広島・ノーベル平和賞受賞者と、広島平和記念公園に集う

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秋の日本ツアーも残すところあと二日となった。曇り空の寒い朝、ダライ・ラマ法王は他の5名のノーベル平和賞受賞者(F W デクラーク氏、マイレッド・コリガン−マグワイア氏、モハメド・エルバラダイ氏、ジョディ・ウイリアムズ氏、シーリーン・エバーディー氏)と共に広島平和記念公園へ向かった。世界サミット閉幕式に詰めかけた大勢の人々が見守る中、デクラーク氏が『聖なる場所』と表現した原爆慰霊碑に歴代の受賞者が献花し、原爆犠牲者の冥福を祈った。世界サミット共同会長を務めるベルトローニ氏は、「世界中の全ての人々が、今日広島の一市民となったような気がする」と語った。

前日、ビルマのアウン・サン・スー・チ−氏の7年以上にも及んだ自宅軟禁が解かれたというニュースが流れ、会場はそれだけでも明るい雰囲気に包まれていたが、雲の切れ間からは日も射し始め、復興した広島を祝福しているようでもあった。歴代受賞者らは順に登壇し、原爆の火を背後にスピーチを行った。最後に壇上に立たれたダライ・ラマ法王は、「40年以上前初めてこの地を訪れて以来、広島と長崎の方々の勇気とそのメッセージに心を動かされ続けてきた。その勇気とメッセージが世界中に広まることを期待している」と語られた。そして広島と長崎の人々の寛容さを讃えた。法王が出会った日本人やドイツ人で、自分たちを攻撃した国を憎む人はいなかった、と法王はおっしゃった。

「過去は過去だ。未来を見つめなければいけない。武力で問題を解決するのは時代遅れだ。世界70億の誰もがそのことに気づいているはずだ。」

最後に法王は力強く呼びかけた。「私はこの広島の地から全ての宗教リーダーにメッセージを送りたい。ほとんどの宗教は慈悲、寛容、愛の大切さを説いている。だったら、リーダーの皆さま、もっと行動を起こしてください!祈るだけでなく、教会や寺院を出てその素晴らしい教えを広めるために行動してください!」核兵器の恐ろしさを理解しているはずの科学者に対しても、法王はもっと発言するべきだと呼びかけた。

「結局世界を変えられるのは人類だ。私たち一人一人がそれに貢献する可能性をもっている。実際20世紀後半、個人個人の力によって世界に多くの変化がもたらされた。行動こそが最終的な意思決定だと信じている。」そうおっしゃって法王は演説を締めくくった。

歴代受賞者のスピーチの後秋葉広島市長が登壇し、人類と核兵器は共存してはいけない、と語った。広島県知事のスピーチがあり、平和サミット賞の授与式がそれに続いた。今年の平和サミット賞はサッカー元イタリア代表ロベルト・バッジョ氏に贈られた。バッジョ氏はアウン・サン・スー・チ−氏の解放運動支援の他、大地震に見舞われたハイチへの支援活動などを行っている。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)には特別賞が贈られた。85歳になる坪井直日本被団協代表委員は「私たちは不死鳥です。核兵器をなくすという人類の望みを忘れずに最後まで諦めません」と決意を新たにした。歴代ノーベル平和賞受賞者によって採択された『核兵器廃絶に向けた広島宣言』がジョディ・ウイリアムズ氏によって読み上げられた。

世界サミットに参加した6人の受賞者がサミット閉幕後に原爆死没者追悼平和祈念館で会見し、今年のノーベル平和賞受賞者で服役中の劉暁波氏の釈放を求める声明を発表した。ダライ・ラマ法王は「私は実はマルクス主義者だ。もちろん仏教徒ではある。しかし社会経済論に関してはマルクス主義を支持するつもりだ。ところが1956年以降、中国は苦難と懐疑に象徴される社会になってしまった。だからこそノルウェー・ノーベル委員会が劉氏、そしてその他の中国の解放と自由のために活動する何千人という中国人を評価してくれたことは大変よいことだったと思っている」とコメントされた。

会場を後にする法王に報道陣が群がりアウン・サン・スー・チ−氏解放についてコメントを求めた。法王は一言、「とても嬉しいよ!」とお答えになられた。

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