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チベット人僧院長、辞任を強制される

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(2007年5月31日 RFA)

[ワシントン] 中国占領下のチベットで、大仏教僧院の長がダライ・ラマを糾弾する文書への署名を拒み、強制的に辞任させられたという。僧院長本人と、ある地元役人がラジオ・フリー・アジア(RFA)に語った。

青海省ゴロクチベット族自治州ガデ県(中国名:甘徳県)ドゥンキャブ僧院の 70歳になる僧院長、ケンポ・ツァノルは、RFAチベット部局に対し、「私は声高に署名を拒否し、命を懸けても、投獄されようとも、法廷で死ぬことになっても署名はしないと宣言した」と語った。ツァノル氏は5月中旬、正式に辞任したという。

「私は中国政府の作成した文書に目を通した。そこには、ダライ・ラマは徹底的に批判されるべきであり、その分離主義的態度は糾弾されるべきである、と書かれていた。私には署名する気は全くなかった。署名しなければ誰であれ、中国の法廷で裁かれねばならないことはよくわかっていた。」さらに政府は、宗教的・愛国的再教育キャンペーンの一貫として「文書にサインをしなければ僧院を閉鎖する、と脅しさえした」という。

「数名の政府役人が僧院を訪れ、僧院長辞任に同意するかどうかを尋ねた。私には受け入れる以外に選択肢の余地はなく、 これに同意した。」ツァノル氏は、亡命中のチベット指導者ダライ・ラマへの支持を押さえつけようとする役人達との強制的な会談について、「あのような苦痛に満ちた会議に出席するのは耐えがたかった」と語った。

この件に関して数回にわたり甘徳県宗務課にコメントを求めたが、いずれもコメントを拒否された。しかし、甘徳県のある役人が、匿名を条件に、ケンポ・ツァノルの件について語ったところによれば、中国当局は愛国的再教育キャンペーンを推進しており、 ドゥンキャブ僧院を中国に忠実な僧侶のみで構成される“模範僧院”にしようとしているという。

「噂では、ドゥンキャブの僧侶達が愛国的再教育キャンペーン文書の推薦を拒否したという。今年この問題が議論に上り、ツァノル氏の解任が決定されたのではないか」と役人は語る。「中国支配下の僧院はすべて、(政府の命令に従う)“模範僧院”に改変されなければならないというのは周知の事だ。詳しくは知らないが、政府の見通しでは、多数の僧院が審査され、政府に服従することになるはずだ。」

ドゥンキャブ僧院は甘徳県の中心地から20キロメートルほどの場所にあり、1837年、高名な仏教指導者キャブジェ・ ワンチェン・ケンラブ・ドルジェによって建立された。現地の情報によれば、現在中国政府によって採用された130人の僧侶に加え、200人以上の僧侶が暮らしているという。

1959年、中国支配に対するチベット人蜂起の失敗の後、ダライ・ラマはチベットから脱出。中国側は、ダライ・ラマはチベットの未来になんの役割も果たさないと表明した。1951年に中国人民解放軍がチベットへ進駐。ダライ・ラマはチベットと仏教遺産への“文化的破壊”政策について、北京を非難した。

今年3月、甘粛省中心地の重要な大僧院であるラブラン僧院の僧侶達は、宗教的教育と修行が中国からの一層厳しい規制にさらされていると訴えた。ある僧侶によれば、中国の法律では信教と実践の自由が認めているにもかかわらず、中国当局はラブランの僧侶達に、亡命中のチベットの精神的指導者ダライ・ラマを非難する宣言を出すよう強要しているという。

米国国務省が2006年に発行したばかりの世界の人権に関する報告書によると、「中国政府役人は、国内のチベット人居住地域におけるチベット独立運動とチベット仏教僧院とを密接な関連があると考えている」という。また、「この年のチベット人居住地域に対する弾圧は依然として厳しく、中国政府が宗教の自由を尊重したという実績は乏しいままである」としている。