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トゥルク・テンジン・デレク関連 危機にさらされているチベット人囚人たちの健康状態

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(2003年5月13日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)

5月13日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、健康状態がとみに悪化しているチベット人囚人2名を中国政府は即刻釈放すべきだ、との勧告を出した。ニューヨークに本部をもつこの人権監視団体は、中国政府が彼らの居場所、罪状、現在の健康状態について公表すべきであることをも訴えた。

2003年3月に発表されたHRWの『中国 テロ対策が人権問題に及ぼす影響』という背景説明によると、「ツェリン・トントゥプ氏は釈放されて久しくあるべきであり、また彼が生存のため必要とする治療を受けているべきだが、現在の彼の健康状態は拘置所の状態ならびに逮捕時に受けた拷問によるものと危惧される理由がある」と記されている。

2名の囚人とはツェリン・トントゥプと僧侶のタシ・プンツォクである。彼らが逮捕されたのは1年以上前であるが、それは地元で高名な僧侶であったトゥルク・テンジン・デレクが、「分離主義の扇動」並びに彼が関与したとされる四川省での一連の爆破事件の罪によって、執行猶予2年付の死刑判決を受けた事件に関連してのもの。同じ罪状に問われたもうひとりのの人物、ロプサン・トントゥプは2003年1月に死刑が執行されている。しかし彼らがそれらの事件に関与したという証拠は一般に明らかにされていない。

拘留されて以来ツェリンの健康状態は極めて悪化し、5年から7年の間と信じられている刑期をまっとうできないのではないか、との懸念がもたれている。彼は重度の視力障害と脚部の自由を失ったといわれている。ツェリンは現在70歳前後で、拘留された当時の健康状態は良好であった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア部理事のブラッド・アダムス氏「ツェリン・トントゥプ氏は釈放されて久しくあるべきであり、また彼が生存のため必要とする治療を受けているべきだが、現在の彼の健康状態は拘置所の状態ならびに逮捕時に受けた拷問によるものと危惧される理由がある」

ツェリンが逮捕されたのは2002年5月初めのことであり、それはリタンの中国公安警察がトゥルク・テンジン・デレク建立のテクチュン・チャンチュプ・チューリン僧院に踏み込んでトゥルク・テンジン・デレクならびに彼に近い僧侶4人を逮捕した1ヵ月後のことである。現在彼がどのような罪に問われているかは不明だが、2000年に当局がトゥルク・テンジン・デレク拘束の用意をしていた当時、ツェリンはテンジン・デレク支援のために約2万の署名を集めて当局の出鼻を挫いたことが知られている。

ツェリンは現在のチベット人自治区で、当時ニャグチュカ郡のオトック村の村長であった。通常ならば判決後に刑務所へ移送されているべきだが、彼の収容先であった刑務所が彼の健康状態を理由に受け入れを拒否されたらしく、拘置所に収監されている。

懲役7年の判決を受けたとされるタシ・プンツォクの健康状態も危惧されている。逮捕された当時、彼は近郊のニュクチュカにある病院で結核の治療を受けていた。逮捕から2週間後、警察は彼を病院から直接拘置所へ送った。彼の現在の状態、判決の日時、刑、収容先についての情報は何も得られていない。

「もし逮捕前に病院での治療が必要なほど弱っていたとすれば、拘置状態で彼が必要な治療を受けているとは考えられない」と前述のアダムス氏は語る。

囚人を適切に扱わないことが中国全土に蔓延していることは中国政府当局も認めている。当局者による逮捕状況の隠蔽、外部との接触を認めない拘留、非公開審理、そして強制された自白にもとづく証拠の適用が、拷問や恣意的な裁判手続きのもととなっている。

カンゼでは、彼らの逮捕、裁判、もしくはロプサン・トントゥプの処刑についての情報を漏らした容疑で、少なくとも四人が地方当局者に逮捕されている。その他3人が、中国でチベット人自治実現を指す言葉である「分裂主義」を唱えた容疑で、1年の労働による再教育の刑に服した。

アダムス氏は「中国政府はもうチベット人活動家や人々の支持を集める宗教家への組織的な弾圧を止めなければならない。中国政府は全てのチベット人囚人達、彼らの刑罰、拘置先、そして健康状態について本当のことを明かすべきだ」と述べた。