ニュース

ニュース

最新ニュース

これから開催するイベント

チベットからの報告【2019年8月、文・写真:高木】

Print Friendly, PDF & Email

2019年8月
文・写真:高木

今年のお盆、8月9日から12日まで、4日間チベットを訪問しました。
もともと大学でチベットの歴史や文化を学んだ経験があり、いつかは行ってみたいと思っていた、念願のチベット訪問です。

当初、個人旅行で行きたいと思ったのですが、残念ながら外国人はツアーをアレンジしないとチベットの入境証が手に入らない為、飛行機は個人で手配し、チベット内のツアーは現地の旅行会社とメールでやり取りをして、手配を行いました。

以下にチベットを訪問して感じたことを書かせて頂きます。

さて、先ずラサ市内ですが、中国人の観光客が非常に多く、観光客の9割以上が中国人でした。外国人は自由旅行が出来ない点、および高額なツアー代金により、数が制限されていると感じました。

中国の観光客が増えたことにより、中国人のお店やサービスも増加し、ラサのチベット人は中国語が話せないと、暮らすのに苦労する状況の様に感じました。

早朝チベットの巡礼者が祈りながら通るバルコル地区は、夜にはきれいにライトアップされて、中国人観光客であふれ、まるでテーマパークのようでした。また、ポタラ宮の前では噴水のショーがあり、薬王山の上には眩しく光る電波塔が建っていて、ここも多くの中国人観光客で賑わっていました。

この状況から、中国政府は中国人のチベットへの観光を奨励している様に感じます。これら中国人観光客の影響で、ラサのチベット人も恩恵を受けているのですが、逆の見方をすると、中国人観光客なしでは多くの人が失業するため、中国による経済的な支配がさらに強まっていると感じました。

ラサ市内では、チベット人のツアーガイドに案内してもらったのですが、ガイドさんは政治的な話になると常に言葉を濁していました。私の推測ですが、誰が密告するかわからないため、とても用心深くなっているという感じがしました。

実際に町には、数多くの公安(警察)や監視カメラがあり、特にチベット仏教関連の施設では、必ず公安の詰め所がありました。

ただ、それでもガイドさんは、”ポタラ宮は、博物館になってしまったが、今でもチベット人の誇り”だと言われ、また”チベット人はダライ・ラマを大変尊敬していて、多くの人がダライ・ラマが住んでいるインドに行って、彼に会いたいと願っている。そして私自身もいつかインドに行きたい”ということを、言われていました。

さて、現地で1日フリーの日があったため、ラサの旅行会社を5-6社巡り、ナムツォ湖の1日ツアーか、またはガンテン寺へのツアーをアレンジしてもらえないか、聞いて回りました。ただ、残念なことに、どの旅行会社に行っても断られてしまいました。理由は、政府の規制で、外国人はチベット入境証を手配した旅行会社でないとツアーやガイドの手配が出来ないとのこと。

中国政府がチベットを訪問する外国人を厳格に管理していることを肌で感じた気がしました。それでもラサ市内はリクシャー(自転車タクシー)やタクシー、または徒歩で、ノルブリンカや、ラモチェ(小昭寺)、アニ・ツァングン寺など一人で見て回ることが出来ました。

個人的には、特に世界遺産のポタラ宮は大変すばらしく、歩いて周りを1周し、特にゾンキョ・ルカン公園で、ゆっくり宮殿を眺めながらのんびり過ごすことが出来ました。ただ、観光客が多いせいか、ポタラ宮の内部見学が1時間に制限されていたのが大変残念でした。

また、もうひとつ大変印象に残ったのが、朝のバルコルの景色です。バルコルは、夜は中国人の観光客だらけなのですが、朝は多くのチベット人の巡礼者の方々が巡礼されていました。ジョカン寺の前では、五体投地の礼拝をされている方も多く、敬虔な仏教徒の方々の姿を見ることが出来て、大変すがすがしい気持ちになることが出来ました。

ラサのチベット人は、基本的に明るい人が多かったです。ただ、中国人観光客だらけの現状に、チベット文化が失われつつある状況を諦めている人が多い様に感じます。

これだけ中国化が急速に進むと、ほかの少数民族と同様に漢民族に飲み込まれてしまい、チベットの文化やチベット人の生活、言語、習慣などが近い将来消えてしまうのではないかと、心配になります。

このチベットの現状を見て、正直自分自身に出来ることがあまりなく、大変無力感を感じています。それでも、一人でも多くにチベットの現状をお伝えできればと思い、こちらに書かせて頂きました。また、自分の友人や知人にも今回のチベットの訪問の話をして、一人でもチベット問題に興味を持つ人を増やしていければ、と思います。

それでは、よろしくお願いします。

ポタラ宮参観時に、ポタラ宮から見えた中国軍と思われるヘリコプター。
中国国旗だらけのラサ市内。
中国国旗だらけのラサ市内。
ラサ空港。中国軍の戦闘機が数機停まっていた。
空港。山の上に監視台が。

 


(翻訳:吉田明子)