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ダライ・ラマ法王、ブッシュ前大統領と面会し、民主主義についてのインタビューに答える

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(2011年5月10日)

2011年5月10日、ダライ・ラマ法王は、まず、前チベット問題特別調整官、ポーラ・ドブリアンスキーと会談し、その後、前ブッシュ大統領夫妻の邸宅に赴き、約一時間を夫妻と過ごした。前ブッシュ大統領は、法王の訪問を名誉に思う、と述べた。その後行われたブッシュ氏も交えた昼食会において、法王はブッシュ氏との再会を待ち望んでいた、と述べ、同氏を、「マイ・ディア・フレンド(親愛なる友)」と呼んだ。

法王はブッシュ夫妻宅から南メソジスト大学のメドウ博物館に向かい、そこで、ジョージ・ブッシュ・インスティチュートの役員であるジム・グラスマン大使による民主主義についてのインタビューを受けた。インタビュー内容は、PBS(米公共放送)によって放映され、ブッシュ・センターの民主主義コレクションの一部として保存されることになっている。インタビューのなかで、法王は、民主主義は普遍的なものであるとする自身の考え方を述べ、チベット民主主義の歴史的発展について説明した。

その後、法王は、ジョージ・W・ブッシュ・センター主催の昼食会に出席し、入り口でブッシュ前大統領の歓迎を受けた。グラスマン大使は歓迎スピーチのなかで、ダライ・ラマ法王がブッシュ前大統領との会談のなかで、1963年に発布された「将来のチベット国家の憲法」の草稿に自らの添削が入ったものを渡した、と述べた。これは、20世紀から今日に至る現代史において、自由のための運動を行った男女の戦いと成果の個人的逸話を蒐集する、同センターの「自由コレクション」の最初の一品であり、コレクションをスタートするにあたっての礎となる資料である、とも述べた。この資料は、1963年に作成された「将来のチベット憲法」の枠組みを示した「将来のチベットの憲法の原則」のチベット語草稿のコピーである。ブッシュ・センターは、自らのフェイスブックのページでこの資料とその写真を公表する予定である。

次にブッシュ前大統領がスピーチを行い、まず、前ビル・フリスト上院議員などに参加感謝の辞を送った。ブッシュ氏は、今日の法王との会談を楽しみにしていた、と述べ、大統領時代、数々の特別な瞬間があったが、そのなかのいくつかは、ダライ・ラマ法王との会談であった——と述べた。彼は、ダライ・ラマ法王と共にいると、その特別な人格が感じられ、勇敢かつ謙虚な法王のそばにいることは喜びである、と述べた。また、法王のことを考えるだけで微笑みが浮かぶ、と述べた。ダライ・ラマ法王は自由への戦いにおける勇気の人であり、自由と平和はイコールであるということを理解する、平和の人でもある、と述べた。法王の訪問は、同センターにとってかけがえのない貢献であり、友情の証である、と述べ、法王を演壇に招いた。

法王は、ブッシュ前大統領と最後に会ったのは、2007年の米議会金メダル祝賀会だった、と述べ、親愛なる友人であるブッシュ氏との再会を待ち望んでいた、と述べた。法王は、自らの胆嚢手術の後、ブッシュ氏から電話をもらった逸話を披露し、そのことに非常に感銘を受けた、と述べた。

法王は、ブッシュ前大統領が自らに行うサポートは、チベットに対するサポートというより、正義に対するサポートと考えている、と述べた。

法王は、人と会うときは、その人の社会的地位に関わらず、人間としての本質的レベルで人を見るようにしている、と述べた。そして、ブッシュ氏と始めて会ったときから、彼を素晴らしい、善良な人間だと思った、と述べた。

ブッシュ氏が自らに与えた賞賛を大げさなものだ、としつつ、法王は、自分は、自分の出来る範囲で人類の福利厚生に寄与しようと働いている60億人の人間の一人に過ぎない、と述べた。内的平和を培うことの重要性を強調するなかで、ブッシュ前大統領でさえ、金と権力だけでは内的平和はもたらされないということを経験的に知っているはずだ、と述べた。また、法王は、温かい心を持った人の肉体健康度が高いことは、科学者も認めている、と述べた。

法王は、人類共通の価値を広めていこうとする自らのアプローチは宗教的信念に基づくものではなく、人類共通の感覚、経験、および、科学的な証拠を通じて培ってきたものだ、と述べた。

法王は、自分は二次的なレベルで仏教徒だが、さまざまな宗教の指導者たちと出会うなかで、すべての宗教は内的平和をもたらす潜在力を持っていると理解した、と述べた。人類は共存していかなければならない、という単純な現実にかんがみても、異なる宗教のあいだの相互理解、調和は必要である、と述べた。

チベットのことに触れ、法王は、自分の政治的引退はすでに周知のことと思う、と述べた。それでも、自分はチベット人であり、その観点から、世界の中でのチベットの重要性に対する理解を求めたい、とした。法王は、とくにチベットの環境について触れ、中国の科学者は、チベット高原のことを南極と北極に比肩する第三の極と呼んでおり、アジアの川の多くがこのチベット高原を源流とし、10億人以上の人間がこれらの河の水に依存していることを説明した。

法王は、チベットの環境に対する懸念は、政治とは無関係だ、と述べた。彼は中国の朱鎔基前首相に環境問題におけるチベットの森林の重要性の再認識と、砂漠化への歯止めが中国の国益につながる、と勧告したが、官僚の腐敗などを原因として、無差別の採掘をはじめとする環境破壊がチベットで続いている、と述べた。

法王は、昼食会の参加者の中に、環境問題専門家を知っている人がいたら、中国政府との完全な協力のもとに、チベットの環境の現状を研究し、保護する方策を模索する国際チームを作ってもらってはどうか、と述べた。

その後、ポーラ・ドブリアンスキー大使をモデレーターとする質疑セッションで、法王はいくつかの質問に答えた。中国の共産政権は長く続くか、中国は民主化するのかどうか?——との質問に、法王は、その時期は分からないものの、中国は変わるだろう、と述べた。また、中国当局は、自らの地位を守ることに神経質になっており、中国の警察・治安関係の予算は、対外的軍事予算を上回っていることを述べた。

法王が過去に学んだ最大の教訓は?——との質問に、国を失ったことが一つであり、こんなにも長いあいだインド政府の賓客であることがもう一つの教訓、そして言論の自由を有難く思うこともまた、学んだ教訓である、と述べた。法王は、悲劇は内的な強さを培うものであり、チベット人は自国に起きた悲劇によって、より強い内面を持った、と述べた。

次の質問に答えて、法王は、世界はより良い方向に向かっている、と述べた。法王は、20世紀の殆どを生きてきた故エリザベス王太后が、自分が子供のころは、人権や、民族自決の権利といったことは問題にならなかったことに比べ、人類はより良くなっている、と言われたことを思い出す、と述べた。また、法王は、環境への関心の高まりや、科学者のあいだでの内面的価値に対する関心の高まりは、世界がより良い方向に向かっていることの証左である、と述べた。法王は、地球温暖化に問題を改めて述べ、来年2012年に吹くとされている太陽風について述べた。

ブッシュ前大統領と誕生日が同じ(7月6日)であることは、幸運の兆しだと思うか?——という質問に対し、法王は、その質問は、ブッシュ大統領に答えていただきましょう、と冗談で言った後、誕生日が同じ人は、一緒に働くように出来ている、とするチベットの謂れに触れた。自らはアジアに生まれ、ブッシュ前大統領はアメリカに生まれたが、二人の人生には同じ目的がある、と延べ、自らの民主主義に対するコミットと同様、ブッシュ前大統領も民主主義を世界に広めるためにより強く働きかけていくことができるはずだ、と述べた。北米と中東との関係について、法王は、ブッシュ前大統領はこの問題に役立つことが出来るだろう、と述べた。

スピーチの後、法王は、仏陀のタンカ画をジョージ・ブッシュ・センターに寄贈した。

その後、法王は、次の訪問地、アーカンザス州ファイエットヴィルに向けて出発した。到着後、アーカンザス大学の関係者が法王を歓迎した。法王は、5月11日に同大学で二つのイベントを行う。これらのイベントは5月11日現地時間9時半と1時半にライブでウェブ中継される。


(翻訳:吉田明子)