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中央チベット政権の返答:第4部 中華人民共和国誕生60年周年における少数民族への贈り物 〜 一つの白書と二人の処刑 〜

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(2009年11月26日 中央チベット政権)

軍隊マーチとそのメッセージ


10月1日、北京は中華人民共和国の60周年記念を祝いその式典は圧倒されるものだった。誇り深く、感情に溢れながら硬く立ち望む中国指導者たちの前を軍事機器が通り過ぎて行った。このような中国の軍事力の顕示を世界各国の政府は息を殺して見守った。武器産業系列の外国企業は、この可能性に満ちた中国の市場を見てよだれを流さんばかりだった。しかし、この展覧中の5000機にも及ぶ目覚しい範囲の洗練された武器の1つ1つが中国製なのを見た時の彼らの失望は大変なものだった。この死の商人たちへのメッセージは明らかだった。中国での軍事兵器市場は皆無、ということだ。このような重要産業内での絶対的独立と完全なる自立を中国は望んでいるのである。

天国からの贈り物:白書


数日前の9月27日に、北京は国内の55部族の少数民族に対し「白書」という贈り物をした。この白書とは、中華人民共和国国家審議会情報局より出版された「中国の民族政策と共通繁栄、そして全民族の発展」と称されたものだ。

外部の観察者にはこの2つの発展の関連は定かでないかもしれない。しかし、中国少数民族にとってそのメッセージは明らかだった。白書内に言及された少数民族の人権が彼らへの「ごほうび」であり、もし彼らがその「ごほうび」に満足しないと、60周年記念日にひどく顕著に展覧された軍事機器による「お仕置き」が彼らを待ち構えているのだ。

中国が表紙だった10月3−9日号のエコノミスト誌には、北京がこのような派手な展覧をした理由に関するコメントがこう掲載された、「中国の指導者たちは、自国がまだ裕福な国ではないので、自然と経済発展の助長が最重視されることを的確に指摘した。そしてこのような見解は、建国日パレードで伝えられた軍事的メッセージに関する質疑への回答とも解釈できる。パレードの主な観客は中国国外者ではなく自国民であったのだ。人民政権なしの政府を正当性するには、中国の富と強硬性を増すしかないのである。中国による抜け目ない自国の強硬性の展示は、彼らの自信の無さを暗示しているともいえる。急発展中の中国がどんな動きを見せるか懸念している人々にとって、中国政府のこの様な不安定さには安心できないだろう。」

最も策略高い中国の手先であるウィリー・ラムはこうコメントした、「10月1日の前代未聞に大規模な軍事パレードは、国外の敵対組織に対してだけでなく、共産党の(チベットとウイグル分離派などの)国内の無数の敵対組織に対してのものでもあった。」

10月12日号のニューズウィーク誌も、この軍事パレードのメッセージは国内の観客向けであったことには同意しているが、違った見解も見せている。このパレードによって、中国人民の国内そして国外での安全を再確認したというものだ。パレードを秘密と悪い兆しで覆ってしまった中国政府によってつくられた状況の中では、この様な議論の信憑性は無い。もしこの観点が事実でないなら、政府に選出された観客以外の国民はパレードを自宅のテレビで観賞するように言われたのはなぜであろうか?安全問題は支配者と被支配者両方に関わる問題だ。もし支配者たちが支配する人民たちの中で安全を感じられなければ、支配されている人民が支配者からの安全を正当化できることはあるだろうか?

パレードと白書に関する疑問は以下の通りである。もしパレードの主なメッセージが中国人民と少数民族の安全を再確認するためだったとしたら、こういう目を見張るような見世物を中国政府が莫大な出費をしてまで演出しなければならなかったのはなぜだろう?

世界で一番安全な国という地位への候補国は他にもあるだろうが、今の議論上スイスが世界で最も安全で平和な国としてみよう。しかし、自国民と支配者の安全を再確認するために大規模で自尊的なパレードを演出する必要性は、スイス政府には見えない。

白書に関しても同じ疑問が沸く。少数民族が共通の繁栄と発展を享受していれば、この様な文書を印刷して出版する理由は全く無い。達成の事実は自発的に明らかで全人民が感謝しているはずだ。北京によるありもしないサービスに対し永遠の忠誠で返済する少数民族はその例外であるが。

残念ながら、少数民族の共通の繁栄と発展という北京の主張が正しかったことは一度もない。昨年のチベットでの最も持続して広範囲に及んだ動乱の勃発、今年の7月の新疆での暴力的なプロテスト、そしてこれらを抑圧した残虐な方法が現実的な背景にあるのにもかかわらず、この様な白書を公表することによって、共通の繁栄と発展という誤った主張が中国現在の経済的影響のおかげで世界に受け入れられる、という北京の極度な自信が示される。もしくは、白書の真っ白な紙の下に恐るべき秘密を隠したいという中国政府の熱望なのか。

その秘密というのはこれだ。チベットと世界を揺るがした、昨年の平和的なプロテストでの全体的な死者数や被害状況に関する具体的な情報を入手することは不可能だ。しかし2009年10月27日時点での情報によれば、2008年の3月からのチベット人死者は228人に上り、その中の118人に関しての具体的な情報は判明している。371人のチベット人は起訴、判決され、4675人のチベット人は逮捕もしくは投獄、990人のチベット人は行方不明、そして1294人のチベット人が傷害を負った。我々が知っている事実はこれだけである。これ以外のチベット人死者や、投獄中で拷問の危機にさらされているチベット人が正確に何人いるかというのは定かでない。

チベット人への最新の贈り物:死刑


10月20日に、2008年のプロテストとの関連を理由に、数人のチベット人がラサで中国政府により処刑された。その内2人の処刑は中国政府により確認されたが、中国の公式報道陣はこの処刑について全く言及しなかった。これらの処刑のニュースがチベット人社会に広まったのは、処刑された人々の遺体がその家族に返還されたためだ。中国政府に反して自民族の権利を主張するチベット人の公式殺害はこのようにして世界に知らされた。表現の自由の権利を実行したこれらのチベット人の処刑は、白書によって白塗りすることはできない。

「真実内閣」


しかし、北京はプロパガンダを容赦なく連発発砲することにより、このような残虐行為の全てを埋れさせようとしている。白書は中央統一戦線工作部副部長、朱維群との綿密なインタビューの後公開された。11ページに及ぶこのインタビューは10月16日に新華社のホームページに掲載された。この長めのインタビューは、「フォーカス」というドイツの雑誌に、その1ヶ月前である9月22日に掲載された記事を再出版したものである。このように古臭い課題についての古いインタビューをわざわざ再利用した動機の本心はおそらく、新華社が自分の上司である「真実内閣」を新たにインタビューをするよりも、外国の出版物のインタビューを再出版する方が目新しいだろう、と計算したものであろう。そして朱維群はこのインタビューの中、真実は彼の味方でチベット人側の主張は嘘の塊で虚偽に包まれていると、いかにも本当らしく供述している。

朱維群による真のメッセージは明らかである。チベット人民のために確保された自治区の状況に関する変革や改善の必要は全く無い、ということだ。彼はこう述べた、「もっと簡潔に言えば、中国の民族自治区の現状は、民族自治区の将来の姿そのままである、ということだ。」

中国の文明的社会層の意見


中国の文明的な社会層は少数派で迫害されながらも、こういう中国政府の強硬路線アプローチに異議を唱えている。昨年の春と夏にチベット全土を巻き込んだ広範囲にわたる長期的なプロテストの余波の中で、北京が本拠地のゴンメン法律研究所はプロテストの原因を探るために、俗に言う「チベット自治区」の中の3地区とその外部付近に研究者たちを送り出した。研究者たちは地域の住民をインタビューするために丸一ヶ月それらの自治区内外で過ごした。その結果は5月に「チベット人地区での3.14事件の社会的、経済的原因に関する調査報告書」として発表された。報告書によると、急激に高まっているチベット民族主義の大部分は、気前のいい北京を餌食にしながら自己の無能と誤指導をすぐさま「分離派」のせいにする、「新貴族階級」と報告書が呼ぶグループを生み出した蔓延的な腐敗を含めたチベット国内での状況が引き金となっているものである。

この報告書には、チベット問題解決策として北京に対する9項目の勧告事項が表記されている。第1項目は、「チベット人民各人の権利と利害を尊重、擁護するため、チベット人民の意見を真意持って聞くこと。さらにチベット人民の希望と調和するよう、チベット地区の特質に適した発展政策の案出を考慮するような政策調整を求める」としている。

第3項目は、「地域民族自治政策の施行における地元組織の効果的な監督を増加し、権力組織の民主化過程を加速させる。チベット人地区政府、特にチベット内の社会問題を’反分離主義’の名において隠し伏せる官僚の間で顕著である腐敗の許容、管理能力の欠陥、職務怠慢などを妨げること」としている。

報告書はさらに、北京が「チベット人地区内の統治過程における法的規制を推進する」ことを勧告している。

新華社に再掲載された長めのインタビューに朱維群の供述がこう引用された、「宗教に関して言えば、チベットと中国他地域全土での信仰の自由は、同じ政策の下で施行されている。中国では信仰の自由は完全に尊重されていて、それに対する障害は全く無い。」

だが調査報告書によって明らかになった事実は全く違う。「チベット人民が正常な信仰生活と活動の回復をしその維持ができるように、彼らの信仰の自由を全面的に尊重し擁護する」ことを報告書は中央政府に促している。

中国のプロパガンダに対する国内での観点


中国のプロパガンダに関してエコノミスト誌同号はこう述べた。「中国は、自国が責任のある無脅威な新興の超大国であるというイメージを打ち出そうとしているが、この動きは中国指導者の2つの習慣によってだめにされている。反体制者に対する恐るべき扱いを外国に非難された時や、ダライラマ法王、もしくは法王以外の中国共産党の毒の的が外国を訪問した際に、中国が半狂乱的なプロパガンダと報復に反射的に頼ることなどがその一つである」

共産党は自己イメージを重要視している。外国人のためではなく自国民のためだ。他国では買収、賄賂、脅しなどをすることが可能で、北京の近年の経験によればこの様な策略は効果的に見える。しかし自国民に対しても同じ策略を長い間使いすぎたので、現在その効力は薄くなってきた。勝算の確率も小さいながら、チベットに対する北京による横領とプロパガンダに反して勇気深く挑戦したゴンメン法律研究所の例がそれである。残念なことに、この法律事務所は閉鎖され指導者は拘留されたがその後釈放された。

中国内でのこの様な健全な意見や常識観は増え続けている。今年の8月6日から8日にジュネーブで、中国からの学者や人権活動家と亡命チベット人たちの間での会談が開かれた。「共通基盤の発見」という名の会談に基づき制作された公文書にはこう述べられた、「チベット問題の根源は中国人民とチベット人民間の衝突ではなく、中華人民共和国によるチベットでの独裁的支配と文化破壊がそれである。’チベットは常に中国の一部だった’という北京政府の主張は事実的に間違っている。」

「人類多数の文化の中、チベット文化は貴重な宝である。自由なチベット無しで自由な中国は有り得ない」と、その会談で決断された。どんなに白書を出しても、中国人一般大衆の押し寄せる意見の波を食い止めることはできない。中国人一般大衆の意見は、中国政府が中国人民自身と少数民族の要求と大望に対してさらに透明感を増し敏感になることを求めていて、少数民族が尊厳と自由の中で生きる能力を持つことは安定的で繁栄的な中国の揺ぎ無い基盤として欠かせない、といったものだ。

北京政府はこの様な意図で活動しているべきで、白書を発行しその傍ら人々を処刑するのは良質な統治を提供する方法ではない。アブラハム・リンカーンの言葉を借りれば、「全民の何人かは常に買収、賄賂、脅しでだませるが、全民を常に買収、賄賂、脅しでだますことは出来ない」

「反分離派」に反するための「反分離派」の利用


北京は自政府の安定性と正当性を、買収、賄賂、脅しによって得ることはできないと認識した。このような認識と計算高い挫折を理由に、ダライラマ法王へのしんらつだった非難内容をもっと酷くしている。今の北京でのチベットに対する立腹の理由ナンバーワンは、チベット人民が亡命中に設立した民主制度である。北京に言わせるとこの様な形式のチベット民主制度はまやかしだそうだ。ダライラマ法王が実質的な権力をにぎっている、と言っている。

中国政府による一番最近のチベット民主制度への攻撃は、2009年10月28日の中国共産党の新聞、ピープル・デイリー紙上で行われた。その記事の名前は、「ダライラマによる民主制度の実施は笑いの種」であった。記事前日のチベット議会最中の出来事全ては生放送されていて、議会中の逐次やこの記事を書いたピープル・デイリー紙の記者が「笑いの種」と呼んだ、議員による抗議目的の突然退場の背景を知ることは問題なくできたはずだ。

しかし、議員の突然退場への驚きとショックを装うのはよく見たとしても不誠実で、最悪の見方では、選択の自由という民主制度の基礎に関するその記者の無知さが暴露されたというわけだ。しかし、議員の突然退場がチベット民主制度の空洞性を示していると議論するのは、亡命中チベット人民が実施する民主制度をあからさまに歪曲している。率直で白熱した討議の後に起こった議員の突然退場は、チベット民主制度の持続力を補強し、これはチベット人民各人が誇りに思っていることだ。

この記事に書かれた日に、チベット議会討議の取材目的でダラムサラに来たピープル・デイリー紙の記者はいなかったと、議会討議の取材陣を全て登録する議会事務局は証言した。実際には、中国・チベット情報局が「笑いの種」の記事を提供したと我々は聞いた。この報道記事は机上の空論的な報道の例で、この創造的な文書は中国人によって書かれたものだ。例えば、チベット議員のペンパ・ツェリンはビアンバ・セリンと綴られていて、カロン・トリパ(行政府長)のサムドング・リンポチェの名はサンドングと変えられている。チベット人作家のジャムヤング・ノルブの名は、ジア・ヤングヌオブと変化している。正確さと事実確認を中国のプロパガンダのドアから投げ捨てるために、ピープル・デイリー紙はボイス・オブ・チベット誌のことを、ノルウェーではチベットサウンドと呼んでいる。このチベットサウンド誌がノルウェーで何をしているのか、これが誰のサウンド(音)なのか、我々は興味津々で知りたいものである。

この様なあからさまな不注意や無責任な報道が見える中、ピープル・デイリー紙に真実は書いてあるのかと中国人に聞くと、「日にちだけだよ」と彼らが答えるのも道理なはずだ。

「チベット分離派、ダライラマの’民主制度の神話’を暴露する」 という記事がある。この記事にはジャムヤング・ノルブの「マンツォを待ちながら」という長文エッセイからの引用文が広範囲に使われていて、パユル(www.phayul.com) に掲載されている。

「分離派」に反するため他の「分離派」による文書を引用するという手段には驚かされる。文化革命中に、赤旗に反するための赤旗を掲げていると告発された中国人が何人かいたともいう。これは党派の一部が、毛沢東に反するために毛沢東自身の名を利用したというわけである。「山の王に反して羽をバタバタさしているハエ」と、北京が以前チベット青年議会と同等に軽蔑的に見下げたジャムヤング・ノルブの引用文を使っているのは、急成長中の大権力者のはずである中国が自暴自棄になっている確実なしるしである。ジャムヤング・ノルブはチベット独立の支持者で彼はそれを公に誇りにしている。ダライラマ法王によるチベット行政部とチベット人社会の民主化という偉大なる業績を、北京がジャムヤング・ノルブの記事を使って非難しけなすというのは、彼らがチベット人民と中国人民の心を勝ち取るという奮闘に負けているからである。

民主主義と選択の自由は、ダライラマ法王からのチベット人民への贈り物である。この贈り物によりチベット難民は力づけられ、チベット人社会の性質は根本的に変わり甚大な活気を与えられた。チベット人の若者が自分の夢を追い、自己の可能性を成就するための才能とエネルギーはこの贈り物によって解き放たれ、その過程で若者たちは亡命社会の団結に貢献する。民主主義を脅威と見なす中国指導者たちは、中国人民にこの様な自由を与えることを活発に拒否している。北京による未知なる民主主義への止まなき吼え声はこうして説明できる。


(翻訳:嵯峨真里奈)