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ブラックヒルズ州立大学の物理学教授、僧侶に科学を教える

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(2007年3月22日 ラピッドシティー・ジャーナル誌 メリー・ギャリガン)

ブラックヒルズ州立大学教授アンディー・ジョンソンは、インドの僧院で行なわれた科学ワークショップにおいて仏教僧のグループに科学を教授することとなった。彼らに科学を教え、彼らと協働することを通して、教授自身にも精神的に得るものがあった

物理学の教育者であるジョンソン教授は、科学の教え方の改善に情熱を傾けている。それが理由で教授は、先月インドの仏教寺院においてエンジ色の袈裟をまとった50人の僧侶に「磁気」に関する講義を行うこととなった。

『僧侶のための科学プログラム』は、亡命中のチベットの精神的指導者、ダライ・ラマ法王の要請で始められた。このプログラムは、東洋の僻地の僧院で暮らす僧侶達が西洋の科学的思考法に触れる機会となっている。2004年以来、ジョンソン教授はブラックヒルズ州立大学の休暇をこのインドで開かれる『僧侶のための科学プログラム』にあてている。

教授は、「ダライ・ラマ法王は、「チベット仏教は西洋科学から多くの価値あることを学べる」また「西洋世界はチベット仏教から多くを得ることができる」という対になる考えに基づいてこのワークショップを始めた」と言う。

このプログラムの中で僧侶達は、世界最先端の科学者の講義を聞くだけでなく、ジョンソン教授のような教育者とともに実験主体のワークショップ型授業に参加し、「科学における大問題」について実験を通して自分達の仮説を立てることも行った。

驚くことに、彼らの立てた仮説はどれも教科書に書かれている科学の解説に近いものであったとジョンソン教授は言う。

仏教徒の心の発達と科学的思考とには著しい類似点があるとジョンソン教授は気づいている。瞑想する僧侶達は心の内的世界を探索し、科学者は自身を取り巻く外的世界を探索する。しかしながら、両者の方法論は多くの点で共通している。

仏教を修習には、科学を研究する際と似たような分析が必要となるが、仏教の修習では外界の物質ではなく内面の心に焦点をあてた分析をする、とジョンソン教授は言う。西洋の宗教は「信仰」や「決して知りえない何かを信じなければならない」といった考え方に基づいているが、仏教はこうした宗教とは根本から異なっている。

「信じる前に確かめよ」と説いた仏陀は、精神的な指導者というよりも科学者に近かったのではないか、とジョンソン教授は言う。

大切なのはあなた自身で試してみること、もしそれが上手くいかなければ別のことを試してみることです、とも教授は言う。

ジョンソン教授自身は仏教徒でもなければ瞑想の実践をしているわけでもない。とはいえ、医学的調査の結果瞑想には何らかの恩恵があることがわかっているので自分でも瞑想の訓練を始めるかもしれないと述べている。
「瞑想はとても有益なようですから、私自身も瞑想を学ぼうかと考えはじめています。なにせ、瞑想をするだけで幸せになれると証明されているのですから。」

また教授は、瞑想中の僧侶をMRIで測定する研究プロジェクトについても語った。スキャン画像には、僧侶の脳の喜びを司る部分が、他に例が無いほど明るく反応していることを示した。

3年にわたって東洋の宗教的思想に接してきた教授は、この思想が西洋文化への精神的な教えとなりうることに気づき始めた。

「西洋世界は幸福について、いささかおかしな考え方をします。僧侶たちは、科学についてはあまり知識がないかもしれないが、現実のあり方や人間同士の係わり合いについては非常に洗練された深い理解がある。私は、仏教徒がいかに物質的な豊かさよりも精神的な発展を強調するのかについて理解し始めています。この理解がここ米国においても私達を大いに助けてくれるに違いありません。仏教には、今の世界が渇望している『智慧』があるのです。」

「十分な食料と快適な住まいは、幸せの重要な要素ですが、最新のビデオゲームは幸せの要素ではありません。私たちは、幸せというものを、便利な乗り物や豪華な住宅の中に探し求めているに過ぎないのではないでしょうか。」

さらに教授は、英語すら話せない僧侶たちに科学の概念を教えることにも挑戦している。教授が教えた僧侶の約1/3がわずかな英語を話すことができたが、授業は通訳を介して行われた。

『数学と科学教育発展のためのセンター(the Center for the Advancement of Math and Science Education)』の副所長として、ジョンソン教授はサウスダゴダや世界における数学・科学教育改善という使命を負っている。

教授自身物理学の博士号を持つが、科学の分野にエリート主義の文化があることや、よい教師であるために何をすべきかなど一度も学んだことがない科学者があふれている状況について謝罪する。
「普通の人が科学を理解することは、まったくもって可能なことです。また、人々が理解すべきである科学の大理論というものもあるのです。」

ジョンソン教授は、大学の物理学の授業で新たな教授法を試みているが、それらの試みは仏教僧に対してと同様に、効果を上げているという。

僧院では、子どものうちに入門してくる多くの僧侶を教育しているが、科学についは十分な教育が施されていない。数人の僧侶は僧院の博士号にあたる学位をもっており、ほとんどの僧侶が西洋科学の基礎程度の理解はある。

今年、ジョンソン教授は、釘・磁石・金属などを使用する小学校の通常授業を使って物質の磁気特性について教授した。昨年は色の足し引きについての授業をした。あとになって、仏教僧にとって色に関する議論は問答の重要なトピックであることがわかった。
視覚(ビジョン)や色彩知覚というものは、まさに内的世界と外的世界の接点であることから、僧侶達は、それについての科学的見解の核心に迫ることに深い関心を示したのである。

大多数の一般学生に比べ、僧侶達は色に関する授業に強い興味を示したという。仏教の授業と同じ程度の興味を示したのではないかと思われる。