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ダライ・ラマ法王、ベトナムの財界人・芸術家・知識人たちとの会見 初日

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2018年5月21日
インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ

ベトナムから訪れた参加者の質問にお答えになるダライ・ラマ法王。2018年5月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)トナムから来た約80人の財界人、芸術家、知識人、青年代表団と法王公邸の謁見室で会見された。この会見は、ベトナムのハノイ、ホーチミン、ハイフォンの3都市からネット中継によるテレビ会議で繋がれた約500人も参加した。

法王はまず始めに、人類は一つの人間家族であることを認識することの必要性について強調された。世界中の様々な地域で起こっている暴力を残念に思うとともに、貧しい人々が無視され続け、多くの子供が飢餓によって命を落としていることについても言及され、次のように述べられた。

「一方で、多くの裕福な人たちも幸せや心の平和を得ることができていません。今もなお、科学者たちが基本的な人間の性質は思いやりの心であることを研究結果として証明していることが、私たちにとっての希望の源です。事実上、この世に生まれたときからずっと私たちが母親から受けてきた深い愛情が、私たち一人一人の人生に役立っているのです。人は死期が近づいた時、愛する者たちに囲まれていることで安らかな最期を迎えることができます。私たち人間は全員、生まれた時から一生を終えるときまで、他者の愛情を必要としているのです」

ベトナムの3都市に集まった人々に向かって、法王公邸の謁見室からお話をされるダライ・ラマ法王。2018年5月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

「私たちが直面する問題の多くは、私たちが他者との二次的な違いにこだわりすぎた結果として起こっています。このような間違った捉われをなくすための解毒剤は、人類は一つであり、私たちは人間家族であるという現実に対して深い理解を養うことにあります。私たちチベット人は中国共産党の厳格な管理のもとでとても大きな苦痛を味わい続けてきましたが、だからと言って、それが中国人の兄弟姉妹に対して敵意を持ってよいという理由にはなりません。それとは逆に、兄弟姉妹である彼らの精神は、私たちが共通の幸せを築くために欠かすことのできないものとなっています」

「人類の歴史を振り返ってみると、信仰、人種、民族などの二次的な違いを強調しすぎた結果として不和が生じ、私たちに深い苦痛をもたらしてしまいました」

ベトナムの3都市に集まった人々に、法王公邸の謁見室からお話をされるダライ・ラマ法王。2018年5月21日、インド、ヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラ(撮影:テンジン・チュンジョル / 法王庁)

続いて法王は、異なる宗教間の調和について話し始められた。この世界には様々な宗教の伝統があり、それぞれが異なる哲学的見解を持っているが、愛や思いやりの心、そして自己修養などは、これらの異なる宗教間に共通するメッセージであり、相互評価の基盤となっている。

質疑応答の時間に入ると、法王は参加者からの様々な質問に答えられた。怒りを起こすことなく有意義な人生を送るにはどうしたらよいのかという質問に対して、法王は、一見すると怒りは自分を守るための手段のように見えるが、科学者たちは、怒りや憎悪の感情を持ち続けることが免疫力の低下を招くと結論付けていることを説明された。続いて、意見の違いを解決する方法について尋ねられ、法王は、私たちの世界は深い相互依存の関係の上に成り立っているので、お互いにとって有益な解決策を見つけることが大切であると繰り返し強調された。

困難に直面した時は、現実的な見かたを維持することが大切である。より広い視野に立って現実を見ること、そして私たちが抱えている問題を様々な角度から調査することが必要である。法王ご自身の人生は常に困難な状況の中にあったが、たとえどのような状況においても心の平和を保ち続け、また笑顔を絶やさずにいることができたと語って、会見を終えられた。