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ダライ・ラマ法王88歳の御生誕日における中央チベット政権内閣(カシャック)の声明

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2023年7月6日

ダライ・ラマ法王88歳の誕生祝賀会で内閣(カシャック)の声明を発表するペンパ・ツェリン主席大臣。写真:テンジン・ジグメ・テデ(Tibet.Net)

ダライ・ラマ法王14世、88歳の御生誕日という慶事にあたり内閣(カシャック)は、チベット内外のチベット人民を代表して、ダライ・ラマ法王に深い敬愛と衷心からのお慶びを捧げます。また、本日、ここにお集まりの御来賓の皆様方、そしてこの重要な日を祝賀する世界中の皆様を心より歓迎致します。

本日は、より幸福で豊かな生活とより平和な世界の創造に向けたダライ・ラマ法王の卓越したリーダーシップと精神的遺産を祝賀し、ダライ・ラマ法王への感謝の念を思案する特別な日なのです。

チベットのアムド地方クンブムの小さな村で御生誕された法王は、チベットのラサにおいて伝統的な定めに従い、ダライ・ラマとして正式に即位されました。ダライ・ラマ法王は、大勢の学者たちが集まる中、仏教哲学で最高学位である博士号を取得されました。当時16歳という若さでダライ・ラマ法王は、チベットの精神的そして政治的なリーダーシップを担われ、社会改革をもたらすための指導力を発揮されたのです。しかしながら、中華人民共和国の侵略と占領によってチベットは絶滅の危機に瀕し、ダライ・ラマ法王は亡命への道を歩むことを余儀なくされました。

昨年度のカシャックによる声明では、特にチベット人民に対しては、チベットの大義実現とチベット人民のアイデンティティを保護することを目的とした中央チベット政権の設立を含んだ、ダライ・ラマ法王の計り知れない指導力とその精神的遺産を垣間見ることができました。

この機会に、私たちはダライ・ラマ法王の世界的レベルでの深遠なるご功績のごく一部を浮き彫りにするよう真剣に努めてまいりました。ダライ・ラマ法王は、1967年に仏教の国である日本とタイ王国を初訪問されました。さらに、ダライ・ラマ法王が1973年に初めて欧州の11カ国を歴訪された際、物質的な繁栄と共に信仰の有無に関わりなく、普遍的な責任感を啓発し、良心を育むことが急務であることを強調されました。

1979年、ダライ・ラマ法王は米国の24の都市と40以上の大学や宗教センターを訪問するという計画に着手され、そのことにより西洋社会との直接的な交流を確立されたのです。当時、ダライ・ラマ法王は、世界中の多様な宗教的伝統について調和と共存を維持し、より思いやりのある世界を創造するためにグローバルな課題と向き合い、非暴力的なアプローチを共通の取組みとして取り入れ、発展させていく必要性について強調されました。

ダライ・ラマ法王が、西洋科学に大きな関心を寄せられていたことはよく知られていますが、それは、法王が、幼少期から機械に対して深い好奇心を寄せられていたことからも明らかです。1979年、ダライ・ラマ法王は、欧州のデヴィッド・ボーム氏をはじめとした著名な物理学者との対話を始められ、さらに1984年にはアマースト大学で心理学、神経学、伝統的医学及び生態学の専門家らと同様の関わりを持たれ始めました。

1987年には、ダラムサラに所在するダライ・ラマ法王公邸で催された、法王と西洋の科学者による対話は、画期的な「心と生命の対話」として2022年までに35回連続して開催されました。仏教に基づく縁起に関する科学と、非暴力の仏教的伝統に基づいて、ダライ・ラマ法王は、30年以上に亘って近代の科学者と関わりを持たれ続け、インドナーランダの縁起経と現代科学の比較研究が行われるなど、これにより前例のない科学的知識の豊かさがもたらされたのです。

この対話では、科学的論理学と仏教の形而上学の類似点を見出そうと試みています。それは、新しい量子物理学、全ての存在はその固有の本質を有さず空であると説く大乗仏教中観派(マーディアミカ)の理論及び外的実在を否定する唯心論との類似点についてです。その一方で、始まりも終わりもない仏教による宇宙観とビッグバン理論による科学的概念との相違点や、ダーヴィンの進化論と、植物や花は意識に基づいて物体を感じ取る能力を備えているか否かを調査する生態学に基づく生命の進化について解説しています。このように仏教は、神経学と心理学の分野においても現代科学の発展に多大に寄与してきました。

ダライ・ラマ法王は、科学的研究の基礎として思いやりをその動機とし、その結果が生きとし生けるものや環境に危害を及ぼす原因とならないことを保証するべきであることを強調されました。こうしたダライ・ラマ法王と科学者との交流は、宗教に対する科学的視点について変容をもたらしたのみならず、世界中の科学研究分野についてその視野を広げたのです。そして同様に、「心と生命の対話」は、瞑想的実践(マインドフルネス)を論理的な研究分野として確立する上で極めて重要な役割を果たすとともに、実践することで得られる身体的及び精神的な健康の両側面に資する恩恵の本質を理解することについて、何百万人もの人々の関心を集めてきたのです。

これまでの50年の間、チベット仏教は、単なる宗教としてのみならず、過去1,400年にわたり発展し繁盛してきた仏教の科学と文化の宝庫として、世界中において隆盛を極めました。一部の科学者たちは、仏教科学は、自然科学や社会科学と共に、科学の一分野として認識されるべきとの見解を述べています。

ダライ・ラマ法王とエモリー大学による瞑想科学と慈悲に基づく教育に関する協力は、社会性、情動性及び倫理的な知性を会得する学習(SEEラーニング)を生み、今では130カ国以上にまで広がっており、現在そして将来の教育の新しい方向性を開いています。エモリー大学によるとSEEラーニングは、個人的そして社会的レベルで実践されている革新的な教育システムであり、思いやりの科学、気づきへの教化、そして思いやりを高めるためのツールでもあるとしています。この教育システムは、身分や国籍そして信念に縛られない、普遍的な人間としての価値観を発展させることを通じて、全人類に対してより幸せな生活への神聖なる方法を提供してきたのです。

ダライ・ラマ法王は、長年にわたり世界中を旅され、5つの大陸にまたがる約60カ国を歴訪されました。このうち、ダライ・ラマ法王は、単独で約60回にわたり米国を訪問され、ドイツは47回、日本は43回、スイスは32回、イタリアは31回そしてフランスは26回訪問されています。ダライ・ラマ法王が、訪問された先々では公会堂、スタジアムそして公園を埋め尽くす大勢の聴衆が集います。ダライ・ラマ法王は、これまでに約500回の海外訪問を行われ、知識人、科学者及び一般大衆と絶えず面会されているのです。また、法王は、約500名もの世界の政治的そして宗教的指導者とも会談されてきました。ダライ・ラマ法王の人類に対する功績を称え、政府や議会、団体及び財団から、米国だけでも73の賞を含んだ200以上もの名誉博士号の称号や賞を授与されています。

ダライ・ラマ法王は、1987年に開催された米国議会において、「チベットに関する5項目和平プラン」を提案され、ストラスブールにおける1988年の欧州議会では「中道のアプローチ」のビジョンについて詳しく述べられました。2008年には、中国政府に対して、チベット人による「真の自治に関する草案」を提案されました。中央チベット政権は、中道政策に基づく対話を通じて、中国‐チベット紛争を解決することに引き続いて全力で取り組んでまいります。

ダライ・ラマ法王による、人間としての価値観の育成、様々な宗教間における調和の促進、チベットの宗教・文化及び環境の保全及び古代インドの叡智の再生という4つの主要なコミットメントについて、わずか数段落で的確に詳述することはできません。法王は、世間一般そして特にチベット人民にとっての保護者であり精神的支柱なのです。

チベットの守護神たちによる幸先のよい予見と、ダライ・ラマ法王御自身が繰り返して断言されてきたことからも、すべてのチベット人民は、ダライ・ラマ法王のビジョンの実現に向けて努力し、法王のご長寿と大いなる功績を確実にすることこそ果たすべき義務であると熟慮すべきです。無意味で分裂を生じさせるような地方優先主義と宗派主義を慎み、チベット人民の間に団結心を確立し、支配的な世界情勢の下において、正当なチベットの大義を実現する好機を逃さないことが最も重要なのです。これこそダライ・ラマ法王の御生誕日を記念した真の贈り物であり、大いなる祝賀となることでしょう。従いまして、カシャックは、すべてのチベット人民に対しまして、我々の共通の大義の下に直面する脅威に立ち向かう機会を判断することに慎重となるよう注意を喚起致します。

この機会にカシャックは、ダライ・ラマ法王の安全を確保するという責務に対しまして、たゆまぬ努力を払ってくださったインド中央政府及び州政府に対しまして、衷心より感謝の意を表します。また、ダライ・ラマ法王によるグローバルなビジョンとリーダーシップに対する確固とした信頼と献身をいだいてくださるすべての方々にも感謝致します。

最後に、カシャックは、ダライ・ラマ法王のご長寿と法王の願望が成就されますことをお祈り申し上げます。カシャックは、また、ダライ・ラマ法王が速やかにポタラ宮に帰還され、チベット内外のチベット人民が再び統一されることを心より祈っております。チベットの真実が一日も早く勝利し、平和の光が世界中に広がることを切望します。

中央チベット政権内閣

2023年7月6日

注:本文は、チベット語を原文とした英訳を和訳したものです。矛盾が生じた場合は、チベット語版を最終的かつ正式なものとして下さい。

オリジナル記事


(翻訳:仁恕)