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チベット民族平和蜂起59周年記念日におけるロブサン・センゲ主席大臣の声明

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2018年3月10日

59年前の本日、チベットの首都ラサで、ダライ・ラマ法王の夏の離宮ノブリンカの周りに何千人ものチベット人が一つに手を結び、ダライ・ラマ法王と祖国チベットを守るために人間の鎖となりました。あらゆる地位のチベット人が、揺るぎないチベットの精神により団結し、中華人民共和国による暴力的で違法な占拠に対し、力を合わせ、平和的な、歴史に残る抗議運動を行いました。中国軍はこの平和的な抗議運動に容赦なく武力を行使し、何千人ものチベット人の命を奪いました。

私たちは、チベット民族平和蜂起59周年記念日の本日ここに、チベットの自由のために犠牲になったすべてのチベット人と同じ精神のもとに集い、哀悼し、敬意を捧げます。

チベット本土では、チベット人に対する抑圧が続き、さらに悪化していますが、チベット人は中国政府のそうした政策に対し、確固たる信念で抗議の声を挙げてきました。抗議運動は過去50年にわたって展開され、特に1987年、1988年、1989年、2008年が、その規模の大きい年でした。

2008年にチベット人が、長きにわたる中国のチベットの占拠に対して、自由を求めて合法的な抗議を行いました。今年はそのチベット民族蜂起から10周年を迎える年でもあります。最近の報告からみるとチベット国内で、特に首都ラサを中心に大規模な軍隊の増強を行っております。

チベットの占拠以来、中国政府はチベット人に対し、絶えず抑圧的な政策を課してきました。2016年と2017年のフリーダムハウスのレポートは、最も自由がない国として、シリアに次いで二位にチベットを挙げています。その後には北朝鮮、南スーダン、エリトリアが続きます。国境のない記者団もまた、チベットは北朝鮮よりアクセスが難しいと表明しています。

中国政府の厳しい政策により、2009年以来、チベットの3自治区で若者、年配者、僧侶、尼僧、遊牧民、農民あわせて152人のチベット人が、チベット人の自由とダライ・ラマ法王のご帰国を求めて焼身抗議を行いました。こうした抗議活動は、チベット人の政治、宗教、文化、環境の権利が侵害された結果として起こったものです。つい3日前にもチベットのアムドアバ地域でツェコ・トゥクチャク(40才)が焼身抗議を行っており、これはチベット国内にいるチベット人の願望を反映しております。

中国政府は先月から、改訂された『宗教に関する規則』と呼ばれるものを施行していますが、これはチベットの全体的な宗教の自由をコントロールするためのものです。

ヒューマンライツ・ウォッチは先ごろ、ラルン・ガル僧院の運営管理者として共産党員や無宗教者あわせて約200人が起用されたことを報告しています。2016年以降、チベット最大の仏教僧院であるラルン・ガルは破壊され、僧侶や尼僧は半数に減少しました。チベット本土で最大の尼僧院ヤチェン・ガルも破壊され、私たちがこうして話している間にも尼僧たちは立ち退きを強要されています。

つい最近の2月17日に発生した、チベットで最も神聖とされユネスコの世界遺産にも登録されたジョカン寺の火災は、チベット人だけではなく、世界中のチベット仏教徒にとって甚大な損失でした。火災により、貴重な像が数十体、工芸品やタンカ数百点、壁画などを焼失し、大きな被害状況が報告されました。ジョカン寺は現在も閉鎖されています。古代チベット文明の神聖な宝物が永久に失われてしまいました。しかしさらに、2週間が経過しても、中国政府が火災の原因や被害状況は明確にしていないため、多くの疑問の声があがっています。

そのため、私はユネスコに対し、国際連合の職員や報道記者を現場に派遣してこの件の調査をしていただくことと、チベット本土に報道記者を派遣して、独自の調査を行っていただくことを求めます。

チベット自治区公安局が最近発表した『地下組織による犯罪と違法行為の報告』では、チベットにおいて抑圧が継続し、状況は悪化していることがわかります。この報告書では中国政府がチベット人に報告を求める22件の違法行為を挙げていますが、そのうち3件はダライ・ラマ法王に直接的に言及しています。その具体的な例では、一般のチベット人に「ダライ・ラマの分離主義勢力に関係する犯罪集団」の活動に関する情報を提供することを求めています。

この報告書は、チベット人の心情と文化を理解していないことが明白です。チベット本土のチベット人は、心の底からダライ・ラマ法王を尊敬しています。

チベット人のダライ・ラマ法王への信頼を、犯罪として扱おうとすれば、それはチベットの不安定な情勢の根源となるでしょう。中国はよく「民族の調和」を掲げますが、このような厳しい政策では、中国が調和を達成することはありません。

また、ダライ・ラマ法王とチベット本土の仏教のつながりを断とうとする政策も、チベット人の反発の理由です。仏教を信仰してもよいが、ダライ・ラマ法王を崇めてはならないというのは、カトリック教徒になってもよいが、ローマ法王を崇めてはならないというのと同じことです。チベット仏教徒とチベット民族の根幹に対する根本的な誤解があるのです。私たちにとって、チベットと聖観音は一体のものであり、ダライ・ラマ法王とチベット人は切り離せるものではありません。分離させようとすれば、チベット人の心は傷つき、チベットの精神の根幹が侵されるのです。

チベットの言語や文化の保護や、中道のアプローチの提唱を、「反動的かつ民族主義的思考」と呼ぶこの報告書に対し、私たちは強い抗議の意を表します。チベット語は中国の憲法第4条のもとで保護されており、むしろ推奨されています。同様に、中道のアプローチはチベットと中国の双方の人々にとってウィンウィンの提案なのです。

私たちは、断固として、中道のアプローチを通してチベット問題を平和的に解決していきます。習近平国家主席の2期目の就任時、私は、ダライ・ラマ法王の使節団と中国政府の代表団の対話を通してチベット問題を平和的に解決するよう、強く求めました。

ダライ・ラマ法王がいつもご助言くださるように最善を望みながら最悪に備え、中央チベット政権内閣は、その中道政策に基づき、チベット人のための真の自治の実現を目指して5/50(ファイブ・フィフティー)ビジョンを考案しました。このビジョンは同時に、50年にわたって、必要であればそれ以上、チベット人の自由を求める運動を強化し維持していくものです。

中国の経済は目覚ましい勢いで成長、発展を続けていますが、それによるチベットの発展はありません。チベットは依然として最貧困地域のひとつであり、近年チベットに押し寄せた漢民族がチベットの富を享受しています。

チベット本土では、同等の学歴と経験を有していても、チベット自治区の土地と人間を厳しくコントロールする最高のポストである区委書記や権力のある役職に就くのは中国人です。より小さい、県や町のレベルであっても、チベット人は書記などの役職は与えられることはなく、資格が劣っても中国人の漢民族の者が地位を与えられます。

チベット本土のチベット人から届いた書簡に、2012年にロカ市のゴンカル空港が建設されてから5年間のロカ市の様子が書かれていました。5年もたたないうちに、ロカ市には2万5千人を超える中国人が移住し、地元のビジネスやチベット人の就職先をほぼすべて奪われてしまったというのです。ロカ市にあるゴンカー地区のような小さな都市がそうであれば、ツェタン、シガツェ、チャムドなどの市がどうなっているのか、想像もできません。

「中国政府はチベットの発展と投資についてよく言及するが、チベット本土とチベット自治区74地区の中国人移住者に関する資料は全く公開しません」と手紙には書かれてありました。このような移住により中国人がチベット人より人数で勝ることが、その地域で起こる反発と不安定な情勢の根源なのです。さらに、50年以上にわたって、中国はチベットを中国の一地方にしてチベット人を中国人にする政策をとる一環として、チベット語で古代から呼ばれている山や河川、土地の名前を中国語に改称してきました。看板などは中国語表記が義務付けられ、チベット人は中国人と結婚して中国名を名乗ることまで奨励されています。

このような悪意に満ちた計画が成功することはありませんし、チベットの精神は必ず勝利します。中国の占領、支配から何十年もの時が経過しましたが、チベット人は耐え続け、チベット問題は世界中に認知され、支援をいただくようになりました。そしてこれは、他でもない、ダライ・ラマ法王の甚大なるご尽力と、チベット本土に暮らすチベット人の揺るぎない精神、亡命したチベット人の不断の努力の賜物なのです。

ダライ・ラマ法王は、チベットの民族意識を維持しながら現代教育を行う「一羽の鳥の2枚の翼」という方針に基づいて、教育を勧められてきました。チベットの内外ともに、チベット人は、現代社会での基盤を強化する一方で、チベット問題に取り組み、チベット人としてのアイデンティティに誇りを持ち、チベットの伝統的な価値観とつながり、守っていっていただきたいと思います。若いチベット人の勇気と信念は、その上の世代のチベット人と同じほど強くなければなりません。

団結と精神力はこれまで常にチベット人の強さと誇りの源でした。ところが亡命したチベット人たちの生活環境がそれぞれに多様化していくため、チベットの自由を求める団結した運動に大きな溝が生じ、チベット民族全体のためだけに運動を続けてきたチベット人たちを失望させ、意志を弱めてしまいます。そのようなチベット人みずからの問題への無関心のために団結を崩してはなりません。そのため私は亡命チベット人たちに強く訴えます。本土のチベット人とのギャップを超え、団結を復活させましょう。それが、かつても今も、未来も、私たちチベット人の強さなのですから。

この場をお借りして、今も刑務所に服役中のチベット語提唱者タシ・ワンチュク氏に世界中で高レベルのご支援をいただきましたことに対し、厚くお礼申し上げます。欧州議会ではチベット問題への緊急動議を採択してくださいました。ラトビア国会ではワンチュク氏の釈放を求めて共同声明を発表してくださいました。ドイツの国会議員、フランスの上院議員の方々も同様に、中国政府にワンチュク氏の公平な裁判を求めて声明を発表してくださいました。先週開催された第37回国連人権理事会において、タシ・ワンチュク氏に関する懸念を表明してくださった欧州連合人権特別代表部にも深い感謝の意を表します。

また、カナダの外務大臣には、中国に対し、国連人権高等弁務官と宗教の自由に関する特別報告者に、20年以上にわたり行方不明となっているチベットのパンチェン・ラマに面会させるよう、呼びかけてくださったことにも感謝いたします。

ダライ・ラマ法王が先導されるチベット人の自由と平和を求める非暴力の運動は、世界中で支援を集めています。チベット問題の解決に向けてご支援下さる世界中の指導者の方々、諸国政府、国会議員の方々、NGO団体の方々、個々の支援者の方々に、衷心よりお礼申し上げます。チベットをサポートしてくださる各グループや、日本の国会議員90名が在籍される日本チベット国会議員連盟の皆さまにも、温かいご支援に対し、厚くお礼申し上げます。

私たちの亡命60年を記念して、インドをはじめとする、亡命チベット人を寛容に受け入れ、支え続けてくださる各国の皆さまに感謝の意を表します。中央チベット政権は今年をサンキュー・イヤーとし、一連の行事を開催してまいります。

最後に、ダライ・ラマ法王の末永いご長寿と、チベット本土のチベット人の皆さまのご健康を、心よりお祈り申し上げます。そしてチベット人たちが再び共に暮らせる日が一日も早く訪れますよう願っております。

中央チベット政権主席大臣(シキョン)
2018年3月10日

(翻訳:植林秀美)