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ダライ・ラマ法王、チベットの文化・環境の将来を懸念

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(2011年4月30日)

ダライ・ラマ法王は、チベットの文化と環境が存続の危機にさらされている現状を憂慮されている。

29日、東京。チベットの現状を記者から尋ねられた法王は、「政治的津波がチベットを襲っている。チベット仏教の文化は今、その存続が危ぶまれるほどの危機に陥っている。チベットではある種の文化的殺戮が行われている。マスコミ関係者は是非現地に赴きその現状を調べ、実際に起きていることを確認してもらいたい」と答えられた。

さらに法王は、「チベットが抱えるもう一つの問題は環境だ。中国のエコロジストの中には、『チベット高原は第三の極であり、地球温暖化がチベット高原に及ぼす影響は北極・南極への影響と同様の危険をはらんでいる』と言う人たちもいる。アジアの主要河川の源流はチベットにあり、それが中国人を含めアジアの無数の人々の生活を支えている。これは600万のチベット人だけの問題ではない」と述べられた。

ご自身の責務を選挙で選ばれたチベット人指導者に移譲されたことに質問が及ぶと法王は、「彼は民主主義と自由のために尽力してきた人物だ」とおっしゃった。

公的な責務を譲る決断をされたことについてダライ・ラマ法王はさらに次のように述べられた。「世界は人類のものであり、宗教や政府の指導者のものではない。日本は日本国民のもの。そして中国は中共のものではなく13億の中国人民のものだ。2001年以降、私たちは指導者を直接選出してきており、私も半分引退している状態だった。それから10年が経ち、亡命チベット人社会にも民主主義が根付いてきた。政治的権限を人々に移譲する時が来たのだ。しかしそれは私が引退してダライ・ラマでなくなるということではない。」

「ダライ・ラマ制度は15世紀に始まって以来ずっと宗教的なものだった。歴代のダライ・ラマが政治的な権限を持つようになったのは第5代ダライ・ラマからのことだ。これからのダライ・ラマの役目は純粋に宗教的なものに限られるべきだ。だから私は誇りを持って、4世紀続いたこのリーダーシップに喜んで終わりを告げようと思う。」

さらに法王は、中国政府について次のように語られた。中国は長く豊かな歴史と文化を備えた、世界で最も多くの国民を有する国である。今や中国は経済大国にもなった。中華人民共和国が国際社会で更なる活躍をしていくためには信用と尊敬を得ることが大変重要だ。機密としてあらゆることを隠し、報道の自由を統制するのはこれからの中国にとって障害になるだろう。13億の中国人民は誰もが真実を知る権利を持っている。そして彼らには正・不正を自ら判断する能力が備わっている。情報操作は社会倫理に反するものだ。

政治改革や民主主義に関する最近の温家宝首相の発言(4月28日のマレーシアでの発言を含めて)についてダライ・ラマ法王は、それを評価し、首相のイニシアチブを全面的に支持すると意見を述べられた。


(翻訳:中村高子)