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書評|アリヤ・ツェワン・ギャルポ博士著「Harnessing the Dragon’s Fume」【邦題:『チベットの反論-中国共産党の嘘を暴く』(仮)】

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スタッフ・レポーター
2023年1月13日

「Harnessing the Dragon’s Fume」【邦題:『チベットの反論-中国共産党の嘘を暴く』(仮)】というアリヤ博士による著書は、中国独裁政権の虚偽を看破してチベットの真実を明らかにする。

-モーガン・ジェイソン准教授(麗澤大学)JAPAN Forward

世界中の多くの人々は、中華人民共和国(PRC)の「台頭」は、中国共産党(CCP)が大げさに宣伝するほど「平和的」ではないことを理解するようになった。チベットに関して言及する前に、例えば過去数年間で中国は、かつて自由都市国家だった香港を蹂躙し、インドとの国境で武力衝突を誘発したほか、主権国家たる台湾に対して公然と繰り返して暴力で脅迫した。さらに、日本固有の領土である尖閣諸島海域に連日のように侵入を繰り返し、南沙諸島海域では環境保護の観点から壊滅的な影響を及ぼしかねない砂州を建設し、ベトナムインドネシアフィリピン及びマレーシアとの領土紛争においても何ら処罰を受けることなく、扇動的な振舞いを見せている。

中国はまた、スリランカパキスタンカンボジアラオスキルギスウズベキスタンギリシャなどの国々を、一帯一路による債務の罠に陥れている。それは、同時にアフリカにおける新植民地主義的かつ人種差別的な搾取であると多くの人々が主張していることにも関連する。中国の台頭は決して平和的なものではなかった。検閲を受けないインターネット環境下にある人々には明白な事実である。

歪められたチベット

 しかしながら、チベットはどうか。香港を除いて上記に言及した犠牲となった国々は、中国本土のインターネットを覆う大規模情報検閲システムの影響下にはない。従って、そうした国々では中国の動向に関する正確な情報が届く可能性がまだある。

しかしながら、チベットは別の話である。それは、中国の他の地域と同様にチベットは、軍事化された共産主義の独裁政権の支配下にあるからである。チベットにおける中国共産党の支配は、漢民族が多数を占める他の地域よりもさらに厳しく抑圧的なのだ。(もちろん、東トルキスタン南モンゴルについても同じ状況と言える。)

チベットは、歴史的、言語的、宗教的、文化的及び法律的に見ても中国とは完全に分離され程遠い。しかし、こうした違いを強調して、決して歓迎されることのない中国による支配や文化的、宗教的及び民族的な虐殺という非道徳的な実態を糾弾することを目的として、無実の人々を協調させることは困難である。結局のところ、チベットから発信されるその「情報」の多くは、中国共産党によるプロパカンダである。中国が、チベットで行っていることに対して確信をもって反論するため、チベットに関する事実を知るにはどうしたら良いだろうか?

チベットにおける虚偽情報との戦い

 その答えは、チベットハウスジャパン(東京)の代表であり、インドのダラムサラに所在する中央チベット政権(CTA)長年の官僚でもあるアリヤ・ツェワン・ギャルポ博士による153頁で構成される素晴らしい著書の中にある。「Harnessing the Dragon’s Fume」【邦題:『チベットの反論-中国共産党の嘘を暴く』(仮)】は、アリヤ博士の著書にぴったりのタイトルである。この著書は、一般の人々が、チベットとその周辺において、いったい何が起こっているのかを理解し、それによって中国が発信した虚偽の情報に反論する(龍の毒霧を晴らす)ために必要な情報を提供している。

アリヤ博士は、チベット内外の有能なガイドでもある。アリヤ博士は、デリー大学で仏教学の博士号を取得したほか、パンジャブ大学(学士号)、アナマライ大学(経済学修士号)、及び東京の千代田学園で国際貿易と経済学の学位(専門士)を取得している。また、チベット語、英語及び日本語を流暢に話すこともできるアリヤ博士は、チベットの歴史と現在の問題について鋭い洞察力を持って執筆している。多言語からの非常に多く広範囲に及ぶ情報源からの情報を、英語読者の利益に資するために本質的なものへと要約できる学者を私は他に知らない。

初心者のみならず専門家のためのチベット入門書

 本書は洞察に満ちているのみならず、読みやすい。主に、ダライ・ラマ法王の転生(第2章)、中国起源の新型コロナウィルスパンデミック(第15章)、中国の防衛能力に関する明白な虚偽(第10章)、ダライ・ラマ法王による中道政策(第8章)、チベットにおける中国による悲惨な人権記録(第11章)で構成されている。その他に、チベットの歴史(第1章及び第4章)、文化(第20章)、宗教(第21章と第22章)に関するやや長めのエッセイもある。

読者は、興味に応じて容易にエッセイを選択して好みの順序で読み進めることもできる。アリヤ博士の言葉は、常に率直かつ正確であり、そのプレゼンテーションは明確かつ広範な文献に基づいている。本書は、チベットになじみのない人々の入門書のみならず、アリヤ博士の分析と多くの引用文献を通じて、チベットの政治、宗教、文化及び歴史そして、それらの詳細をより深く掘り下げたい専門家にとっての入門書としても優れている。

私は、本書を活用することで多大な恩恵を受けた。チベット、東アジア、人権若しくは国民的アイデンティティに少しでも興味のある方は本書をお薦めする。さらに、このアリヤ博士の著書を、現在も進行するチベット占領と中国によるチベットに対する文化的、宗教的、民族的虐殺の責任を負うべき中国共産党員に対して特に推薦する。アリヤ博士の真実を語る言葉が心を変える契機となることを祈るばかりだ。

書評原文はこちらをクリック

オリジナル記事


(翻訳:仁恕)