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王力雄氏の「真実の光賞2009」受賞スピーチ

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(2009年10月8日 ICT )

ダライ・ラマ法王猊下、ご列席の皆様
私たちの団体に真実の光賞を授与下さったICTに心より御礼申し上げます。

この栄誉の瞬間にも、私は「チベット情勢に関する12の提言」の草案に携わったLiu Xiaobo氏及び「国家権力の打倒を扇動した」という罪によって中国内に捕らわれている人々の身を深く案じています。
そこに308名の一般署名者も付け加えねばなりません。ボランティアで署名を集めた方々は、警官に脅され職場を追われました。しかもEメールまでハッカーに荒らされたので、カウントできなかった署名がどれだけあったことか。そのせいで後から署名した方々の名前を集める手だてもありませんでした。彼らの名を知ることは決してないでしょうが、本日の受賞者の中に彼らも加えられるべきです。

308人の署名者のほとんどは中国本土及び国外の中国人ですが、他の国の方々もいます。大多数は漢民族ですが他の民族もいます。多くは有識者で、労働者、農業従事者、研究者、都市部の方もいます。これほど多種多様な人々の団体がただ一つの共通項に要約されるとしたら、それは「of the people 人民の」になるでしょう。

中国警察当局や大中華国家主義者が我々をアンチ中国だと公言していますが、この団体の人々は、断じてそうではありません。反対に、心から中国を愛している人々です。しかし中国を愛することは政府を愛することを意味しません。中国の事を思い、あえて政府を批判しているのに、その批判を受けいれることができない政府は中国に害を及ぼすだけです。

この団体の人々は私達が非難されているような、チベットサイドの方々でもありません。
私達の立場は陣営の選択から発しているのではありません。真実の追求から生まれたのです。闇夜に航海する船が灯台の明かりを求めないとは考えられません。真実とはまさにこのように我々の闇を照らす光であり、『真実の光』というこの賞の名の意味はこのことにほかなりません。

全体主義権力による偽のプロパガンダと報道規制のせいで、大多数の中国人がチベットの真実を知ることは困難であり、ダライ・ラマ法王の『中道のアプローチ』について知る手だてもありません。このことが長期に渡ってチベット問題の解決を阻む主な障壁となっています。
真実よりも偉大な知識は無いという意味において、この障壁を取り除くことが中国の有識者の使命でしょう。

ウルムチの騒乱が中国に再び動揺を与えたとき、 チベットの蜂起はいまだ鎮静化していませんでした。漢族とウルムチのウイグル族の間の凄惨な抗争は、中国における民族の矛盾が異人種問題に発展しているという、最も憂慮すべき可能性を表しています。この悲惨な結末は全体主義の産物であり、民主主義への移行期には爆発的な広がりを見せるかもしれません。全体主義の手段は弾圧ですが、その一方で民主主義によって弾圧は弱体化します。

これは我々への明らかな警告です。ただ単に制度を変えるだけで民族問題が解決すると期待することはできないし、民主主義の到来によって全てが自然に解決すると確信することもできません。もしも私たちがこれまでの民族的憎悪を根絶し、平和を達成することが出来なかったら、政府が変わっても、民主主義が台頭しても、人々は依然として対立し続け、内戦や虐殺などが起こり得るでしょう。

全体主義がもたらした民族的憎悪は、非道にも全体主義によって民主主義を排除する論拠にされてきました。Great-Han国家主義者に悪意を持って支持されています。拉致犯と人質は一蓮托生という論理は、民主主義への道に立ちはだかる厄介な障壁です。

難局を乗り越えるには、国家間の対話を始めるよう働きかける事が必要です。全ての国の人々が憎み合いをやめ、一つであることに気がついた時はじめて、全体主義者が民主主義を排除するために使う民族対立という前提が崩れるのです。

ここで言及したような市民空間は、大衆規模でなければならず、十分な無作為性と範囲が必要です。また、民主主義のメカニズムを運用し表現することによって自らの正当性を獲得しなければなりません。ここにあるのは稀有なパラドックスです。民主主義の到来に伴う全体主義の悲惨な結末から身を守るため、民主主義団体と伝達経路はまず始めに全体主義制度の中で形成される必要があるのです。知恵と勇気を持って果敢に挑戦しなければならないことですが、私たちに出来るのはただ立ち向かうことです。他に道はありません。

全体主義権力が目の前に立ちはだかっている以上、インターネットのような新たな技術に頼らなければ市民空間内で国をまたいだ伝達経路を作ることはできないでしょう。前例のない民主主義の形が発見されなければならないし、さらに大きな組織構造を形成する必要があります。このために私たちは手を取り合っているのです。やらねばならないことは山積みで、険しい道のりです。幸いにも今やグローバリゼーション時代、このような事業は世界各地からの支援を求めることができます。今日ここでの集まりは、この素晴らしい時代の縮図です。

法王様、中国の人々と理解し合う道をたゆみなく探し求め、漢族とチベット人がともに勝利する未来を見出すために闘い続けてくださり、ありがとうございます。ご来場の皆様、これまでの篤きご支援を感謝致しますとともに、今後ともご支援くださいますようお願い申し上げます。


(翻訳:石野)