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世界議員フォーラムthe World Parliamentary Forum  亡命チベット代表者議会議長声明

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(2004年1月20日 インド・ムンバイ
ペマ・ジュングネイ亡命チベット代表者議会議長)

議長閣下、世界各国の国会議員の皆様、まず、議長及び事務局に改めて、亡命チベット代表者議会からこの重要な会議に参加できるようご配慮いただいたことに感謝致します。亡命チベット大評議会の議員すべてと6百万のチベット人を代表し、この重要な会議において、チベット人の表現の自由や主張を支持されていらっしゃることに謝辞を述べたいと存じます。我々3名が亡命チベット代表者議会からこの会議への参加を申し出たわけですが、我々チベット人が、この会議の日程に不都合を生じさせたり、混乱させたりする意図は全くないことをこの場で申し上げます。

まず、我々の亡命チベット代表者議会についての簡単な説明をさせていただきます。我々の議会は、1960年に設立されたチベット難民社会における最高位の立法機関です。民主的に選ばれたこの議会は、(チベットへの)民主的行政機構を導入しようとするダライ・ラマ法王の努力の最も大きな成果のひとつです。議会は選挙により選ばれた46名で構成されます。チベットの伝統的な州であるウー・ツァン、カム、およびアムドからそれぞれ10名が選出され、また、チベット仏教の四大宗派とチベットの伝統宗教であるボン教からそれぞれ2名の議員が選出されます。さらに3名が欧米ヨーロッパより2名、北米より1名から選出され、加えて、芸術、科学、文学の分野や社会奉仕で功績のある3名の議員が、ダライ・ラマ法王により直接任命されます。

チベット亡命政権の対中国政策における、チベット・中国間の問題とチベットでの重大な問題への継続的な解決策については、我々は一貫してダライ・ラマ法王の「五項目和平プラン」と「ストラスブール提案」を支持するものであります。

1994年にダライ・ラマ法王は、チベット問題の将来に向けた解決策についての国民投票を提案されました。しかし、チベット人は、ダライ・ラマ法王の指導力に全面の支持を表明し、また今後の世界的な政治状況を考慮し、国民投票の未実施と今後のチベット問題解決策をダライ・ラマ法王に一任することを取り決めました。圧倒的なチベット人の熱望に基づき、亡命チベット代表者議会は満場一致で、ダライ・ラマ法王へ全権を委任することを可決しました。

チベット人と亡命チベット代表者議会の決定を受けて、ダライ・ラマ法王は、1998年3月10日の声明において次のように述べました。
「私はチベット人の絶大な信頼に対して感謝します。これからも、私の唱える『中道アプローチ』が、チベット問題を平和的に解決する最も現実的で実行可能な方法であると信じています。このアプローチは、中華人民共和国の協調と安定を維持しつつ、チベット人の死活問題に対応するものです。従って、私は中国指導部との接触を確立するために最大の努力をし、また私のすべての責任においてこの方法を追求するものです」

中道アプローチは、現在も引き続き行われています。

このように、チベット亡命政権の中華人民共和国への姿勢は明確であると考えます。これにより、我々は中国との平和的な相互利益をもつ和解策を模索することを決定しました。また、中国首脳陣との交渉窓口を得た現在、我々の活動は、主張、圧力、ロビー活動に重点を置き、すべての非暴力的手段によって交渉を促進するべきであると信じています。

我々に残された時間は多くありません。チベットの文化、宗教、言語は言うまでもなく、チベット人自身のアイデンティティが危機に瀕しています。直ちに解決策が見つからない限り、次の10年間でチベット人は、アメリカンインディアンやオーストラリアのアボリジニがたどった道を歩むことになります。チベットは世界平和と協調に多くの貢献できるものをもっているにもかかわらず、そのような道をたどることは非常に残念です。

2002年と2003年に中国政府は、ダライ・ラマ法王の特使が中国とチベットを訪問することを受け入れました。中国政府の前向きな態度と直接交渉の再開は、歓迎すべき前進です。チベット代表団のダラムサラへの帰還後の報告では、北京での交渉が、友好的な雰囲気の中で広範囲にわたるチベット問題についての意見交換がなされたことが伝えられました。ダライ・ラマ法王は、代表団の報告を歓迎し、現在の交渉を継続し、チベット問題に関する誠実で現実的な交渉とするように指示されました。将来のチベットの政治的立場について、両サイドが現在の交渉を実質的な意見交換の場の必要が差し迫っています。今度は中国政府がチベット問題を平和的な交渉による解決に前向きであるという、真剣さと誠意をあらわすべきであると信じています。

また、我々は、チベットの現状に対する国際的な関心が、中国政府を実質的な交渉に向かわせると信じています。チベット亡命政権は、対話の助けとなる環境を作るためにあらゆる方法を取っています。我々の要望を理解するには多くの時間が必要ないと感じています。我々は、歴史的な権利である完全独立から、完全な自治に要求を引き下げました。また、最も重要な提案は、チベットを人類と自然が調和して共存できる「アヒンサー(非暴力)地帯」とすることです。チベットは、完全に非軍事化され、世界平和の追求を学ぶ場所にされるべきです。中国はチベットの中華化を停止すべきです。今度は中国が我々の善なる意志に応える時です。なぜならば、我々は中国からの分離独立を求めていないからです。

中国が「引き延ばし戦術」により国際的な批判をかわそうすることが懸念されています。もしそうであれば、それは中国の未来にとって好ましくない予兆となることでしょう。いつか、中国政府の歴史的な誤りであることが証明されるはずです。

中国政府によるチベット人の基本的人権の侵害、特に言論の自由と宗教の自由は、我々の大きな懸念事項です。しかし、その他に2つの分野においても我々の懸念が存在します。

ひとつは、北京政府の西部中国開発計画であり、もうひとつは現在建設中であるラサ及び中央チベットへの鉄道です。この鉄道は中国の広大な鉄道網とチベットを結ぶことになります。これらの計画が完成した時、チベット高原への過剰な中国人移民が促進され、このような事態は、チベットが独自の文化遺産と民族意識を保つ能力をより蝕むこととなるでしょう。

西部中国開発計画の目的は、チベットの膨大な天然資源の搾取を促進する社会基盤を構築することであり、また数百万の中国人失業者のチベット人居住地への入植を促進することです。この政策は、急増する中国沿岸部や内陸部の大都市での失業者対策となり、また中国人入植者を送り込むことで、辺境(?)地域の統合と北京政府からの管理を強固なものとします。

ここで私は、チベット問題は、単に亡命チベット人が母国に戻るかどうかという問題ではないと言及したいと思います。我々がチベット問題に取り組む理由は、中国がチベット人が直面している過酷な人権状況を改め、チベット人が納得できる状況に改善するためです。

最後に、あらためて主催者と、我々がこの重要な会議に参加することを支援していただいた参加者の皆さんに感謝いたします。また、参加者のみなさんに我々の取り組みへの支援を呼びかけたいと思います。
この会議が、世界平和、正義と民主主義の価値が実現するよりよい世界。つまり、非暴力的手段が、世界的な紛争を解決する最終的な手段となる世界。「チベットを平和と非暴力の地域」とすることを支持する世界。このような世界を築くための国会議員のネットワークが創造されることを心から期待いたします。

ご静聴ありがとうございました。