ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

昨日のチベット、今日のウクライナ、そして明日は、誰が狙われるのか?

Print Friendly, PDF & Email

2022年6月1日
ジャパン・フォワード
ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表部事務所
代表:アリヤ・ツェワン・ギャルポ

欧米が専制君主制国家への貿易や経済優先の自己中心的な政策を終わらせない限り、チベットやウクライナへの侵略を止めさせるのは不可能である。

チベット仏教における重要人物であるパンチェン・ラマ11世が中国で消息を絶って27年。彼はどこにいるのだろうか?彼が失踪し続けているということは、人権や信教の自由の問題であるということを、世界は忘れてしまったのだろうか?
2022年5月26日、筆者は東京の国会議事堂に隣接する議員会館で開催された勉強会/記者会見で、この記事の一部を発表した。
以下要約。

勉強会で司会進行を務める、日本チベット議員連盟事務局長の石川昭政氏(写真: ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表部事務所)

2022年5月17日は、チベットのパンチェン・ラマ11世ゲンドゥン・チューキ・ニマが強制失踪させられてから27年目にあたります。1995年のその日、中国共産党は6歳の少年とその家族を拉致しました。27年経過し、彼は現在33歳になっているはずですが、彼とその家族についての情報はありません。

ロシアによるウクライナ侵攻から3カ月以上経過しました。第二次世界大戦以来、最大規模の難民が発生し、何千人もの人々が殺され、家を失い、建物を破壊されていますが、現在も終戦の見通しは立っていません。

これは、民主主義国家における経済とビジネス優先の自己中心的な政策が、独裁的で全体主義的な国家の政府にも自由裁量を与えてしまった結果です。私たちは過去の二つの世界大戦からあらゆる教訓を得ながらも、より賢明にも安全にもなれていなかったのです。

(左から右)石川昭政氏、石濱裕美子教授、アリヤ・ツェワン・ギャルポ代表、小林秀英師(写真: ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表部事務所)

パンチェン・ラマ11世を探して


チベットのパンチェン・ラマ11世ゲンドゥン・チューキ・ニマの苦境もまた、民主主義国家における無関心と、弱者いじめや領土侵略の代わりに経済とビジネスを優先してきた結果であると言えます。チベットや他の地域の不法侵攻に対する国際的な沈黙が、中国をつけあがらせ、プーチンのロシアをはじめとする世界中の権威主義的で残忍な政権の台頭を促しているのです。

超大国を自称する国家の政府によって、ある子供とその家族が27年以上も隔離されていることは、不当であり、国際的な規範と理解を超えています。

これは子供の権利、人権、信教の自由に対する重大な侵害です。しかし、世界はパンチェン・ラマの事件を忘れています。1977年に同じく 残忍な共産主義政権によって誘拐された 横田めぐみさんの事件も忘れてしまっているのと同じように。

今日のウクライナは、70年前の チベットのような状態です。国際社会は、中国によるチベット、ウイグル、南モンゴル、の不法侵攻と、ロシアによるウクライナへの侵略を非難すべきです。中国の人々が中国共産党のチベット侵略に同意してないように、ロシアの人々もロシア軍のウクライナ侵略に同調していないことを明らかにしなければなりません。政府の違法な行動によって被害を被るのは、いつも国民です。

私たちは皆、自由と民主主義、そして法の支配を守るために協力し、この人道に対する罪を犯している独裁者を糾弾しなければならないのです。昨日のチベットは今日のウクライナになりました。もし私たちが独裁者たちをこのまま存続させてしまったなら、明日は誰の番でしょうか?想像は難くありません!

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席

全体主義政権


しかし残念ながら、このメッセージは緊急性が高いにもかかわらず、なかなか受け入れてもらえません。例えば、私は当初、日本外国特派員協会(FCCJ)でこの問題についての記者会見を行う予定でした。しかし、承認されませんでした。FCCJは「委員会が承認しなかった」というだけで、理由を説明しませんでした。

パンチェン・ラマ問題、中国のチベット侵攻、ロシアのウクライナ侵攻は、すべて繋がっていると私は思っています。国際社会が全体主義的な政権に反対する声を上げてこなかったがために、現在のウクライナ侵攻のようなことが起こりうるのです。

書籍『チベット侵略〜中国共産党100の残虐行為』を紹介するアリヤ・ツェワン・ギャルポ代表(写真: ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表部事務所)

固く目を閉じて


昨年は、日本記者クラブも 「(パンチェン・ラマ問題に関して)新しいことは何もない、だからニュースにはならない 」と言って、私たちのイベントの開催を拒否しました。私はクライヴ・ハミルトンとマレイケ・オールバーグの著書『 Hidden Hand(見えない手~中国共産党は世界をどう作り変えるか)』を思い出しました。自由世界のメディアが共産主義の独裁者たちに対しての発言を拒むのであれば、世界は重大な危険にさらされます。報道の自由というが、もしメディアの取り纏め役が偏見を抱いているのだとしたら、一体何が報道の自由だというのでしょうか?

昨年2021年は、中国共産党の創立100周年でした。習近平主席は、この100年間に中国共産党がいかに進歩したか、いかにチベットを奴隷社会から 社会主義の楽園に変えたかを自慢げに語りました。私たちは彼の主張に強く異議を申し立てます。もし彼の言うことが本当なら、なぜチベットは外界から閉ざされているのか?なぜチベット人はチベット内外を自由に旅行することが許されないのか? なぜチベットでは電話や携帯、インターネットが遮断されているのかをまず国際社会に説明する必要があります。

ロシアのウクライナ侵攻によって、2つの世界大戦から学んだはずの残酷な教訓を私たちは十分に理解できていなかったことを強く思い知らされました。中国共産党、ロシア、北朝鮮、シリアミャンマーなどの独裁政権の台頭と拡大は、私たちが世界秩序の在り方を正しく見通せていなかったことを示しています。

関連記事:China, Russia, North Korea: Corruption Brings ‘New Axis of Evil’ Together

(左から右)石川昭政氏、長尾敬氏、アリヤ・ツェワン・ギャルポ代表、小林秀英師(写真: ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表部事務所)

世界の指導者への要請


私たちは、ロシアと中国の指導者に対して以下のように働きかけるよう、世界の指導者と国際社会に要請します。

ロシアの指導者に対し、
  1. ウクライナへの侵攻を中止し、占領地からロシア軍を直ちに撤退させること。
  2. この問題を平和的に解決するために、ウクライナおよび国際的な指導者たちとの交渉を開始すること。
中国の指導者に対し、
  1. パンチェン・ラマ11世ゲンドゥン・チューキ・ニマとその家族、および彼の師であるチャドレル・リンポチェを即時釈放すること。
  2. チベット人の宗教の自由を認め、ダライ・ラマ法王の転生に関する干渉をやめ、
  3. 国家宗教事務局令第5号を撤回すること。
  4. すべてのチベット人のための真の自治について、中央チベット政権の代表者との対話を開始すること。
アリヤ・ツェワン・ギャルポ代表、石濱裕美子教授、小林秀英師と、参加者の在日チベット人ら。 (写真: ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表部事務所)

――ダライ・ラマ法王日本・東アジア代表事務所による報告