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ダライ・ラマ法王、新主席大臣就任式で「長年の願いが実現した」と語る

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(2011年8月8日 ダラムサラ)

ダライ・ラマ法王は、チベット人が民主的に選挙で選出した政治的指導者であるロブサン・センゲ氏に政治的権限と責任が付与されたこの日、「私の長年の願いが実現した」と語った。

第三回目のカロン・ティパ(主席大臣)直接選挙で選ばれたロブサン・センゲ氏の就任式には数千人が集まった。

ダライ・ラマ法王は、「ロブサン・センゲ氏は選挙で民主的に選ばれた民間人として初の政治的指導者、シキョン(主席大臣)となった。ロブサン・センゲ新主席大臣に、政治的指導者としての全権限を付与する」と述べ、自身の政治的指導者としての権限を新しい指導者に完全に引き継いだ。

この移譲にあたり、ダライ・ラマ法王は、今年5月に民主的プロセスを経て亡命チベット憲章の改正を行なっている。

ダライ・ラマ法王は参加者に向けて、チベットにいた頃も亡命後も、チベットの政治形態を完全に民主化すべく取り組んできた経緯を含めて次のように語った。

「本日は、民主的選挙に参加したすべてのチベット人にとって誇りとなる日です。私が最も大切にしてきた願いのひとつが実現したのです。何より重要なことは、亡命チベット人がイニシアチブを執り、大きな責任を背負って選挙に参加したということです。その結果、我々は、現代教育の高い知識に裏付けられた指導者を選出することができました。ゆえに私は、ご苦労いただいた一般市民のみなさんにお礼を申し上げたいと思います。

チベット本土にいるチベット人は、民主的選挙に参加できないばかりか自分の意見を自由に表現することすら許されていません。しかし、我々が未来に向けて歩みを進めたことを知ったなら、誇りに思ってくれるでしょう。

本日はまた、2000年を越えるチベットの歴史においても特別な日です。宗教的指導者が国王として統治してきた時代においても、チベットはあらゆる分野において近隣諸国と同等の威信を維持してきました。

しかしながら政権とは、この地球に暮らすおよそ70億人の民衆の手中にあるべきものであり、国王や宗教指導者たちが握るものではありません。

同様に、チベットはチベットの民衆に属するのであり、宗教的指導者や国王やその後継者に属するのではありません。ゆえに私は、宗教指導者が政治的権限を兼務するのは間違っていると言い続けてきたのです。

私は、この世界や国々は民衆に属するのだから、権力を行使して支配する時代は終わったと確信しています。ですから、このような私の考えを実行に移すよう常々申し上げてきたのです。そして、ついにこれが実現したことを誇りに思います。
さらには、私が常々強調してきた宗教と政治の分離が実現したのですから、これからは意見を強く述べさせていただく機会も増えるでしょう」

ダライ・ラマ法王はまた、16歳でチベットの宗教・政治的最高指導者としての責任を双肩に担って以来の困難に触れて次のように語った。

「しかしながら、それでも私はチベットの宗教と政治の最高指導者として、チベットの名前がこの世から消えることのないよう、チベット問題を喚起し続けてきました。これは、私のささやかな業績といってよいかもしれません。

20世紀、そして21世紀と、民主システムは幾多の変遷を経ました。同様に、我々チベット人も民主システムを導入し、これに従って、私は政治的指導者としての権限を、選挙で選ばれたカロン・トリパ(主席大臣)に引き継ぐのです。

万一、議員や行政スタッフ、非政府組織のメンバーや一般市民からの批判が生じた場合は、ロブサン・センゲ新主席大臣が真摯に対応し、導いていかれることでしょう。しかしながらまずは我々が、個人的な事柄や政治的派閥ではなく、チベット人全員が共有している問題を最優先に考え、取り組んでいく必要があります。

チベットは生きるか死ぬかの瀬戸際なのです。チベット人全員が共有している問題を差し置いて、個人的な名声を考えているような場合ではないのです。

私は、チベット人のみなさんのご尽力に感謝しています。チベット人全員が共有している願いの実現に向けて、心をひとつにして取り組んでくださいますようお願い申し上げます」

この日は激しい雨であったが、数千人のチベット人のほか、インドや諸外国の高官をはじめとする有志たちが駆けつけ、熱心に就任式を見守った。

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(翻訳:小池美和)