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ヨーロッパ、米国、カナダ、チベット問題を国際連合人権理事会に提起

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(2012年6月29日 CTA

6月28日 ジュネーブ

欧州連合(EU)および、米国、チェコ共和国、フランス、スイス、スウェーデン、カナダ、ベルギーの7カ国の7カ国は、中国の人権侵害、とくにチベットをめぐるものについて、ジュネーブでの国連人権理事会の会合で昨日、討議した。

欧州連合を代表するデンマークの代表は次のように語った。「少数派に属する人々の人権については、チベットとチベット人居住地域、とくに四川省での状況悪化を懸念している。ラサをはじめとする地域の焼身自殺の増加を受けた大量逮捕と拘置のニュースとチベット自治区への外国人の立ち入りが禁止されているとの報告に欧州委員会は深い懸念を抱いている。EUは中国当局に、民族的・宗教的な少数派、とくにチベット人とウィグル人の人権が守られるべきであり、表現、集会、宗教・信仰の自由、そして自らの文化を享受し、その言語を使用する権利が尊重されるべきである」

米国大使は、中国による逮捕、有罪判決、国家による強制失踪、超法規的拘置、インターネットの統制強化、人権弁護士迫害、活動家の家族への恫喝、市民社会発展の妨害、宗教的自由の制限によって、中国は異端者に沈黙を強いているほか、中国政府の政策はチベット人とウィグル人の言語的、宗教的、文化的伝統を破壊していると述べた。

ベルギー代表は、中国政府に強制失踪と恣意的逮捕を止め、失踪した全ての人々の安否を明らかにするよう要請した。デモ運動が弾圧され、僧侶の焼身自殺が示すように、文化的・宗教的権利が完全に享受されていないチベット人居住地域の状況について、ベルギーは深い懸念を示した。

スウェーデン代表は、法による支配と表現の自由が後退していること、そして人権擁護家が当局から嫌がらせを受けていることに対して懸念をあらためて強調し、こうした懸念の原因となっているのが中国政府によるチベットとチベット人居住区に対する強硬策だとして、チベット人、ウィグル人をはじめとする少数民族の権利を十全に尊重することを中国政府に要請した。

カナダ代表は、「われわれは世界中の宗教の自由に関する問題、そして、とりわけ中国国内のチベット人居住地区での宗教実践を制限する政策に懸念を覚えている」と述べた。

チェコ代表は、「チベット人居住地区で続く緊張に関連して、外交官とジャーナリストによる独立監視団の全地域への自由な出入りの許可を中国政府に要請する」、と述べた。

また、会議に参加したフランス代表もまた、チベットの焼身自殺に大きな懸念を感じていると述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの代表は次のように述べた。「2012年5月27日にラサのジョカン寺境内で実行されたチベット人2名の焼身行為以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチは集会と結社の自由にさらなる制限が加えられたことを観測してきた。ラサの治安部隊は市内街頭での身元確認を急速に強化している。最近、いくつかの抵抗運動が起きた地域のチベット東部出身のチベット人は、ラサからだけではなく、チベット自治区からの退去を求められている。退去の対象者に対して、どのような不正行為のせいで退去が命じられたのかは明らかではなく、これまでのところ、退去を命じられた非チベット人はいない。さらにラサの当局は、市内で3名以上による集会の開催を禁じている」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはチベット人の人権を徐々に否定していくことで、同地域の緊張はさらに高まり、中国政府による集会の自由に対する制限はさらに厳格化するだろうとしてこれを懸念している。

国連人権理事会の午前中のセッションでは、ンガワン・C・ダクマギャポン氏が4つのNGOを代表して共同声明を発表した。その中で同氏は、「本日、チベット人は全面的な人権侵害の犠牲となり続けているのみならず、中国当局の政策により、言語、文化表現、宗教、チベット人遊牧民としての生活様式などの面で、一個の民族として存続が危機に晒されている」と述べた。

同氏は理事会に対し、父祖の地からのチベット人遊牧民の強制退去は、長年にわたりチベット高原で決定的に重要な役割を果たしてきたチベット独自の生活様式を根絶するものだという点を検討するよう促した。

国連人権理事会でのテンジン・サンペル氏

午後のセッションでは、「脅威にさらされた民族のための協会」のテンジン・サンペル・カイタ氏が、人権理事会は2008年3月以降、中国のチベット人居住区で起きていた人権の危機に十分な関心を寄せてこなかったと述べた。

また、彼はまた、「中国共産党の実務チームは僧院や尼僧院に常駐し、『愛国再教育』を実施して、通常の宗教的な会話が行われないようにしている。僧侶や尼僧は自らの精神的指導者のダライ・ラマを糾弾するよう強いられ、それに従わない者は逮捕、追放の懲罰の対象となりかねない」と述べた。

2012年3月、チベット自治区のナクチュ地区ディル郡の22の僧院のうち20近くが、僧侶が精神的指導者ダライ・ラマの糾弾を拒んだとして、他の僧院とともに閉鎖を余儀なくされた。

中国憲法第4条および1984年に施行された民族区域自治法は『自らが話し、書く言語の使用および普及..』の自由をすべての民族に保障している。

中国が弾圧しているのは僧院だけではない。

在インドの「人権と民主主義のためのチベット・センター」によれば、2012年4月2日、カルゼ郡の中国当局は、地元の人々が創設されたチベット語とチベット文化についての授業を行うチベット人学校を強制閉鎖した。ニェンダク学校長と教師のヤマ・ツェリンの安否は分かっていない。

カイタ氏は、「チベット高原は人間の焔で包まれている。これまで41人のチベット人が『自由』と『チベット人の精神的指導者ダライ・ラマの帰還』のため焼身自殺を図り、そのうち31人が死亡した。悲しむべきことに中国当局の反応は、彼らの心の奥底からの不満に耳を傾けるどころか、それを乱暴に弾圧するというものだった」、と述べた。

カイタ氏は、国連の第三者的立場の専門家を現地調査に派遣し、また人権担当高等弁務官が事実調査のためチベットで十分な時間を過ごせるよう中国政府に要請することを理事会に促した。

この人権理事会は現在も続いており、多くの政府とNGOの代表が、中国共産党体制によるチベット民族の基本的人権の否定に大きな懸念を表明し、同時に中国政府にチベット人とウィグル人の権利を尊重するよう促し、不穏な情勢が続くチベット全域に自由な立ち入りを許すよう要請している。

会合は7月6日まで続き、人種差別をはじめとする課題が取り上げられる見込み。


(翻訳:吉田明子)