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ダライ・ラマ法王代理人が日本人に向けて発言

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(2010年4月2日 東京)

訪日中のダライ・ラマ法王ニューデリー代表部事務所のテンパ・ツェリン代表は、4月2日東京四谷区民ホールで講演し、学生や一般の人々に対してチベットを取り巻く問題について語った。早稲田大学の石濱教授が共に演壇に立ち、会場の120人の聴衆を前に日本の知識人の視点からチベットの歴史について講演した。

講演の中で石濱教授は、チベットはかつて独立国であったと明言した。チベット仏教の指導者たちが、満州、中国、モンゴルの皇帝らを宗教的に感化してきた歴史についても詳しく解説がなされた。さらに教授は、17世紀頃チベットを訪れたイエズス会宣教師らの記録について言及し、ダライ・ラマはチベットだけでなくモンゴル、中国、ネパールといった近隣国でも同様に崇めらる存在であったことを説明した。「チベットはあらゆる意味において国家として成立していました。問題はチベットが外交に力を入れたことがなかったということです」と、教授は残念そうに語った。

テンパ・ツェリン氏はチベットの歴史の流れを概説し、1950年代の中国の侵略によってチベット民族およびその文化と宗教がいかに傷つけられてきたかについて語った。亡命先のネパールやインドで直面した困難や亡命チベット社会の現状についても言及した。

現在のチベット内部の状況は厳しく、チベット民族は自国に住みながら二級市民のような扱いを受けている。「中国が誇るチベットにおける鉄道や道路、空港といった開発は、すべて中国政府の利益のためであり、チベットに移住を続ける中国人のためなのです」と、テンパ・ツェリン氏は言う。

チベット人は決して開発に反対しているわけではない。しかし開発するのであれば地元のチベット人が潤うのは当然であり、またそれはチベット文化のよさを引き立てるものであるべきだ、と同氏は語った。

講演に続いて質疑応答の時間が設けられた。ダライ・ラマの転生制度と中国政府の介入についての質問には石濱教授が回答し、法王ご自身が何度もおっしゃっているようにダライ・ラマ制度の存続はチベット民族がそれを必要とするか否かにかかっている、と説明した。「転生制度の目的は現世を離れられたダライ・ラマの仕事を引き継ぐことにあります。つまりダライ・ラマ15世は、ダライ・ラマ14世が生前果たせなかった仕事を成し遂げるためにそれが可能な場所に現れることになるだろう、ということです。」

日本人や日本の企業がチベットのためにできることは何か、という問いにはテンパ・ツェリン氏から「チベットの歴史について学び正義と自由を支持してもらいたい」と回答があった。日本企業とチベットの商工会議所が双方に見返りのあるパートナーシップを構築して雇用機会を作るなど、検討していけるかもしれない、と同氏は語った。
ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のラクパ・ツォコ代表が講演の最後に参加者全員にお礼を述べるとともに、日本人に対してはこれからもチベット支援を続けていただきたい、と挨拶をした。

講演参加者の多くが、チベットの自由と正義のために何かしら力になりたいという意思表示をした。ある学生は、チベット問題に関して亡命チベット人社会の中でも高い役職に就く人物から直接話を聞くことができ満足だと話していた。


(翻訳:中村高子)