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チベット鉄道は、中国政府の政治・経済のゴールを早めるだろう

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2001年7月23日
クンルン峠

たとえヒマラヤ山脈の絶景があなたの息を止めることがなくても、酸素の欠乏はそうすることだろう。ギザギザの雪をいただく高峰の間をぬって、チベットへ通じるクンルン峠の空気は、海抜4,340メートルの高さにある為、希薄である。

世界で最も高い所を通る鉄道を建設しようと、中央政府によって動員された鉄道建設部隊にとって、この目も眩む高度は彼らが直面する多くの問題のひとつでしかない。1,120キロメートルに及ぶ鉄路は50年にわたる中央政府の目標、すなわちチベットを経済的・政治的そして文化的に中国内部と結び付けようとする目標を一歩前進させることだろう。

先月その一部がスタートし、2007年に完成が予定されているこの鉄道建設は、格別困難な企てになるかもしれない。高緯度、急な坂、急激に下がる気温、ひゅうひゅうと唸り声をたてる風、そして季節によって1メートル以上も上下することのある土壌、これら全てが巨大な技術上の挑戦を仕掛けてくる事だろう。

こうした技術上の課題の上に、更に地域の脆弱な経済システムについての心配が存在する。というのは約束された保護手段が失敗すれば経済システムがひどく傷つけられることが懸念されるからだ。チベット人グループのある者は、この鉄道が、中国によるチベットの自然資源の収奪とチベット文化の破壊のペースを早めることになるだろうと、その建設に苦情を呈している。

ダライ・ラマが率いるインドの亡命チベット政権は、その鉄道が中国による支配を強化し、チベットを中国人の入植者で圧倒し、チベットの自然資源が中国へ流出するのを許すようになるという理由から、鉄道建設がチベットにとって壊滅的な結果をもたらすだろうと言っている。

その鉄道は、首都ラサからクンルン峠近くの青海省の都市ゴルムドへ通じる計画である。中国政府はそれにより現在中国の平均年収の半分程度である、貧しいチベットに繁栄がもたらされるだろうと言っている。

シベリア鉄道は深い凍土の上に建設され、アンデス、ロッキー山脈の中を走る鉄道は高い緯度の地に建設された。しかし、未だかつてどのような鉄道建設プロジェクトも、青海チベット鉄道が直面するような複合的困難を経験したことはないと、このプロジェクトの技術責任者の一人であるジャン・シィウリは言う。

ある地点では海抜4,545メートルを超える高い標高を通る為、少ない酸素でも働くことの出来る特別なエンジンが必要となり、また乗客を高山病から守る為の空気圧縮車室を用意する必要も、もちろんある。

ある区間は、列車が登攀する最も急峻な坂道を含み、またある区間は冬になると地面が膨らみ、夏になると沈む土地の上を通ることになると、ジャン氏は語った。ある地点では、1年の内170日以上も強風に打ち据えられ、また他の地点は地滑りや地震の起きやすい場所である。このプロジェクトでは286箇所の橋と、その内の1つは1.5kmの長さになる10本のトンネルの建設が計画されている。約5万人の技術者と労働者が参加すると考えられており、その多くは酸素の欠乏による体力の低下と、健康上のトラブルの為に、1日に数時間しか働けないと予想される。鉄道が営業開始すると1日1方向当り8本の列車が運行する計画である。

「チベットはその独特な文化と景観の故に全ての人にとって夢の国だ」とチベット人の共産党議長レクチョクは新華社へ語った。「地域の人達は観光業から大きな経済的利益が得られると期待している」

中国政府の観点から言えば、最大の利益はチベットの木材と鉱物資源の入手が容易になることと、未だに反抗的なチベット人グループを軍事的に制圧するのが容易になる点であるかもしれない。

チベットへ流入する物、また逆にチベットから流出する物品の殆どは、現在ラサ・ゴルムド間の起伏の多い2車線高速道路を行き来するトラックで搬送されている。それは車のなかで眠り、世界で最も危険の多い高速道路の1つを無事走り抜けることに男らしい誇りを感ずる運転手達にとっても、デコボコ道を辛抱する往復6日を要する旅である。

「我々は苦に絶えられる」(”We can eat bitter”)とは困難を辛抱するという意味の中国語だが、この標語がゴルムドから西に2時間行った所にある、トラック運転手達が使うガソリンスタンドの前に広げられた大きな旗に誇らしげに書かれている。

ゴルムドは土地の広さという点では世界最大の市である。20万人の住民は8万平方キロの領域に散らばって暮らしている。この辺境の町は、今でも既にチベットへ行く製品や原料、豆から電池に至るあらゆる物品の約90%の通過点となっている。

この鉄道は、中国西部の開発を支援する為に計画された他の全てのプロジェクトと並んで、世の中を良くするばかりだとシア・ジィアシアン副市長は言った。「ゴルムドは既に新しい外観を得つつある。あなたはきっと変化を感じ取れる事でしょう。」

河南省出身の57歳の農民ヤン・チイはゴルムドの外側にあるテントで生活し、鉄道の為の排水溝を掘っている。彼は月に75米ドル(580香港ドル)稼ぐ。これは故郷での収入の倍に当たるので不満はない。

高い標高地で重労働に従事する労働者の健康についての心配を別にしても、鉄道の環境への影響についての恐れがある。プロジェクト・デイレクターのジャオ・シユイはその地方の繊細な植物や野生動物を守るために広汎な努力がなされるであろうと言う。彼は凍土を安定化するために新技術が使われ、チベットカモシカを含む移住性の動物種が線路の下を通過出来るよう、ある場所では線路は上方を通るようになるだろう。「我々はこうした問題を克服できるという自信をもっている。我々はこのプロジェクトを守り抜くという目的の為だけであっても環境に配慮することになるだろう」と彼は語った。