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ダライ・ラマ法王、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)、ウェストミンスター寺院、英国議会、クラレンス・ハウス訪問

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(2012年6月21日 dalailama.com

2012年6月20日、英国ロンドン。「兄弟姉妹の皆さま。今日こうして皆さまにお話できることを嬉しく思います。このような機会には、私は皆さまと同じ一人の人間として話をします。私たち70億人の人間は皆、身体的にも精神的にも、そして情緒的にも変わりはありません。人によって髪の色が違ったり、鼻が大きかったり小さかったりしますが、それは二次的な相違でしかありません。私たちは誰もが幸せを望み、悲しみを嫌います。「今日、嫌なことがありますように」と願いながら一日を始める人は一人としていないのです。そう、誰にも幸福な生活を送る権利があるのです。」

LSE、フレデリック・ボナート・ブラウンタール基金、マトリックス・チェンバーズそしてシグリッド・ラウシング基金が開催したイベントに法王は参加され、LSEで講演を行われた。テーマは『不寛容への抵抗:倫理的、世界的な挑戦』。講演の中で法王は次のような話しをされた。先のことを考えず将来の展望もない状況では、人は意図せず問題を生み出してしまう。世界経済における危機的状況、気候変動そして貧富の差などがその例である。それらの問題は、人類の英知を使わず目先の満足を追究したために生じたのだ。

この惑星には70億人の人間が生活している。必然的にお互いのことを思いやらなければならない。私たちは誰もがさまざまなかたちで互いに依存し合っている。食糧、燃料、エネルギー、原料、技術開発など、何をとってもそうだ。他人を兄弟姉妹と思えば、人は安心し、安全に感じるだろう。反対に人を疑いの眼で見続ければ、私たちは常に不安に苛まれるだろう。

法王はご自身を、もう過ぎ去った20世紀の人間だと表現され、21世紀の若い世代の人々に、より平和で公平な世の中のために力を尽くして欲しいと呼びかけられた。そして、それは祈り願うだけで叶えられるものではなく、積極的に働きかけてこそ実現できるのだ、と付け加えられた。

聴衆の質問に答え、法王はインドに古くからある寛容の精神についてお話になられた。インドでは世界に存在するほとんど全ての宗教が信仰されており、何世紀にもわたって異宗教の人々が共に尊重し合い、調和を保ちながら生きてきた。インドに起源をもつ非暴力の概念は、現地で今もなお力強く生きている。インドは1947年の独立以来、民主主義を守り非常に安定した国家を守ってきた。古代インド思想のメッセンジャーとして法王は、尊敬・寛容・非暴力の概念を今日に生かそうと尽力しておられる。

ウェストミンスター寺院では、ジョン・R・ホール主席司祭がダライ・ラマ法王を出迎え、異宗教間の礼拝のために寺院へと案内した。法王はさまざまな宗教の代表と信者らを前に、宗教観や身につけるローブ、帽子に違いはあっても、異宗教間における真の兄弟姉妹愛の必要性をはっきりと示し生かさなければいけない、と話された。そして法王は、その協調性を自然環境保護の分野に適用することの重要性についても言及された。もし私たちが古来の教えの知恵を日々の生活に適用できれば、私たちの宗教が重んじてきたものも生かされるだろう、と述べられた。

法王はそこから同じ建物内のエルサレムの間に移動され、主席司祭がその部屋の豊かな歴史について解説した。中国が侵攻する以前のチベットに住み、そこで働いていた英国人と面会するのには相応しい場所であった。カムでラジオ技師として働き、後に中国当局により投獄されたロバート・フォード氏の息子が、出席できなかった父親の代わりにそのメッセージを読み上げた。そこには、自由なチベット、フランスとドイツを合わせたほどの大きさの、独自の政府、言語、風習と生活様式をもった独立国チベットの証人としての彼の言葉があった。彼が出会ったチベット人は皆正直、親切、陽気で、彼らの宗教と指導者ダライ・ラマ法王に帰依していた。

法王は、1973年に初めて訪欧された時、イギリスにチベット語を多少なりとも話せる人がいたことに感銘を受けたことを思い出され、それがチベットと英国にリンクがあった証拠だと語られた。

「私は皆さんとこうして同じ時間を共有していることを幸せに思います。私たちの闘争は、真実・正義の力と銃の力の闘争です。短期的には銃の方が強そうですが、長期的には真実の力がそれに打ち勝つのです。私たちは非暴力を貫きます。そうすることで私たちは、英国や他国からの支持と団結の強い基盤を得ることができました。中国知識人の支持も増えています。」「どうぞチベットのことを忘れずにいてください。そしてあなた方の知っているチベット、そこに住む人々やチベットの様子について他の人にも伝えてください。お願いします。」

その後ダライ・ラマ法王はロイターの取材に応え、次のように主張された。膨大な人口を有する中華人民共和国は大きな影響力を持った国であり、世界に貢献する力を秘めている。だからこそ中国は孤立しているべきではない。新たな指導者が就任することで、これまでよりオープンな国になり、事実から真理を追究する国になることを期待している。中国が強大な国であることは確かだが、世界の趨勢は自由と民主主義へと向かっている。中国もまたその流れに沿っていかなければならない。

英国下院議長ジョン・バーコウ議員が法王を昼食に招待した。道すがら議員らと挨拶を交わしながら、アーチをくぐり、回廊を歩き、ウェストミンスター宮殿の中庭を通って法王は下院議長の部屋に案内された。

「このようにかつて歴史的にチベットと縁のあったここ英国で、あたたかく歓迎していただき大変光栄に思っています。ありがとう。」と法王はおっしゃった。

食糧と農業に関する超党派議員連盟(All Party Parliamentary Group on Food and Agriculture)のメンバーを前に法王は、身体のための食べ物も重要だが、心を養うこともまた大切なことだと話された。心が乱れている時には物質的な慰めも役には立たない。しかし、物理的な問題に直面している時に、落ち着いて穏やかな心で対応すれば、容易に対処、克服することができる、と法王は説明された。21世紀、そしてこの相互依存の世の中に相応しい内面的真価、世俗倫理を培う方法を模索してきたことについても、法王は詳しくお話になられた。

国会議事堂を後にした法王は、チャールズ皇太子との非公式の面会のためにクラレンス・ハウスへと向かわれ、そこで和やかに会話を楽しまれた。


(翻訳:中村高子)