ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

中国外相のオーストラリア訪問に数百人が抗議

Print Friendly, PDF & Email

オーストラリア政府は中国とチベットにおける人権に「深刻な懸念」を抱いている、と報道官。

タシ・ワンチョク氏、ソナム・ラモ・シンゲイ氏、テンジン・ディッキー氏によるRFA(ラジオ・フリー・アジア)チベットのニュース記事

2024年3月20日

2024年3月20日、キャンベラの国会議事堂で、王毅中国外相のオーストラリア訪問に合わせて中国共産党政権犠牲者同盟が主催した集会に参加する抗議者たち

3月20日、数百人のチベット人とウイグル人活動家が、オーストラリアの首都キャンベラで集会を開き、中国の王毅外相の訪問に抗議した。オーストラリア外相のペニー・ウォン氏に対しては、チベット、新疆ウイグル自治区、香港における人権侵害の問題を提起するよう要求した。チベット人活動家たちは、キャンベラの中国大使館の外でチベット国旗を掲げ、「フリー・チベット」と叫びながら抗議し、大使館の手すりを乗り越えようとして、警察に押し戻された。

今回の王毅外相のオーストラリア訪問は、中国の指導者がオーストラリアを訪問した2017年以来の機会となり、近年、人権や貿易、COVID-19をめぐって衝突してきた両国間の緊張した外交関係が、軟化していることを示すものとなった。

王毅外相は、2020年に課されるワイン、ロックロブスター、食肉製品への関税撤廃を推し進めたが、権利に関する懸念も遠慮なく口にした。

中国の王毅外相(中央右)とオーストラリアのペニー・ウォン外相(中央左)が会談。2024年3月20日、キャンベラにて (デビッド・グレイ/AFP)

ウォン外相は会議後の記者会見で、人々の要望であった、新疆ウイグル自治区、チベット、香港を含む人権問題について、オーストラリアの懸念を表明したこと、また、海上での危険な行為に対する深刻な懸念と、台湾海峡およびこの地域の平和と安定に対する願いを表明したことを述べた。この日、キャンベラ、シドニー、パース、メルボルンのチベット系の人々や、香港、新疆ウイグル自治区など中国各地からも数百人がオーストラリア国会議事堂前に集まった。

人権侵害

チベットでは、中国政府は仏教の修行に制限を課し、僧侶を恣意的に拘束している。中国当局はチベット人の子どもたちを家族から引き離し、国営の寄宿制学校で教育を受けさせ、そこで生徒たちは北京語、中国共産党のイデオロギーを教えられている。

先月、中国四川省のチベット人居住地域であるデルゲ県で、大規模なダム建設に反対する平和的抗議活動を行ったチベット人を警察が取り締まった。

「オーストラリア政府は、チベットにおける権利と自由の侵害を含め、中国での人権に深刻な懸念を抱いている。オーストラリアは人権を擁護する発言を続け、さらに関連する機会を利用して、中国が国際的な人権義務を果たすよう働きかけていく」と、オーストラリア外務貿易省の報道官はRFAに語った。

中国の王毅外相との会談後、報道陣の取材に応じるオーストラリアのペニー・ウォン外相。2024年3月20日、キャンベラの国会議事堂にて(ルーカス・コーチ/AAP via ロイター)

オーストラリアのジャネット・ライス上院議員はフェイスブックのビデオメッセージで、ウォン氏と、同じくウォン氏と会談したサイモン・バーミンガム上院議員(影の外務大臣・野党党首)は、人権問題を最優先課題にすべきであり、「チベットの人々が抑圧され、迫害され、信教の自由がなく、土地を奪われ、子供たちが中国の運営する寄宿制学校に送られている間は、私たちは中国と正常な関係を持つことはできない。」と述べ、そして、こう強調した。

「これはチベット人の権利に対する大きな攻撃であり、オーストラリアは声を上げなければならない」

通常通りではない

オーストラリアのチベット人コミュニティ協会の会長であるチョージン氏は、「オーストラリアの労働党政権は、貿易の祭壇のために人権を犠牲にした過去の過ちを繰り返してはならない」また、「中国が貿易を再開する準備が整ったからといって、関係が “通常通り “に戻ってはならない」と18日の声明で述べた。

オーストラリア・チベット評議会の執行役員であるゾーイ・ベッドフォード氏も、「オーストラリア政府は、チベット人、ウイグル人、香港人、中国人活動家、拘束されたオーストラリア市民に対する中国の人権侵害を無視することはできない。」「チベットが世界で最も自由度の低い国のひとつとして常にランクされている一方で、オーストラリア政府が中国政府の人権侵害に対してマグニツキー法による制裁を発動するのではなく、貿易取引によって中国政府に報酬を与えていることは残念だ。」と、同声明で述べた。

2024年3月20日、キャンベラの国会議事堂で、中国の王毅外相のオーストラリア訪問に合わせて中国共産党政権犠牲者同盟が主催した集会に参加する抗議者たち (ルーカス・コーチ/AAP via ロイター)

オーストラリア政府は、外国企業や個人に対し、金融取引や商業活動を制限、オーストラリア資産の凍結、オーストラリアへの渡航禁止など、マグニツキー式の的を絞った制裁を適用することができる。

この制裁措置は、ロシア政府高官の汚職や不正行為を暴露したことで、逮捕、拷問され、十分な治療もなく、2009年にモスクワの留置場で遺体で発見されたロシアの税務顧問、セルゲイ・マグニツキー氏にちなんで名付けられた。

チベット事務所キャンベラのカルマ・シンゲイ代表は、ウォン氏に宛てた書簡の中で、中国政府がチベットで犯した人権侵害について概説し、オーストラリア政府に対し、中国との問題に対処するために外交的関与を行うよう求めた。

その他の要求としては、不当に拘束されたチベット人抗議活動者の釈放、国際監視団によるチベットへのアクセス拡大、中国とチベットの対話の再開、オーストラリアと中国のより公平な関係を育むため、人権問題を二国間協議へ組み込むことなどを中国に促すことが挙げられた。

テンジン・ペマ氏がRFAチベットに寄稿。ロザンヌ・ゲリン氏、マルコム・フォスター氏による編集

オリジナル記事


 (翻訳:稲田かおり)