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中国がチベット族遊牧民による抗議を激しく鎮圧

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2015年5月30日
ビッグニュース・ネットワーク

 

チベット高原の牧畜地帯と遊牧生活の返還を求めるチベット族遊牧民らによる平和的な抗議活動を、中国が激しく鎮圧しているとチベット人権活動家が土曜日に語った。

自らもチベット族遊牧民で、チベット人権民主センター(TCHRD)センター長であるツェリン・ツォモ氏によると、2003年に中国政府が新しい政策を実施して、チベット族遊牧民の草原での牧畜を禁じ、都市のコンクリート製の住宅地への移住を強制するようになってから、遊牧民の人口は何十万人も減少している。

ツォモ氏は自身の報告書「消えゆくチベット族遊牧民」を発表する外国人記者クラブでの記者会見でこう述べた。「市民社会というものは中国には存在しない。誰も政府に対して平和的に陳情することすらできない。平和なデモであっても激しく鎮圧される」

ツォモ氏はインドのヒマーチャル・プラデシュ州で育った。記者会見では、中国政府は遊牧民を草原の牧畜地帯から追放した後、その場所に化学工場を建設し、有害物質を河川の源流に垂れ流して汚染していると述べた。

ツォモ氏の報告書、「壊された暮らし:チベットの遊牧民文化を消滅させる中国の政策」が取り上げるのは、中国の都市郊外のコンクリートの小屋に強制移住させられたチベット族遊牧民たちだ。中国社会への同化を強要されているが、中国語の理解が乏しいか、全くわからないため、困難を強いられている。

現状を詳しく伝えるこの報告書は、ダライ・ラマ法王が後援するチベット人権民主センターと、遊牧民のためのNGO連盟が発表したものだ。

これによると、西ヨーロッパと同じ広さであるチベット高原を遊牧民の手に戻して遊牧を許せば、生態系を維持できるという。

「中国政府には遊牧民をチベット高原から追放する政策の撤回を希望します。草原を我々に返してほしい。あの土地の使い方を一番わかっているのは我々なのですから」とツォモ氏は話す。

この問題について20年にわたってチベットで調査を続けているジャーナリストのガブリエル・ラフィット氏によると、問題の牧畜地域は金、銀、銅、鉛をはじめ貴金属の資源が豊富であるという。

チベット遊牧民が追放されたあとの牧畜地帯には、何百もの鉱山が出現し、ほぼすべてが中国本土からの中国人に違法に運営されている。 中国政府は、草原での遊牧が過剰になると環境に悪影響を及ぼすという誤った考えのもと、2003年に「定住化」政策を施行し、遊牧民を強制的に定住化させている。

強制的に遊牧民の遊牧をやめさせると、草原地帯の環境が急速に悪化する原因になるとラフィッテ氏は語る。遊牧されるヤクや羊が草を食べることで草の根が強くなるため、土壌が侵食するのを防ぐのだ。

「チベット族遊牧民は、草原の生態をより深く理解しています。遊牧民が遊牧生活を営むことができれば、乾燥地帯を生産的に利用できるのです」

独立を求めて焼身抗議を行った140人以上のチベット人のうち22名が遊牧民だった。

ドイツに拠点を置く遊牧民族NGO連盟のイルゼ・ケーラー・ロレフソンは、食肉や酪農製品の消費量は2050年に世界で二倍になると語る。

またロレフソン氏は、遊牧民族の生活は環境の持続可能性の理にかなっているという。「遊牧民族の羊やヤギの頭数は、自然と草原の維持に適した頭数になるため、過剰な放牧という言葉は存在しない」と述べ、遊牧地帯から牧畜や遊牧民を追放する中国の政策は「まったく間違っている」と語った。

さらに同氏は、中国はインドと同様、生物多様性に関する国連条約の調印国であり、遊牧民を支援する法的な義務があると述べた。


(翻訳:植林秀美)