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中国がチベット仏教僧院での情報へのアクセス制限を強化

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2015年6月19日

 

中国政府はチベット自治区内1800カ所近くある仏教僧院のすべてにテレビの設置を完了した。これにはヒマラヤ山脈地域に起こる反体制的な活動への抑制を強める目的がある。

設置計画の完了までの3年半にわたり、僧侶や尼僧らがテレビを自ら背負うか馬に乗せるなどして山脈を越えたと昨日の中国の国営チベット・デイリー紙が報じている。

その中で、「ラジオやテレビを視聴することで、僧侶や尼僧が共産党や国家の政策、法律や規則、民族や宗教の政策をより速やかに理解できるようになる」と記している。

この設置計画の完了は、中国共産党チベット自治区委員会の陳全国書記が4月に宣言した新愛国教育の施行と時を同じくするもので、この施行により、すべての寺院は中国国旗を掲げることが義務付けられている。

僧侶たちによるチベット蜂起から1年後の2009年、中国政府がチベットのラサ市内44寺院でテレビやラジオを設置したのを皮切りに、現在の情報戦争がはじまった。

それまで中国政府は、米国国務省がスポンサーのボイス・オブ・アメリカなどの情報サービスが、人権や亡命中の精神的指導者ダライ・ラマ法王に関するチベット語のニュースを流していることに頭を悩ませていた。

政府当局は、2013年に衛星放送テレビを撤去させようと僧院に警告を掲示し、撤去しない場合は罰金5000元(805米ドル)を課すほか、僧侶たちへの処罰を警告していたが、効果はなかった。

そのため、当局の役人らは違法とみなしたテレビを破壊して火にかけたと語るのは、ダライ・ラマ法王をはじめ亡命チベット人が居住するインドの町ダラムサラに拠点を置くチベット人権民主センターのツェリン・ツォモ長官だ。ニュースサイトのucanews.comに対し、ツォモ長官はさらにこう述べた。

「中国政府はチベット人が外部から情報を得るのを妨害することに躍起になっています。状況が悪化していて、とても不安です。チベット人たちが、ただ情報を発信しようとするだけで政府は罰しているのが現状です」

公安当局は今年3月に、ソグ郡の僧院に居住する僧侶8人を、中国で人気のメッセージアプリWeChatで情報を発信していたとして拘束した。

2012年に高僧のヨンテン・ギャツォ氏が、尼僧のテンジン・ワングモさんの写真を公開したことで7年間の禁固刑の判決を受けた。ワングモさんは2008年の蜂起から中国の支配に対して焼身抗議を行ったチベット人約140人の1人である。

政府当局はネット上の情報発信の一斉取り締まりを行ったが、チベット人たちはすぐに新しい手段を開拓して地域内外の情報を得ている。セキュリティー上の理由でこの手段の詳細は明かさないとツェリン・ツォモ長官は語った。

「ネコとネズミの追いかけっこのようなものです。中国政府は外部から入ってくる情報を妨害し、チベット人たちは他の新しい手段を見つけ、それに対して中国政府がまた一斉取り締まりを行っているという状況です」


(翻訳:植林秀美)