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化学物質や毒物からダライ・ラマを守る

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(2012年6月19日 アシュワニー・シャルマ :シムラー)

ダライ・ラマ法王は十年前に中国を逃れて以来、ダラムサラを住処としている。法王はおそらく、ヒマーチャルプラデーシュ州の中でも最高の警備を受けているVVIPである。現在、新たな脅威への認識で、そのセキュリティはかつてないほどのレベルにまで引き上げられている。

現在76歳でノーベル平和賞受賞者であるダライ・ラマ法王が、中国のエージェントが彼を毒殺する計画を立てている可能性がある、と公に主張して以来、この数週間で次第にレベルを上げて対策が講じられた。これらの新しい措置のなかでも、最も重要なのはダライ・ラマ法王の食事や薬のスクリーニングだが、一方で訪問者に化学検出器を使用しようという提案もある。

犯罪捜査部(CID)は、法王の食事は専属の医師がチェックすること、常に同じ業者に注文しないことを勧めている。

化学検出器には、これまで国家警察になじみのなかった技術も含まれている。ダライ・ラマ法王は、毎年推定20万人の訪問を受けており、中央チベット政権(CTA)は、その中の誰か、特に女性が、化学物質を髪などにつけて来る可能性がある、との懸念を表明している。提案されている機器は、気体の形でも化学物質を検出することができる。

I・D・バンダリ警察庁長官は「我々はこの提案を検討している。化学物質検出器の使用は、CTAと協議の上で決定される」と語った。

州警察のセキュリティ部隊である地方警察とCTAは、セキュリティの見直しと強化を行っている。「我々は定期的にダライ・ラマ法王のセキュリティの見直しを行う。最近の報告を受けて、我々はマクロードガンジにチームを送り、あらゆる隙をなくした」。バンダリ長官は、この件についてチベットの閣僚とも議論をしている。

プレム・クマール・ドゥマール州知事は、「ダライ・ラマ法王の懸念を考慮し、州機関は必要なセキュリティの見直しを実施している。また、セキュリティを強化するために、中央政府に資金の増額を求めている」と語った。

セキュリティ予算は年間7千万ルピーで、その内7万〜7万5千ルピーが外務省から償還される。D・S・ミンハス警察局長は、「政府は新規投資のコストを含む全額償還を求めている」と語った。

チベット亡命政権のンゴドゥプ・ドンチュン公安大臣は、「法王の発言以後、我々は化学検出器の資金を提供するよう外務省に求めている」と語った。

カーングラ警視は、セキュリティを統括する警察の調整官である。マクロードガンジでは、外務省、情報局、研究・分析局、中央チベット政権はそれぞれ独立した立場にある。複雑な内部のセキュリティは、チベット人のヴィカス軍が扱う。

警察の調査では、ダライ・ラマ法王の宮殿であるバーンエステート内部の人員は、現在の110人から増加させる緊急の必要性はないとしている。

現在までに推奨されている強化策は、壁の高さを数フィート高くすること、パトロールの強化、訪問者の指紋記録の保持、網膜スキャンの導入である。贈り物や携行品のスクリーニングはすでに行われており、X線検査をした上で選ばれたわずかな物だけが許可されていたが、それも現在は携帯電話の持ち込みとともに禁止されている。その他、トランシーバーを持つ人員の配備、インターカムシステムの導入が新たに提案されている。

CIDが特に強調しているのが、必要であればダライ・ラマ法王がPGIチャンディーガルなどの高度専門病院へ緊急避難できるように準備しておくことである。警察は、ダライ・ラマ法王が応急手当を受けるには、チベット系病院まで宮殿から1.5kmあり、次に近い病院がタンダのラジェンドラ・プラサード医科大学であることについて懸念を表明している。宮殿では、緊急避難訓練どころか、破壊工作や火災に対する訓練すら行われたことがない。

警察はまた、現在ダライ・ラマ法王は防弾車であるタタ社のサファリを使用しているが、マクロードガンジの急勾配を進むのは困難なため、しばしば防弾でない車両に乗り換える必要があることから、これを換えるよう提案している。治安当局は、最新型で軽量の新しい防弾車と、警察による適切な警護を推奨している。

ドンチュン公安大臣によれば、毒殺の危険を認識する以前から、ダライ・ラマ法王は脅威にさらされていたという。潜在的な脅威の1つは、敵対チベットグループであるシュグデン派である。シュグデン派は、1996年5月に設立されたドルジェシュグデンの信者による慈善宗教団体を中心としている。1997年2月3の僧侶殺害に、グループのメンバー関与した疑いがあるとされている。


(翻訳:熊谷 恵雲)