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中国政府、ダライ・ラマ法王逝去後の禁止事項リストを僧侶に配布

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チベット仏教の僧侶向けの訓練マニュアルに指示

ラジオ・フリー・アジア(RFA)チベット版ペルバー記者
2024年4月9日

2008年3月18日、中国四川省康定市(ダルツェド)の南無寺の中庭で、経本で学びながら読経するチベット仏教ゲルク派の僧侶たち
デビッド・グレイ/Reuters

中国当局が中国北西部の甘粛省の僧院に配布した訓練マニュアルによると、チベットの精神的指導者であるダライ・ラマ法王が逝去した際、仏教僧はダライ・ラマの写真を展示することや、その他「違法な宗教活動や儀式」を行うことが禁じられる。この情報は、チベット内部の情報源と、亡命中の元政治犯ゴロク・ジグメ氏によって伝えられた。

安全上の理由から匿名を希望するチベット内部の情報提供者によると、マニュアルには仏教徒が従うべき10の規則が記載されており、ダライ・ラマ法王の転生者の認定プロセスを妨害することも禁止されている。チベットの人々は、輪廻転生という仏教の信念に従って後継者を決定すべきだと考えているが、この数世紀にわたる選定方法に中国政府は干渉しようとしている。ダライ・ラマ14世(88歳)は、1959年の民族蜂起の後、チベットを脱出。以来、インドのダラムサラで亡命生活を送るチベットの歴史上、チベット仏教最長の精神的指導者だ。

当該マニュアルはラジオ・フリー・アジアも目視している。チベットの歴史的地域であるアムド地方の甘粛省のチベット自治州の僧侶に配布されたもので、専門家や権利団体は、チベット人の宗教的自由を抑圧する、中国政府の新たな取り組みだと言う。

ダライ・ラマ法王逝去の際にチベット仏教の僧侶が従うべき10の規則が記載された中国政府発行のトレーニングマニュアルのスクリーンショット(市民ジャーナリスト撮影)

ワシントンにある国際チベット支援ネットワーク(International Tibet Support Network)の研究・監視部長、ブチュン・ツェリン氏は、中央政府の行動はチベット仏教徒を宗教教義ではなく、中国共産党と、その政治的目標に、より忠実にさせるための体系的な試みの一環であると指摘。「中国は、チベット人に普遍的に認められた宗教的自由の原則を支持していると主張するが、あらゆる面で反している」とラジオ・フリー・アジアに語った。

中国は、チベットの僧院に政治的再教育を施すため、さまざまな措置を課してきた。僧侶や一般のチベット人においては、中国政府が分離主義者と見なすダライ・ラマ法王や亡命中のチベット人に接触することも厳しく禁じてきた。近年では、チベット自治区とチベット人が多く暮らす中国内の地域において、チベット仏教の弾圧を強化している。

アメリカ超党派から成る国際宗教自由委員会(USCIRF)のナリー・ターケル委員は「甘粛省におけるダライ・ラマとチベット仏教徒の宗教実践を対象とする最近の政府の行動は、ダライ・ラマ転生プロセスへの干渉を試みる中国政府の新たな試みだ」と述べた。ターケル氏はアメリカ政府に対し、宗教の自由を侵害する中国政府当局者に制裁を課すよう訴えた。

“分離主義的イデオロギー”

マニュアルは、僧侶が国家の統一を損なう活動に従事すること、宗教の名の下で社会の安定を損ねること、国外の分離主義グループとの連携を求めることを禁じている。また、違法な組織や機関が僧院に入ることを許可せず、僧侶の教育システムも“分離主義的イデオロギー”を容認してはならないと定めている。

2024年3月19日、中国甘粛省甘南チベット自治州の瑪曲(マチュ)県で、中国国家党委員会のハー・モウバオ(He Moubao)書記(写真中央)がチベットの僧侶を訪問(市民ジャーナリスト)

チベット内部の情報提供者によると、マニュアルは“分離主義的な考え”の促進や、ラジオ、インターネット、テレビなどを通じた“分離主義的なプロパガンダ”の拡散も禁じており、公然または秘密の欺瞞(ぎまん)も禁止している。

中国の支配下でチベット人が直面する不正義についてドキュメンタリーを共同制作したことで2008年、当局に投獄され、拷問を受けたゴロク・ジグメ氏は次のように語る。「中国政府はチベット人を対象にさまざまな政治教育や活動を実施している。チベットの宗教と文化を解体することで、チベットのアイデンティティを根絶することが主な焦点とみられる。」

中国には、チベットに隣接する甘粛省、四川省、青海省、雲南省など、チベット族が多数暮らす10のチベット自治州がある。マニュアルが配布された甘粛省の甘南(カンロ)チベット自治州は、アムド方言を話す約41万5千人のチベット人が暮らしており、大小約200の僧院がある。

中国国家党委員会のハー・モウバオ(He Moubao)書記は3月、甘南チベット自治州の郡を二か所訪問した際、チベットの宗教を中国化し、中国共産党の宗教政策を実施する必要性を強調した。僧侶は、そのような観点で、国家の統一と社会の安定を維持するために指導すべきだとも述べた。

2008年5月8日、中国甘粛省夏河近くの寺院で僧侶に渡された宗教政策や法律、規則に関する中国政府の教科書を持つチベット仏教の僧侶(Ng Han Guan/AP)

米国際宗教自由委員会(USCIRF)のテンジン・ドルジェ前議長はラジオ・フリー・アジアに次のように語った。「中国共産党は、政治的かつイデオロギー的な目標と政策を達成するため、チベット仏教を中国化し、チベットにおける宗教の自由を著しく侵害している。」「ダライ・ラマ法王の逝去後は仏教を合法的に実践できる者がいなくなる、と言うのは、今後チベットでさらなる宗教的弾圧が行われる兆候だ。」

1951年にチベットに侵攻した中国は強権的な統治を強めており、チベット仏教の次期精神的指導者の選出は中国の法律により中央政府のみが決定できるという。しかし、チベット人は、ダライ・ラマ自身が転生する肉体を選ぶと信じている。

転生プロセスは1391年に初代ダライ・ラマが生まれて以来13回行われてきた。元の名をテンジン・ギャツォというダライ・ラマ法王は、今月初め、ダラムサラの自宅で、長寿祈願の集会に参加した数百人ものチベット人に対し、自身が健康であること、「100歳以上生きる決意がある」と語っている。自身の後継者については、中国の干渉のない自由な国に再来するだろうと、これまでに複数回述べている。

 追加報告は、ラジオ・フリー・アジア・チベット版のタシ・ワンチュク、リグデン・ドルマ、ケルサン・ドルマによる。翻訳・編集担当はテンジン・ペマ、編集担当はロザンヌ・ジェリンとマルコム・フォスター。

オリジナル記事


 (翻訳:Y.K.)