ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

ハワード首相に求める、指導者ダライ・ラマとの対話

Print Friendly, PDF & Email

2002年5月21日 ジ・エイジ−メルボルン

ダライ・ラマは世界的に名立たる一宗教の優れた一派の指導者である(偶然にも、この宗教が現在のオーストラリアで2番目に急成長している宗教である)。同時に、政治的指導者としての立場にある彼は、彼を非難する人々に対しても非友好的な発言をすることを好まない、たぐいまれな人物である。

しかし、その彼がオーストラリアを訪問することに関しては、毎回、この国の首相が苦境に立たされることとなる。40年前に中国が残忍な行為を行いチベットを占領して以来、中国政府は、結果的には様々であったが、ダライ・ラマはチベットの精神的指導者および現世の指導者の立場にあるとの認識を諸外国にもたせないよう尽力してきた。

今回の4度目のオーストラリア訪問に関してもこの例外ではない。中国政府はこの国の有力な政治家に彼と会談を行わないよう働きかけたため、今現在、ジョン・ハワード首相や野党党首のサイモン・クリーン氏との対談は予定されていない。

89年度のノーベル賞を受賞したダライ・ラマであるが、メルボルンでの会談には、州知事のスティーブ・ブラックス氏とクリーン氏の代理官ジェニー・マックリン氏が予定されてはいるものの、市長のジョン・ソー氏とは会談できない状況にあることは間違いない。

先のオーストラリア訪問でポール・キーティング前首相が、昨年は米国のジョージ・ブッシュ大統領が彼との対話を実現しており、ハワード首相自身も96年に果たしている。しかし今回は、彼の訪問日程とほとんど日を同じくして、首相の中国訪問が予定され、クリーン市長もこの期間は海外に滞在している。

とはいえ、彼の滞在中に両者の帰国が予定されているため、礼儀として、話合いの場は設けるべきであろう。たとえ、政治的指導者というよりむしろ、精神的指導者としてのダライ・ラマの立場が明らかに優遇されているとしてもだ。

中国は、オーストラリアにとっては貿易的に政策的にも重要な位置を占めたことがない国だが、それ故に、チベット統治が西欧諸国から公然と非難されれば、将来的にチベットへの抑圧の度を高める危険性が生じることを忘れてはならない。

現在のところ、世界主要国としての地位回復にやっきだが、本国やチベットでの人権侵害行為を止めない限り、中国が切望する諸外国からの敬意を受けることはないであろう。チベットで非暴力による抗議を行っている人々が中国当局から容赦ない抑圧を受けていることが、人権擁護団体などから詳細にわたり報告されており、世界の多くの国が自国の独立を渇望するチベット人に同情を寄せている事実を中国は察するべきだ。

オーストラリアが中国によるチベット支配を長い間容認してきたのは、統治に対する批判があってはならないとかチベット人のこれ以上の自治権獲得を支持すべきではないということを意味するものではない。

実のところ、近年のダライ・ラマは、チベット仏教伝承の権利を条件に、中国国内にチベット自治権の範囲を定めるとの和解案に対し、快諾の意思を伝えている。しかし劣悪な道徳的権限についてはなんら触れていない。かりに、オーストラリアの政治家に冷遇されれば、ダライ・ラマが結果として中国に屈服し、この訪問国に存在する何千ものチベット仏教の信者たちに深刻な苦難を強いることとなるだろう。