定の権威を否定

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2018年12月5日
インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

12月4日に開催された「中国への異議申立て 第三部 人権、法治」と題された米議会小委員会公聴会の席上で、米国務省はチベット相互入国法の諸目的を支持し、法制化された場合はその実施に必要な施策を実行していくと同省担当者は述べた。同じく公聴会では、中国政府が認定したダライ・ラマ転生者を米国議会は認めないだろうとの発言がなされ、米国のこうした立場があらためて確認された。

2時間半にわたった公聴会の議長を務めたのはガードナー上院議員(コロラド州選出)。公聴会の参加者は、米上院外交委員会内の東アジア、太平洋、国際サイバーセキュリティー政策小委員会のメンバー、および、国務省と米国国際開発庁(USAID)の代表だった。

チベット問題に関するセッションでは、ガードナー上院議員が国務省東アジア太平洋局のストーン次官補代行に対し、主に2002年チベット政策法の施行状況とダライ・ラマ法王の転生認定に関して複数の質問をした。

「カトリック教会政策、カトリック教会と中国の合意内容、そしてダライ・ラマについて質問をします。ダライ・ラマについて、中国はその転生認定を中国が行うと言明しています…。もし中国が次代のダライ・ラマを選び、それを認めさせようとした場合、米国はどう対応しますか?」

これに対し、「そうした質問が出ること自体、われわれがこうした問題を高いレベルで注視していることを中国政府に示す重要なシグナルです。宗教上の決定を行うのは国家の役割でなく、決定は宗教機関内で行われるべきだとのわが国の立場は明確です」、とストーン次官補代行は述べ、こうした立場は米世論からも広く支持されていると述べた。

ガードナー上院議員は質問に対する同氏の声明に感謝し、「中国による押し付け(ダライ・ラマの転生者)を米議会が決して認めることはないでしょう」、と述べた。

米国の政府関係者による定期的なチベット訪問を規定した2002年チベット政策法について、「わたしの知るところでは、中国政府による入境拒否を主な理由として、これまでチベットを訪問できた(米国の)外交官、政府関係者はごくわずかでした。過去3年間、国務省関係者はどの程度、チベットに訪問できているのか、教えてください」、とガードナー上院議員は質問した。

これに対し、詳細は把握していないとストーン次官補代行は述べ、後日報告するよう求められた。一方、国務省はチベット相互入国法の諸目的を支持しており、法制化のあかつきには実施に向けて必要な方策を取っていくと同氏は議長に述べた。

チベット相互入国法は、米国の政府関係者、ジャーナリスト、NGO、市民によるチベット入境促進のための法案。チベットへの米国民の入境を拒否する中国政府高官による米国への入国を拒否する。同法案は先週、上院外交委員会を全会一致で通過した。法制化に向けた次なるステップは、上院通過とトランプ大統領による署名である。

国務省のローラ次官補代行はこれまでの証言で、チベットで実質的な自治が行われていないことへの米国務省の懸念を示しており、「チベット人に対する人権抑圧を止め、その独自の宗教、言語、文化伝統、慣習に対する制限も取り払うよう定期的に提言している」と述べている。

「チベット人仏教徒が強制失踪、身体的虐待、恣意的拘束、逮捕の対象となっているという報告が続いています。また中国政府はチベット仏教の高僧の転生者の選定、認定、崇敬については自身に決定権があると主張し、高僧の宗教教育を監督しています。われわれはチベット人のための真の自治が存在しないことに依然、懸念を抱いており、チベット人の権利を抑圧せず、独自の宗教、言語、文化伝統、慣習に対する制限を止めるよう中国側に定期的に主張しています」、と同氏は述べた。

米国国際開発庁(USAID)のスティール次官補代行は、チベット本土と亡命地における同庁のチベット人支援について、「中国で抑圧されている宗教的マイノリティの一つであるチベット人は、諸権利、および、独自の宗教、言語、文化伝統、慣習の制限に直面しています。党派を超えた米議会の強い支持を踏まえ、USAIDは脅威に晒されているチベット人の生活様式の保護と保全に取り組んでいます。USAIDは過去20年近く、チベット自治区およびその周辺地域、および、中国国内のその他の地域のチベット人コミュニティを支援してきました。中国国内でチベット文化、および、チベット人コミュニティの振興と保全を支援しています。具体的に、文書化された文化伝統、歴史的重要性の高いチベット語文献など700万点近いチベット文化遺産項目の保全にこれまで取り組んできました。ダライ・ラマ5世自身の手による文書など、その多くがUSAIDの活動以前には知られていなかったものです」、と述べた。

また、2012年以降、USAIDはインドとネパールのチベット人コミュニティを健康と教育システムの面で支援してきた。具体的にはインドとネパールのチベット人学校75校で21,000人以上の生徒を対象に職業訓練を行ったほか、中央チベット政権の職員330人以上を対象に公共部門リーダーシップの分野の研修を実施した。また、低利の小口ローン貸与による事業の持続・振興を図るプログラムに着手し、2017年度に同プログラムは800社以上の小規模企業を支援し、100パーセントの返済を受けた。


(翻訳:吉田明子)